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死んでていいから生きててほしい  作者: やりいかのフリット
15/61

人の心は裏腹模様 Ⅷ

最後に選択肢あり

「はぁー!やっと終わったー‼︎」

 遂にライブの準備を終えた俺は、ステージである体育館から出ると、肺いっぱいに新鮮な外の空気を吸い込んだ。

「はぁ〜、にしても今年の文化祭は大盛況だな」

 都内にある我が霞浦(かすみうら)高校は元々そんなに広い敷地ではない、と言うことも相まって校内は人で埋め尽くされていた。

「流石、超人気アイドルの集客力はえげつないな」

 そう呟く俺を、背後から誰かが呼んだ。

「歩夢ー‼︎来たぞー!」「にいさま、夜中ぶりです」

 振り向くと、奏熾(そうし)詩道(しど)が背後に立っていた。

「おー二人とも!来てくれたか!」

 俺はしゃがみ込み二人の目線と合わせた。

「二人だけで来たのか?すごいな二人とも」

「そんなわけないでしょ?」「うんうん、その二人だけで出歩かせるなんて、心配で無理だよ」

 俺の質問に答えたのは奏熾と詩道ではなかった。

「よー、バカ兄貴。来てやったぞ」「おはよ、あゆ(にい)

 見上げると、俺を見下ろす文那と玲美の姿があった。

「二人も来てくれたんだな!」

 こういうイベントごとに身内が来てくれるというのは、何故だかとても嬉しく、自然と気分が上がった。

「にいさま、にいさま」

 ちょんちょん、と可愛らしく詩道は俺の制服の袖を引っ張る。

「この立派なステージは、にいさまが作られたのですか?」

 詩道はそう言って、開かれた体育館の扉の間から見えるライブステージを指差した。

「あぁ、そうだぜ。今回のユリーナのライブは俺たちのクラスが担当だからな。しかもライブのセトリと演出考えたのは何を隠そう、この俺なんだぜ?」

「そんなに沢山……流石にいさまです。詩道、感服です!」

 詩道はそう言って、自分のことのように嬉しそうに微笑んでいた。

「お兄ちゃんもユリーナのライブ見るんでしょ?」

「そりゃもちろん!クラスの出し物だから当たり前よ!」

「なら私達も見るし、一緒に見ようよ」

 文那のその言葉に俺は唇を噛んだ。

「いや、それなんだが……俺はステージの演出のために舞台袖にいないと行けなくてな、お前達とは一緒に見れないんだ……」

「えぇー!一緒に見れないのかよ!つまんな!」

 奏熾が不満を垂れた。

「そう言うなよ。ごめんな、奏熾」

「……まぁいいけどー、仕事ならしょうがないし」

 煮え切らない様子ではあったものの、奏熾はそう言って納得してくれた。

「うん、そう言うことならしょうがないか」

 文那も頷き、どうやら納得している様子だった。

「そういえばお兄ちゃん、ユリーナのライブって何時からだっけ?」

「あと三時間後だから……午後二時からだな!」

「ふーん、じゃあライブ終わっても全然時間あるね」

「どっか行きたいのか?」

「良かったらさ、私達にお兄ちゃんの学校案内してよ。何だかんだお兄ちゃんの学校来るの初めてだしさ」

 そうか。そういえば去年は文那の中学と俺の高校の文化祭の日程が被っちゃって来れなかったんだっけな。

「あぁ、もちろーー」

 承諾しようとしたその時、太陽のように底抜けに明るい声が背後から聞こえた。

「おーい、あゆっちー‼︎」

 振り返ると、遠くからバタバタと彩音が近づいてくるのが見えた。

「くそっ……面倒な奴が面倒なタイミングできたな……」

「え?なに?あの人お兄ちゃんの名前読んでるけど……まさか彼女⁉︎」

 文那は俺に異性の友達ーーいやそれはおろか友達がいた事に驚いたのか目を丸くしていた。

 今彩音に会わせると色々面倒くさそうだな……彩音も文那も俺の交友関係に首突っ込むの超好きだし……。

「彼女とかそういうんじゃないから、ほら取り敢えずあっち行け」

 会わせるわけには行かない、と俺は文那の肩を掴んで彩音と逆方向に押す。

「えー何それ!酷くない⁉︎」

「あとでちゃんと、あいつについては説明するから」

「えぇ〜やだよそんなのめんどくさいし!今でいいじゃん‼︎」

 俺に体重を乗せて、文那は全く動こうとしなかった。

 文那はこういう時一歩も引かない。

 もうダメか、と諦めかけたその時、俺に救世主が現れた。

「ふみ(ねえ)、トイレ行きたい」

 玲美がそう文那に懇願した。

「あっ!そういえば俺も行きてー!さっきコーラ飲みすぎた!」

「言われてみれば、僕も行きたいです」

 玲美の言葉に引っ張られ、奏熾と詩道もそう口にした。

「え〜みんなぁ⁉︎わかったよー、じゃあ行こっか」

「うん!早く早く!」

 玲美はそう言って文那の手を引っ張る。

「もー、あの人の事はあとでちゃんと説明してよねー」

 不服そうに頬を膨らませながら文那は彩音とは逆の方へと進んでいった。

 俺はそんな文那の後ろ姿をみながら、チラリと玲美を見た。

 玲美は俺と目が合うと、ニッと白い歯を見せ笑うとサムズアップした。

「ははっ、流石美空の自慢の妹だ」

 俺は玲美に向けサムズアップを返した。

「うっわー……何してんのあゆっち、見ず知らずの幼女にそういうことするのは犯罪だよ、防犯ブザーものだよ?」

 俺の目の前に来るなりいきなり彩音は俺を乏した。

「別に見ず知らずじゃないから大丈夫だよ……」

 と、彩音の方を向き反論したところで、

「てか彩音……なんだお前その格好は、少し刺激が強いんじゃないか?」

 そのメイド服は何故か胸元が大きく開いていて、彩音の豊満な胸が強調されていた。

「暑いから通気性重視で作ったんだってさ。超エロいっしょ」

 ふふん、と得意げに鼻を鳴らすと彩音は前屈みになった。

「はいはいエロいエロい」

「えー⁉︎適当すぎない⁉︎」

「俺は着込んでる方がエロく感じるんだよ」

「うっわ何それ……あゆっち特殊性癖?」

 別にそんなことはない、俺はそう強く反論する。

 多分、着込みフェチは世の中に大量にいるはずだ。

「それで?何でお前はメイド服なんて着て歩いてるんだ?メイドカフェは1組がやるやつだろ?」

「それが1組のみっちゃんに頼まれちゃってさ……“彩音ちゃんなら絶対似合うよ!おっぱい!”って言われたら断れないじゃん?」

「いや、別に断れるだろ。というか最後のはなんだ。みっちゃん多分一部分しか見てないぞ……」

「そんな事ないよ!みっちゃんは変態さんなあゆっちと違ってちゃんと私の全てを評価してくれてるよ!」

「あぁそうかよ……」

 そう言ってため息をついた直後、頭上から彩音を呼ぶ声がした。

「おーい!彩音ー‼︎お客さんからご指名来てるから早く戻ってきてー!」

 見上げると、3階の窓から1組の生徒が手を振ってそう叫んでいた。

「わかったみっちゃん!今いくよー!」

 彩音は3階のみっちゃんに向かってそう叫ぶ。

「じゃああゆっち、私の次のご指名出来る時間は四時からだから絶対来てよね‼︎あゆっちの分は空けとくしーー」

 彩音は急に不敵に微笑む。

「メイド姿の優宇くんも見れるから‼︎」

 そう言って投げキッスすると「じゃ、またあとでね‼︎」

 と言い残し、彩音は俺の元から去っていった。

「う〜……む」

 四時となるとユリーナのライブが終わってすぐだ。その時間は文那達との約束がある……。

「けど……優宇のメイド姿か……」

 唸り考えている俺の背中に、誰かがぶつかった。

「きゃっ!」

 悲鳴と共に、後ろで誰かが倒れるのがわかった。

「いってて〜。ミスったな。アイス食べるのに夢中になってた……」

 見ると、俺と同じ2年生である赤色の上履きを履いた女生徒が倒れていた。

 手に持っていたアイスだろう物が髪や制服にかかっていて、あられもない姿になっていた。

「だ、大丈夫か?ごめん、ぼーっとしてて」

 俺は慌ててその女生徒へと手を差し出した。

「ううん、私が前見てなかっただけだから」

 エヘヘ、と女生徒は笑いながら俺の手を取り、立ち上がった。

「うっわ〜ベトベトだなぁ、どうしよ、これ」

 うーん、と唸る女生徒に、ポニーテールの少女が息を切らしながら駆けつけてきた。

「み、美咲⁉︎あんたどうしたのその格好⁉︎」

 ポニーテールの少女は俺には目もくれず、その女生徒ーー美咲の事ばかり気にかけていた。

「いやー、アイスを夢中に食べてたら人にぶつかっちゃって」

 エヘヘ、と美咲はまたいたずらっぽく笑っていた。

「もー、あんたは本当すぐ厄介ごとを引き起こすんだから……本当これじゃあ目が離せないよ……」

「まぁまぁそう言わないで」

 ほら、と言って美咲は自分の頬についたクリームを人差し指ですくうと、それをポニーテールの少女の口へと突っ込んだ。

「み、美咲⁉︎」

 少女は顔を真っ赤にして驚いていた。

「この美味しさなら、私がぶつかっちゃった気持ちもわかるでしょ?」

 少女は慌てて自分の口から美咲の指を離した。

「わ、わかったよ‼︎」

 真っ赤な顔の少女を見て、美咲はとても楽しそうにしていた。

「ほら、もういいからとりあえず着替えよ!そんな格好じゃ人前歩けないよ」

「でも、私着替え持ってないよ?」

「大丈夫、私が部活で使う用の予備のジャージあるから、それ貸してあげる」

「えぇ、本当⁉︎」

「うんうん、ホントホント」

「やったー!」

「ほら、はしゃいでないで行くよ」

 少女にそう言われた美咲は「は〜い」と明るい声をあげると、少女の手を取った。

「じゃーまたね!名前わからない君〜」

 美咲はそう言って俺に手を振りながら、群衆の中へと姿を消した。

「嵐のような奴だったな……」

 この短時間でアイスをこぼし、騒ぎ立てて、そのまま消えていってしまうとは。

「にしてもいくら仲良いとはいえ、友人の口に指を突っ込むって……最近の女子はそんなスキンシップが流行ってるのか?」

 そう呟いた刹那、その答えはすぐにでた。

「ん?……あれは」

 すぐそこのグラウンドのベンチに腰掛ける女子二人組がちょうど同じような事をしていた。

「文香、あんたほっぺ……アイスついてるよ」

 ベンチの右側に腰掛ける女子ーー榊芽衣流はそう言ってちょんちょんと自分の右頬を指差した。

「えっ、本当?」

 左側に腰掛ける女子ーーこの前神倉の暴走により散々な思いをした鹿島文香は芽衣流の指差す所を触るが、ちょうどアイスのついている部分を外していた。

「ん〜……わかんないな」

「ここだって」

 言うと芽衣流は文香の頬に触れ、人差し指でアイスをすくうと、それを自分の口にいれた。

「ははっ、なんかちょっとしょっぱい。汗かいてるの?」

 芽衣流は歯を見せてニッといたずらっぽく笑った。

「ち、違うよ‼︎シーソルト味なの‼︎」

「本当かな〜」

 そう言って芽衣流に顔を覗き込まれた文香さんは頬を赤らめ「う、嘘です……」と消え入りそうな声で呟いた。

「まったく……嘘は禁止ってこの前約束したでしょ?」

「ごめんね……メイちゃん」

 謝る文香さんの肩に芽衣流は腕を回すと、自分の胸へと抱き寄せた。

「わたしは……例えそれがどんなものだとしても、文香の本心なら受け入れる。だからーーもうわたしの前では嘘はつかなくていいんだよ、文香」

「……メイちゃん……ありがとう」

 文香さんはそう言うと、居心地が良さそうに瞳を閉じた。

 質素なグラウンドのベンチには、一輪の百合の花が咲いていた。

 神倉の一件があった当初は文香さんは学校を少しの間休んでいたが、ある日遂に登校したかと思うと、いつもの表情に戻っていた。

 噂話大好きお姉さんーー彩音によると、あの一件があってからその事について二人で話し合えた結果、文香さんは隠し事も無くなり以前よりも、気が楽になったということらしい。

 まぁ、結果論ではあるが、神倉はあの二人のキューピッドという事になってしまうのだろう。

「神倉……か……」

 そうぼそりと呟いた。

「おい、神倉ーーもう少しで、ユリーナのライブが始まるぞ。ちゃんと……来いよな」

 俺は雲ひとつない空に向け、そう口にした。

「さて……」

 ユリーナのライブが終わった後……俺はどうしようか。


 ♢文那達に合流し、校内を案内する


 ♢彩音のいるメイド喫茶へと出向く

上の選択肢を選んだ方は、Ⅸを読んだあとルート“A”へ


下の選択肢を選んだ方は、Ⅸを読んだあとルート“B”へ

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