第1話 City
読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
まだまだ未熟者ですが宜しくお願い致します。
朝はいつだって憂鬱だ。
勿論、グライヴにとっても例外ではない。目にまで掛かっていたボサボサの黒髪を掻き上げて洗面所に向かう。
背は高く、180cm位か。端正な顔立ちをしている。
彼は蛇口をひねり、顔を洗い始める。
「・・・嫌な夢だ」
完全に目を覚ました彼は手短に合った服を取ると、すばやく着替えを終えて台所へと向かった。
彼は冷蔵庫を開けると卵を取り出し、フライパンを食器棚から乱雑に引っ張り出す。卵をそれにぶちまけ、火力を最大にセット。
卵は一気に焼き上がり、彼は明らかに腐っているであろうソースをそれに必要以上にかけた。
それをパンに乗せ、一気に食べる。これが朝食。彼の変わった習慣の一つ。
グライヴは服装を整え、外に出る準備をした。別に外に用事があるわけではない。
ただ単に暇なだけである。暇だから外に出る。ただそれだけのこと・・・。
ドアを開け、鍵を閉めた。
吐く息が白い。冬が近づいている証拠。そんな事は子供だって知っている。
「もうすぐ12月か・・・」
思わず呟いた。アパートの脇に枯葉の束。
家の周りはまるでスラムのような状態だった。整備された様子も無く、亀裂が走ったアスファルトやコンクリート製の建物が無残な姿を晒している。
野良犬やカラスがそこらじゅうの家のゴミ箱を漁り、付近一帯に腐臭を漂わせている。
遠くから銃声が聞こえ、通りの方に歩いていくと途中の路上で黒人男性が胸に銃弾を受け、息絶えていた。
治安は最悪、殺人は日常茶飯事、それがエルレイズ地区。言わば社会から見捨てられた街・・・。
そこらじゅうに転がっている死体や浮浪者を尻目に彼は駅に向かっていった。
別に用事がある訳ではない。ただ暇だから向かっているだけ・・・。
他の街の者は、ここを『終わりの街』と呼ぶ。この町に住む者は皆、ここから出られないまま、言い換えれば社会の底辺のままで一生を終えるのだ。
「お・・・お願いじゃ・・・た、食べ物を恵んでくだされ・・・」
通りを10分ほど歩いたところで浮浪者が物乞いをしてきた。
これらは吹き溜まりであるこの街の中でも、最も底辺である最貧困層に位置づけられる者達だ。
「・・・俺は何も持っていない。悪いが離してくれ。」
そう冷たく縋って来た老人を突き放し、また通りを歩き始めた。
通りの路上は同じような浮浪者の溜まり場となっていた。
ここから抜け出す方法なんて無い。ただ死を待つだけ・・・。
「畜生・・・、畜生!!」
浮浪者たちの悲痛な叫び。だが彼ら自身には何も出来ない。ただただ、それを受け入れるしかない。
駅前にも通り同様、路上に住処を失った者達が溜まっていた。
駅前には近代的な超高層ビルが林立し、一見、賑やかなメトロポリスを形成しているようにも見える。
しかし実情はこの有様だ。中央政府は何もしてくれない。ただ、黙って見ているだけ。
グライヴは図書館に向かっていた。別に読みたい本がある訳ではない。
本を読むことによって、新しい発見を得ることが出来るかもしれない。これも目的の一つ。
図書館は駅から歩いて3分程度の所にあった。当然そこに向かった訳だが・・・
案の定、休館日であった。開いていないものに一々愚痴を垂らしていたらキリが無い。そう思い、図書館を出た。
図書館の裏路地で3人の男が、一人の少年を取り囲んでいた。
「オイ、ちょっとォ?結構良い身なりしてんじゃねぇか。」
「おめぇ金持ってんだろ?少しオレ達に貸してくれよ」
「それとも・・・このナイフでバラバラに切り刻んでやろうかァ?」
男達は少年にナイフやらハンマーやらを向け、何時でも襲える様にと構えていた。
「・・・」
「アァ?」
「なんだって?」
「失せなさいと言ったんですよ。僕は君らみたいなカスに渡す無駄金を持ってないんです。」
少年はニコニコと微笑みながら男達に言い放った。
一見すると少女のような端正な顔立ち、少しウェーブの掛かった栗色の髪に紅い目。それに、品のある服。傍から見ればまさにブルジョアと形容するに値する身なりをしていた。
「へへ・・・このガキ自分が置かれている立場を理解してねぇみたいだな?」
「ちょっとお仕置きが必要かな〜?」
「どうする?殺っちまおうか?」
男達は顔に苛立ちの入った笑みを浮かべた。にも関わらず、彼は男達に
「お生憎様。僕は死にませんよ。死ぬのは貴方達。」
と言い放った。
「粋がってんじゃねぇぞクソガキィィィィ!!」
『ぶっ殺す!!!!!』
男達はナイフ、ハンマーを思い切り上げ、少年を狙って振り下ろした。
彼は手をポケットに突っ込んだままそれを見て、笑みを浮かべていた。
カァン!!!!!
金属通しがぶつかり合う鈍い音。そして宙を舞うハンマーとナイフ。そしてそれをただ呆然と見つめる男達。
「複数人で一人を襲うのは」
男達と少年は後ろを振り向いた。
手に握られた、長い鉄パイプ。全てを冷淡に見つめるアイスブルーの目。
「みっともないな。」
そこに立っていたのはグライヴだった。




