表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王討伐直前の勇者M、双子Sにメロメロにされて人族を裏切る  作者: モコナッツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/10

④勇者、覚醒する

 散々待たせたにも関わらず、二人は何事もなかったように怪訝な顔をしていた。何をしている訳でもないその表情を見るだけで昨日の興奮が蘇った。


 俺は心臓の高鳴りを出来るだけ悟られないよう、慎重に呼吸を整える。その様子さえ見透かされている気がした。


「惚けるなよ。お前らが来いって言ったんだろう」


 出来るだけ落ち着いて言った筈なのに、声がやけに震えていた。本当はすぐにでも二人に触れられたい。昨日のようにして欲しい。

 だが、それを言ったら何かが壊れてしまう気がした。


 俺のその様子に双子は顔を見合わせて嗤う。昨日の去り際と同じ、意地の悪い笑みを浮かべている。


「ミル達、そんなこと言ったっけ? ねえメル、覚えてる?」

「ううん。ねぇお兄ちゃん。メル達が何言ったのか、お兄ちゃんが何を期待してここに来たのか、自分のお口で言ってくれないかなぁ? そしたら、メル達思い出すかも知れないよ?」

「あはっ♪ 流石、メルは頭いいねえ。ほらお兄さん、こんな時間まで一生懸命待ってた理由。ちゃんと言えるよね? じゃないとミル達、帰っちゃうよ?」


 言えるわけがなかった。


 勇者である俺が、「お前達にもう一度会いたかった」だの、「双子のサキュバスにいっぱいイジメて欲しくてここに来た」なんて、言えるわけがない。


「そ、それはお前らがここに来いって言ったから……」


 自分でも、情けないのは痛いほど分かっている。それでもこれは勇者としての、リリアに対しての最後の意地だった。


「ふーん……」


 だが、この返事がよくなかった。


 二人の少女の目から笑顔と目の奥の光が消えていく。それはまるで、飽きた玩具を捨てるような、興味を失った目だった。


 全身から血の気が引いていく。


「だから言ってるじゃん、覚えてないって」

「お兄さん、ガッカリだよ。じゃあもう帰っていいよ。バイバイ」


「まっ、待ってくれ!」


 踵を返す二人を見て、俺は思わず膝をついた。

 ここでもうこの子達に会えなくなるなんて、そんなの絶対に嫌だ。


 どうせ誰も見ていない。この瞬間は勇者じゃなくていい。今は一人の男として、全てを差し出す理由だけがそこにはあった。


「先ほどはすみませんでした。……本当は、二人にイジメて欲しくて会いに来ました。お願いです……どうか行かないでください」


 そう言った瞬間、少女達の目に輝きが戻る。


「あはっ、お兄さん偉ーい♪」

「……全く、素直じゃないんだから。でも、メルは最初から分かってたよ?」


 そう言うと、メルは膝をついたままの俺にツカツカと歩み寄る。

 そして無言のまま片足を上げると、履いているブーツの底を俺の顔面に押し付けた。


「お兄ちゃんはどうしょうもないマゾの、変態勇者様だって」

「ありがとうございます……」


 ああ……これだ……。


 この為に俺は今日まで旅をしていたんだ。


 言葉に出来ない快感が身体中を駆け巡った。もう、全てがどうでも良いとさえ思えてくる。


 もっと踏まれたい。もっとなじられたい。

 なんだ、簡単な事じゃないか。


 自分の気持ちに素直になる事が、こんなにも気持ちいいなんて。


「うわっ、お兄さん涎出てるよ。最低ー、気持ち悪ーぅ」

「ダメだよ、お姉ちゃん。マゾのお兄ちゃんにはご褒美にしかならないよ。さ、お兄ちゃん、踏んであげるから仰向けになりなよ。クスクス……いっぱい我慢して待った分、良い子にご褒美をあげなくちゃね……」


 俺はすぐさま大の字で仰向けになる。


 触られてもいないのに、その言葉だけで頭の中が真っ白になる程に気持ちがいい。


「じゃあ次はミルが遊んであげる。せー、のっ、それっ!」


 ミルがブーツを履いたまま、俺の顔面に飛び乗る。

 魔力を流せば守ることは容易だが、無論、そんな勿体無い事はしない。踏まれた拍子に鼻の血管が切れて盛大に血が出る。その痛みすらも今は気持ちがいい。


「うわぁ……お兄さん本当にマゾなんだね。昨日はちょっとだけカッコいいって思ったのにガッカリだよ。ほら、ブーツが汚い血で汚れちゃった。お兄さんの服、雑巾にしちゃうけど良いよね?」


 胸の辺りを踏みつけて、靴底についた血をゴシゴシと肌着に擦り付ける。服越しにブーツで乱暴に撫でられているようで、自然と身体が反応してしまう。


「あははっ、お兄ちゃん興奮してる! 人間の勇者様がお姉ちゃんに足で擦られて、ビクビクってしちゃってるよお!」


 その様子を見てそれまで物静かだったメルが急に歓喜の声を上げた。抑え切れない様子で、俺の下半身を何度も乱暴に踏みつける。

 踏みつけられる度に全身に痺れるような痛みと、それを上回る快感が走る。


「あ”っ”! あ”っ”! あ”っ”!」

「おらっ! おらっ! 抵抗してみろよ! あははは、こんなのでも気持ちいいんだ!? 凄いねえお兄ちゃん、本物の変態さんだね!」


「……あーあ、メル楽しそう。お兄さん、私をガッカリさせた責任、取ってくれるよね? 今からお兄さんの鼻と口を指で抑えるから、ミルが『よし』って言うまで息しちゃダメだよ? もしお兄さんが約束破ったら、今度こそお兄さんの「大事なところ」を切り取っちゃうからね」


 そう言ってミルは白くて小さな手で俺の鼻と口を押さえつける。その力はさほど強くはない。


 振りほどく事は用意だが、約束を破ってまたあの冷たい目を向けられる恐怖には逆らえなった。そして彼女もまた、それを分かってやっている。その事実に酷く興奮する。


 メルに乱暴に踏みつけられても呼吸を我慢しながら、三分、四分、五分……と、ただひたすらに『よし』を待つ。

 徐々に息が苦しくなって身体が痙攣を始めても、目の前が白くなり始めて意識が遠くなっても、『よし』は一向にやってこない。


「お姉ちゃん、やりすぎじゃ無い? 流石にお兄ちゃんも死んじゃうよ?」

「まだ我慢……我慢……。お兄さん、手を離すけどまだ息しちゃダメだよ?」


 声が遠い。


 まだダメ、まだダメ……心の中でただひたすらにその事だけを繰り返す。

 何かが覆い被さった気がしたが、あまりの苦しさにそれどころでは無い。


「……『よし』っ! はい、お兄さん息吸ってー♪」


「っ――はぁっ!! はぁっ……はぁっ……!」


 肺が焼けるようだった。必死に空気を吸い込む。吸っても吸っても足りない。


「げほっ、ごほっ……っはぁ……!」


 涙が滲む。こんなに空気が美味いなんて、知らなかった。まるで、むせかえるような甘い匂いだ。咳と覆い被さったものがへばりついて上手く吸えなかったがそれでも必死になって吸う。


「よく出来ました♪ ……ほら、ご褒美だよ。ミルの匂い、いっぱい吸っていいからね」


 気がつくと、ミルが俺の顔に馬乗りになって覆い被さっている。意識が朦朧としていて、へばりついているものがミルのスカートの中だと分かるのに、しばらく時間が掛かった。


「お兄さん、ミルの命令で死んじゃうところだったんだよ? 馬鹿なの? そんなにミルの事、好きになっちゃったの?」


 スカートの中でゼェゼェと息を切らしたままの俺に、ミルが頭の上から話しかける。

 返事が出来る状況では無かったが、それに応えるようにミルの足を両手で押さえつけると、胸いっぱいに口と鼻から匂いを嗅いだ。


 これが俺なりの返事であり、誠意だ。


「ちょっ! お兄さん! それはいくら何でもダメっ、う……ああっ!」


 ミルがビクンと身体を大きく跳ねさせると、そのまま飛び退こうとする。ただ、両足を押さえつけているのでそのまま頭から倒れ込んだ。


「痛いっ!」

「ゲホッ、ゲホッ! ごめん、大丈夫か?」

「……も〜! お兄さんのバカっ! 変態っ!」


 涙目になるミルを見て、胸がいっぱいになる。さっきまで俺はこの子の命令で自ら死のうとしていたのだ。こんなか弱い淫魔一人に、勇者である俺が。最高だ。


「ふーん……」


 ゲシッ。


 不意に背後から腰に衝撃が入る。明らかに不満そうなメルが、ジトっとした目でこちらを見ていた。


「二人とも、メルの事忘れてないですかー? お兄ちゃん、贔屓は良くないよね? これはお姉ちゃんにも椅子になって貰わないとダメだね……」

「ひっ……!」


「メル様、椅子なら俺にやらせてください」

「は? 誰が喋って良いって言ったの? お兄ちゃんは絨毯だよ? 勝手に立ち上がる絨毯にも、勿論お仕置きしないとだよねえ?」

「ありがとうございます……! ありがとうございます……!」


 そうしてすっかり日も暮れて暗くなるまで、俺二人の責苦を思う存分に楽しんでしまった。


 何時間経ったのか分からなかった。

 

 顔は大きく腫れ上がり、服もボロボロ。肋にヒビが入っているかもしれない。そして全身が涎や色んな汁で、ぐちゃぐちゃになっている。


 そして絨毯どころか雑巾のように使い潰された。何も知らない人からすれば、どう見ても満身創痍だろう。ただ、河原で打ち捨てられた俺の心はこれまでに無いくらいに満たされていた。


「あー、面白かった。お兄さん、また明日も来るよね? 明日も楽しい事、いっぱいしよ?」

「まあ、私達はいつ来るか分からないけどねー? お兄ちゃんは多分来るんでしょ? 惨めに待ってた分だけ、沢山遊んであげる。ふふっ」


 去っていく二人の声だけが遠くなっていく。


 明日も会える。


 明日も会える。


 明日も会える。


 その幸せを、言葉を、何度も何度も頭の中で反芻した。


 同時に、リリアとの昨日の想い出はもう帰ってこないという事を、心のどこかでは理解してしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ