第18話 評価と、仮加入
——王都・行政庁舎 中庭
石畳。
乾いた空気。
昼。
訓練用の柱が立っている。
古い木。
何度も折られた跡がある。
怜は中央に立っていた。
周囲に四人。
大柄な男。
腕を組んでいる。
ラウル。
長銃を背負った男。
軽い目つき。
ユーグ。
医療袋を肩に掛けた女性。
落ち着いた顔。
セラ。
そして。
机の横に立つ男。
記録官。
エーベル。
紙が一枚めくられる。
乾いた音。
「高円怜」
「はい」
エーベルは目を落としたまま言った。
「戦闘力」
一拍。
「E」
ユーグが口を開いた。
「新人だな」
軽い調子。
ラウルは何も言わない。
ただ一度だけ頷いた。
セラが穏やかに言う。
「初任務前ですもの」
当然の口調。
誰も驚かない。
誰も説明しない。
それが普通だった。
行政職員が書類を机に置いた。
「状況を確認する」
短い。
「ブリギットは遠征中」
一拍。
「マーラは別任務」
怜は小さく頷いた。
知っている。
「帰還予定」
「三日後」
沈黙。
「人員が不足している」
短い。
紙が回される。
臨時編成書。
名前が並ぶ。
ラウル
セラ
ユーグ
空欄。
一つ。
視線が自然に集まる。
怜へ。
ユーグが笑った。
「穴埋めだな」
ラウル。
「仮加入」
短い。
セラ。
「安全確認は必要ですね」
職員が頷く。
「そうだ」
指が。
訓練柱を示した。
「一本」
短い。
それだけ。
怜は柱を見る。
距離。
五歩。
太さ。
腕二本分。
息を吸う。
静かに。
右手を上げる。
風。
集まる。
細く。
静かに。
次の瞬間。
ドン。
柱が横から押されたように揺れた。
ミシ。
木が鳴る。
そして。
パキ。
柱が折れた。
沈黙。
ユーグが最初に口を開いた。
「十分だな」
率直。
ラウルが言う。
「制御がいい」
短い。
セラ。
「無駄がありません」
穏やか。
その時。
小さな音。
カチ。
怜の胸元。
レジストリ。
内部で。
静かに。
刻まれた。
戦闘履歴:試験
属性:風
結果:構造物破壊
一拍。
もう一行。
戦闘力
E → D
エーベルのペンが止まった。
紙を見る。
確認。
頷く。
ペンが動く。
「更新済み」
短い。
ユーグが肩をすくめた。
「早いな」
一拍。
「普通は初任務のあとだ」
ラウルが言う。
「記録は正直だ」
セラが小さく笑った。
「助かります」
誰も驚かない。
誰も説明しない。
それが普通だった。
行政職員が書類を引き寄せる。
ペンを持つ。
インクが落ちる。
名前が書かれる。
高円怜
その瞬間。
胸元のレジストリ。
静かに。
確実に。
刻まれる。
所属:臨時編成
状態:仮加入
戦闘力:D
風が止まった。
ユーグが言う。
「じゃあ行くか」
軽い。
ラウルが歩き出す。
セラが医療袋を持ち直す。
怜は一歩進んだ。
初任務だった。
記録に残る。
EX :(国家戦力級)評価規格外
S :都市防衛級
A :精鋭
B :熟練
C :標準兵
D :実戦可能(新人上位)
E :新人
F :訓練中
G :非戦闘員




