第五話
シャオジェたちとて遊んでいるばかりではない。教養のための勉強に、習い事、礼儀作法。学ぶことはたくさんある。交流会は、実践の場としての役割もあった。
前回から三日ほど置いて、今日は第三と第四の担当だ。
前半は第三と植物観察と押し花づくり、後半は第四と遊戯をすることになっている。
「あ、アル姉様を差し置いて、わたくしの番で、よろしいのでしょうか……」
集合時間前、ぽつぽつと集まり始めた会場で、第四は心細そうに震えていた。
「仕方ないじゃない。アル姉様はご用意があるとかで、後の方がいいと仰ったのだもの。スーは皆をもてなすのが不安?」
第三が困ったように第四を見る。すると第四はぷるぷると頭を振って、ぐっと姿勢を伸ばす。
「た、楽しみ、ではある……」
そんな二人のところに、第八が顔を出した。
「サン姉様、スー姉様、ごきげんよう。今日はとても楽しみにしておりましたの、どんなことをするのでしょう?」
ワクワクと興奮しているのが分かり、第八が光を背負ってきたように場の空気が明るくなる。
第三は微笑ましげに第八を見た。
「楽しみにしていてくれてありがとう、バー。皆様がお集まりになったら教えるわ。もう少し待っていてちょうだい。」
「はい、サン姉様!」
第八は軽く一礼すると、他のシャオジェに挨拶をしに行く。
第四は、今日用意したゲームを思い出して、楽しんでもらえるかと一人気を揉んでいた。
全員が集まると、まずは第三指揮のもと、植物観察だ。今日シャオジェたちは、秋の庭に面した部屋に陣取っている。秋の庭にどんな植物が植えられているか予習して、実際に見に行き、気に入った植物を写生する。
絵の腕前はそれぞれだったが、第三の描いた植物の精密さに第八は舌を巻いた。まだまだなのよ、と笑う第三に信じられない気持ちだ。
そして一輪だけ手折っていいことになっているので、それぞれ好みの花を取って、次は押し花づくりだ。紙に花を包み、紙の嵩を増して重しをする。平らになった時、見栄えが良いように花を置くのは少し苦労した。出来上がりまで第三が預かり、管理してくれると言ったところで、昼食の時間になった。
後半に第四が持ってきたゲームは、お手製の双六だった。第四の自信がなさそうな態度は相変わらずだが、文字を勉強中の五歳組でも見やすいように、ルールも複雑ではないものをと考えた結果だと熱く語ってくれた。
「ろ、六面体のサイコロを、ふたつ振って、出目の多い方の数だけ、進めます……始点から初めて、一番に終点へとたどり着いた者の勝ち、です。」
完全に運ゲーだから、個人の技量も何も関係ない、と意気込む第四。この結論に至るまで、とても悩んだのだ。
「で、では、イー姉様から、どうぞ。」
第一から身分順に、サイコロを振っていく。途中のマスには『イー姉様のお好きなものは?』『昼食で出たものの中で好きなものは?』など簡単なクイズが書かれており、答えられなかったり間違えたりしたら一回休みらしい。
シャオジェたちはコロコロと笑いながらゲームに興じ、終点まで後少し、と言う所まで来た。現在のトップは第一と第八だ。
「次はわたくしの番ですね!」
終点を目前にした第八は、意気込んでサイコロを取る。筒に入れたサイコロをコロコロ振ると、てやっと卓の上に転がした。
「二と五……だから、五マス……」
コトコトと自分の駒を進めていく。
第一もサイコロを振り、三と四が出て四つ駒を進める。
白熱した接戦に、第八のテンションは上がりっぱなしだ。
「もう少しですよ、イー姉様!わたくし、負けません。」
嬉しそうに笑う第八に、つられて第一も微笑んだ。
「失礼いたします。第一シャオジェ様、そろそろ次のご予定が……」
だが、侍女の遮る声に一気に落胆のため息が場に満ちた。どうやらゲームに熱中するあまり、予定時間になっていたようだ。
「ごめんなさい、バー。勝負はお預けね。」
第一が苦笑しながら席を立つ。他のシャオジェたちも次々と席を立ち、別れの挨拶をし始めた。
第八は双六を見つめたまま、なかなか立ち上がろうとしない。第六に促されて、のろのろ席を立ち、挨拶をする。その声は不満げだ。
第一が近づいて、そっと目線を第八に合わせる。
「バー。わたくしは第一シャオジェとして、いずれ国の頂に立つ者として、学ぶことが多いのです。」
「……わかっています、イー姉様。」
分かっていても、感情が追いつかないらしい。拗ねたような第八を見て、第一は優しく微笑む。
「あなたには、何かやるべきことは、ないのかしら?」
「……やるべき、こと……?」
第八はぽかんと第一を見つめるが、第一は侍女に促されてその場を去っていった。
他のシャオジェに促されて退室し、部屋に戻った後も、第八の心には第一の言葉が引っかかっていた。




