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神源華の翡翠 外伝 玉華の章  作者: さわば


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第四話

 その後、シャオジェたちの持ち回りで、交流会が開かれるようになった。

 顔合わせのお茶会から数日後。

 今日の集まりでは、昼食を挟んで前半は第一シャオジェと音楽を楽しむ時間、後半は第五シャオジェの読書会という構成になっている。


 年上のシャオジェたちは既に得意な楽器を持つほどになっているが、まだ五歳の第六、第七、第八は基本の(こと)を練習中だ。

 指慣らしを終えると、教師役の世話係達が各々に合わせた課題を出し、音が奏でられる。第八も四苦八苦しながら、何とか基本の音階を鳴らす。

 

 周囲からは、年上のシャオジェたちのお稽古の、優美な音色が聞こえる。

 第八は音階の練習を繰り返しながら、姉たちの演奏に耳を傾けた。

 十一歳の第一は、琵琶を弾いていた。シャオジェたちの中でも抜きん出て腕がいい。

 箏を操る第二と、笙を吹く第三は、同じ九歳だ。第一に続く年長組、やはり腕がいい。

 第四は二胡を弾き、第五は楊琴を叩いている。二人は七歳だ。前回おどおどしていた第四だが、意外にも伸びやかな音を奏でる。

 そして、第八は自分と同い年のシャオジェの音へと耳を傾ける。第六の音は危なげがなく、第七は卒がない。自分も負けていられないと、練習に力を入れる。


 一通り練習が済んだところで、第一が皆に声をかけた。


「せっかく皆、集まっているのですもの。合奏してみませんこと?簡単な曲でいいですから。」


 にこにこと嬉しそうな第一を見て、最年少三人組は緊張する。まだやっと音階を覚えているところなのだ、姉たちの邪魔になりはしないかと。

 それを見た第二が、微笑みながら語り掛ける。


「そんなに気負わないで、音遊びだと思ってくださいな。わたくしたちの演奏を聞き、一緒に音を奏でるだけでいいのです。」


 それを聞いた第八は見るからにほっとした様子だが、第七は何とも言えない顔をし、第六は微笑みつつも目に闘志を宿している。


「では皆さん、準備はよろしくて?」


 侍女たちが、円を描くようにシャオジェたちの席を整えていく。そこに着きながら、第一が曲名を出す。初心者向けの練習曲だ。

 第八も、お稽古の時間に何度も聞かせられていて、知っている曲だ。姉様たちはどんな演奏をするのだろう、とわくわくしてきた。


 第一の目配せを受け、第二が主旋律を弾き始めると、他の面々が合わせるように音を奏でていく。

 一体となった音は、華やかで、美しくて、第八はうっとりした。

 そこに、邪魔にならない程度に一音一音、音が足されていく。

 音の出所を見ると、第六が姉たちについて行こうと、全身で音を感じ、探しているのが分かった。

 第七は成り行きを見守りつつ、第六に刺激されたのか構えている。

 自分もぼーっとしていられないと、第八も弦に触れた。


 皆の耳に、転がるようなじゃじゃ馬な音が届く。

 思わず出所を確認すると、発生源は第八だった。

 多くのシャオジェは動揺するが、第一が率先してアレンジを加えていく。その様子を見て、他のシャオジェたちは第一のアレンジに呼応するように音を奏でる。

 よく聞く練習曲が、実に明るくて、楽しげな曲になっていく。

 第六はなんとか食いついていきながら、第七は呆然としながら、それぞれの温度で『とんでもない妹だな』と思う。

 第一が終節に、力強く音を出したのが、終了の合図だった。


「はあ、楽しかった!」


 第一の心からの笑顔に、周囲もやり切った顔、ほのぼのした顔で微笑む。


「少し休憩にいたしましょう……あら、もう昼餉の時間?では、昼餉が終わったら読書会ですね。また皆で合奏、しましょうね。」

「はい、イー姉様!」


 誰よりも元気に、第八は返事をした。


 午後は、まず第五が今好きな本を紹介し、皆で読む。今日は少し前に流行した文学書だった。文学書と言っても色々あるが、ちょうど十代前半の子らを対象に発表された作品らしい。五歳組はまだ読めるところが少ないので、第五が朗読してくれる。

 そして各々感想と考察を述べるが、第五が熱くなって長々と喋っていたのはご愛敬だ。


「……姉様たちは、すごいなぁ。」


 意見交換をするシャオジェたちを見て、第八が思わず呟く。まだ、内容を理解するのに精いっぱいで、感想や考えを持ち話し合うところまで行けていないからだ。

 その呟きを拾った第六が、第八に微笑みかける。


「わたくしたちも、もっとお勉強しないとね。」

「……はい!そうだ、もう一度読んでいただきましょう。」


 さっそく第五に頼もうと思った第八だが、第七が軽く手を挙げてそんな第八を制する。

 不思議に思ってそちらを見ると、第六を挟んで更に隣にいた第七は、食い入るようにシャオジェたちの話を聞いていた。

 

「姉様たちはお忙しそうだから、侍女にもう一度読んでいただいたら良いのではなくて?」


 なるほど、確かに姉様たちは議論に夢中だと、第八は頷く。


「ありがとうございます、チー姉様。そう致します。」


 第七は、そう言ってにっこり笑う第八の方を見ることはなかったが、第八は気にすることなく侍女を呼んで読み聞かせてもらう。

 その日は、第一が勉学の為に呼ばれる時間まで、楽しい読書会は続いたのだった。

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