土地の価値
祖母の家には、まだ荷物が残っていた。
食器。
服。
家具。
誰も使わなくなったものばかりだった。
大人たちは、それをどうするか話していた。
「家は古いからな」
「土地だけでも売れるんじゃないか」
「一度、見てもらおう」
数日後。
一人の男が家に来た。
スーツを着ていた。
鞄を持っている。
不動産屋だった。
男は家の中を見た。
窓を開ける。
庭を見る。
道路から家までの距離を見る。
それから、外へ出た。
黒崎もついていった。
男は土地を眺めていた。
「この辺りなら……」
何かを書いている。
黒崎は、その手元を見ていた。
「いくらですか?」
男が顔を上げた。
「ん?」
「この土地」
男は少し考えた。
「そうだな……」
金額を言った。
黒崎は黙った。
思っていたより大きな数字だった。
「そんなにするの?」
「土地だからね」
男は当たり前のように言った。
「家じゃなくて?」
「家も含めてだけど、基本は土地だよ」
黒崎は地面を見る。
ただの地面だった。
土がある。
草が生えている。
古い家が建っている。
それだけ。
「これが?」
「そう」
男は頷いた。
「土地には値段があるからね」
黒崎は、もう一度地面を見た。
祖母が死んだ。
家には誰もいなくなった。
食器も服も、いずれ捨てられる。
家も古くなれば壊される。
でも。
土地は残る。
そして、それには値段がつく。
黒崎は黙っていた。
不動産屋が帰ったあとも、しばらく庭にいた。
地面を見た。
昨日までと何も変わっていない。
なのに。
今日からは違って見えた。
黒崎は小さく呟いた。
「土地って、金になるんだ」
それだけだった。




