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『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


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東方カンパニー

東方エネルギーは。


 かつて。


 エネルギーと資源を扱う会社だった。


 発電。


 資源開発。


 海外インフラ。


 それが。


 会社の中心だった。


 だが。


 少しずつ。


 変わっていった。


 エネルギー設備に使う。


 高性能な半導体。


 発電所を管理する。


 AIシステム。


 自動化する。


 産業用ロボット。


 それらを。


 外部の企業だけに。


 頼る必要はない。


 そう考えた経営陣が。


 研究開発を始めた。


 最初は。


 小さな研究部門だった。


 やがて。


 専門企業への出資が始まる。


 共同研究が始まる。


 そして。


 子会社が増えていった。


 半導体。


 AI。


 通信。


 素材。


 ロボット。


 さらに。


 宇宙関連技術。


 防衛関連技術。


 どれも。


 最初から大規模だったわけではない。


 一つずつ。


 必要な技術を。


 取り込んでいった。


 その結果。


 東方エネルギーは。


 いつの間にか。


 エネルギーだけの会社では。


 なくなっていた。


 ある日の。


 取締役会。


「社名について。


 提案があります」


 社長が。


 資料を開く。


「東方エネルギーという名前を。


 変更したい」


 役員たちが。


 資料を見る。


「エネルギー事業は。


 今でも。


 我々の基盤です」


「しかし。


 現在の事業領域を考えると。


 エネルギーだけでは。


 会社全体を表せません」


 資料には。


 いくつもの事業が並んでいる。


 エネルギー。


 資源。


 半導体。


 AI。


 通信。


 工業。


 宇宙。


 防衛。


 海外インフラ。


「今後も。


 新しい産業へ進出します」


「ならば。


 もっと広い名前にするべきです」


 しばらく。


 議論が続いた。


 そして。


 一つの名前が。


 候補に上がった。


「東方カンパニー」


 会議室が。


 静かになる。


「東方という名前は。


 これまで残してきた」


「それに。


 世界で使うなら。


 分かりやすい」


 社長が。


 資料を閉じた。


「東方エネルギーから。


 東方カンパニーへ」


 その日の夜。


 黒崎のもとにも。


 報告が届いた。


 美咲が。


 資料を読む。


「社名変更だって」


「そうみたいだな」


「東方カンパニー」


 黒崎は。


 その名前を。


 しばらく見ていた。


「……大きくなったな」


「そうだね」


 美咲は。


 少し笑った。


「最初は。


 どうなるか分からなかったのに」


 黒崎は。


 資料から目を離さなかった。


 東方エネルギー。


 その名前を見ていると。


 昔のことを。


 思い出す。


 まだ。


 黒崎が何も持っていなかった頃。


 仕事を失い。


 家族とも離れ。


 自分の人生に。


 何の価値があるのか。


 分からなくなっていた。


 その時。


 黒崎が。


 初めて。


 全てを賭けた会社だった。


 株価は。


 低かった。


 市場の期待も。


 高くなかった。


 それでも。


 黒崎は買った。


 現物。


 信用。


 借りた金。


 使えるものを。


 すべて。


 東方エネルギーに入れた。


 そして。


 一度。


 大きく負けた。


 資産は。


 大きく減った。


 借金だけが。


 残った。


 それが。


 黒崎にとって。


 最初の大きな挫折だった。


 それでも。


 売らなかった。


 会社の未来を。


 完全に信じていたわけではない。


 ただ。


 自分の判断まで。


 捨てたくなかった。


 だから。


 持ち続けた。


 その後。


 会社は変わった。


 海外資源へ進出した。


 インフラを手掛けた。


 新しい技術へ。


 投資を始めた。


 そして。


 半導体。


 AI。


 通信。


 宇宙。


 防衛。


 少しずつ。


 事業が増えていった。


 黒崎も。


 投資会社「黒崎」を通じて。


 さらに株式を買い増した。


 会社が成長する。


 黒崎も。


 持ち株を増やす。


 気がつけば。


 黒崎は。


 東方エネルギーの。


 筆頭株主になっていた。


 経営そのものを。


 黒崎が行っているわけではない。


 会社を動かしているのは。


 経営陣だ。


 黒崎は。


 筆頭株主として。


 その成長を見ていた。


 そして。


 今。


 その会社の名前が。


 変わろうとしている。


「……少し寂しいな」


 黒崎が。


 呟いた。


 美咲が。


 顔を上げる。


「珍しいね」


「そうか?」


「あなたが。


 会社の名前を惜しむなんて」


 黒崎は。


 少し笑った。


「この会社には。


 俺の最初の挫折が残ってるからな」


 美咲は。


 黙って頷いた。


「でも。


 なくなるわけじゃないよ」


「ああ」


「名前が変わるだけ」


「そうだな」


 黒崎は。


 承認書類に目を通した。


 そして。


 筆頭株主として。


 静かに署名した。


 数か月後。


 正式発表。


『東方エネルギー、東方カンパニーへ社名変更』


 市場では。


 大きな混乱は起きなかった。


 事業内容そのものが。


 変わるわけではない。


 ただ。


 会社の名前が。


 変わっただけ。


 そう考える人間も。


 多かった。


 しかし。


 東方カンパニーは。


 すでに。


 世界各地に。


 拠点を持っていた。


 発電施設。


 資源開発拠点。


 半導体関連工場。


 AI研究施設。


 通信設備。


 宇宙関連施設。


 防衛関連事業。


 そして。


 ヴィクターの国。


 そこにも。


 巨大なプラントがある。


 かつて。


 戦争で荒れていた土地。


 今では。


 東方カンパニーの。


 大規模プラントを中心に。


 工業地帯が広がっていた。


 関連企業。


 研究施設。


 物流拠点。


 道路。


 発電設備。


 そして。


 新しい街。


 ヴィクターは。


 視察で。


 その施設を訪れていた。


「大きくなったな」


 盟友が。


 プラントを見上げる。


「ああ」


 ヴィクターは。


 静かに答えた。


「ここも。


 昔は何もなかった」


 戦争が終わった直後。


 残っていたのは。


 壊れた建物と。


 荒れた土地だった。


 今は。


 工場から。


 技術者が出てくる。


 作業員が歩く。


 物流車両が行き交う。


 研究施設には。


 若い技術者たちがいる。


 戦場だった場所に。


 産業が生まれていた。


「これが。


 復興ってことか」


 盟友が言う。


 ヴィクターは。


 しばらく。


 工場を見ていた。


「ああ」


「戦争に勝つだけじゃ。


 国は変わらない」


「こういうものを。


 残していくことなんだろうな」


 その言葉の先で。


 巨大なプラントが。


 静かに動いていた。


 その頃。


 日本。


 黒崎の自宅。


 机の上には。


 新しい資料がある。


 表紙には。


 東方カンパニー。


 その下には。


 世界各地の事業一覧。


 黒崎は。


 しばらく。


 それを眺めていた。


 かつて。


 傾きかけていた会社。


 そこに。


 自分の人生を賭けた。


 一度は。


 大きく失った。


 それでも。


 手放さなかった。


 その会社が。


 今では。


 世界の産業の一角を。


 担っている。


「……長かったな」


 黒崎が。


 呟く。


 美咲が。


 隣に座る。


「まだ終わってないよ」


「ああ」


 黒崎は。


 資料を閉じた。


 そして。


 別の資料を開く。


 そこには。


 AI。


 宇宙。


 防衛。


 半導体。


 素材。


 新しいエネルギー。


 世界各地の土地。


 そして。


 まだ誰も注目していない企業。


 黒崎は。


 その一つを指でなぞった。


「……こっちも面白いな」


 美咲が。


 笑う。


「本当に終わらないね」


「終わる理由がない」


 東方カンパニーが。


 一つの巨大企業へ。


 成長していく。


 その一方で。


 投資会社「黒崎」は。


 東方カンパニーだけに。


 依存していなかった。


 世界の有望企業。


 有望な土地。


 将来。


 重要になる場所。


 それらを。


 少しずつ。


 買っていた。


 企業を育てる。


 土地を押さえる。


 必要なら。


 資金を出す。


 そして。


 長く持つ。


 それが。


 黒崎夫妻の。


 投資だった。


 東方カンパニーは。


 その中でも。


 特別な存在だった。


 黒崎自身の。


 最初の投資。


 最初の挫折。


 そして。


 最初に。


 大きな成功を掴んだ会社。


 だから。


 その名前が変わる日を。


 黒崎は。


 静かに見届けた。


 そして。


 世界では。


 新しい名前が。


 少しずつ。


 知られていく。


 東方カンパニー。


 まだ。


 その名前を。


 ただの大企業だと。


 考える人間も多かった。


 だが。


 そのさらに上には。


 投資会社「黒崎」がいる。


 それを。


 知る人間は。


 まだ。


 ほとんどいなかった。

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