↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/186

災害

 雨が。


 何日も。


 降り続いていた。


 最初は。


 誰も。


 大きな問題になるとは。


 思っていなかった。


 だが。


 川の水位が。


 少しずつ。


 上がっていった。


 そして。


 ある夜。


 堤防が。


 決壊した。


 大量の水が。


 街へ流れ込む。


「洪水です!」


 地方自治体の職員が。


 叫んだ。


「避難指示を出せ!」


「どの地域まで?」


「川沿い全部だ!」


 街が。


 一気に動き始めた。


 消防。


 警察。


 医療関係者。


 そして。


 住民。


 それぞれが。


 動き始める。


 しかし。


 問題も起きた。


「中央からの指示は?」


「まだ来ていません」


「どうする?」


 職員が。


 顔を見合わせる。


 以前なら。


 中央の判断を。


 待っていた。


 だが。


 地方自治改革によって。


 状況が変わっていた。


「市長。


 判断してください」


「……分かった」


 市長は。


 決断した。


「避難所を開ける」


「学校も?」


「全部だ」


「食料は?」


「市の予算を使う」


「足りなくなったら?」


「その時は中央へ要請する」


 地方が。


 動き始めた。


 その頃。


 政府庁舎。


 BAのもとにも。


 報告が入った。


「大規模な洪水です」


「被害は?」


「現在確認中です」


「地方は?」


「すでに避難を始めています」


 BAは。


 少しだけ。


 頷いた。


「なら。


 まず任せる」


 部下が。


 驚く。


「中央から指示を出さないんですか?」


「現場の方が早い」


「ですが――」


「必要なものが来たら。


 すぐ送る」


「分かりました」


 BAは。


 地図を見る。


 被災地域。


 道路。


 病院。


 避難所。


 河川。


 頭の中で。


 すべてを繋げる。


「医療班を増やす」


「はい」


「食料も」


「手配します」


「道路が使えなくなった場合の。


 代替ルートも確保して」


「分かりました」


 次々に。


 指示が飛ぶ。


 だが。


 地方の判断を。


 中央から覆すことはしなかった。


 翌朝。


 BAは。


 現地へ向かった。


 被災した街。


 道路には。


 水が残っている。


 家屋の一部も。


 浸水していた。


 避難所には。


 多くの住民がいる。


「大臣!」


 地方職員が。


 駆け寄ってくる。


「被害は?」


「死者は今のところありません」


「よくやった」


「ただ。


 病院が厳しいです」


「何が足りない?」


「医薬品。


 それと。


 発電機です」


「分かった」


 BAは。


 すぐに中央へ連絡した。


「今日中に届ける」


「はい」


 避難所へ向かう。


 そこには。


 老人。


 子供。


 怪我をした人。


 不安そうな顔が。


 並んでいた。


 BAは。


 一人ずつ。


 話を聞いた。


「家は?」


「川の近くです」


「戻れる状態じゃない?」


「はい」


「分かった」


「仕事も。


 どうなるか……」


 BAは。


 少し考えた。


「今は。


 生きることだけ考えてください」


「仕事や生活のことは。


 あとで国が考える」


 住民は。


 黙って頷いた。


 その日の午後。


 中央から。


 支援物資が到着した。


 医薬品。


 食料。


 発電機。


 簡易ベッド。


 地方側が。


 必要なものを判断し。


 中央が。


 それを支える。


 改革後。


 初めての。


 大規模災害だった。


 そして。


 制度は。


 機能した。


 数日後。


 雨が。


 ようやく止んだ。


 川の水位も。


 下がっていった。


 街には。


 泥が残っていた。


 道路も。


 まだ使えない場所がある。


 それでも。


 人々は。


 少しずつ。


 生活を取り戻し始めていた。


 市長が。


 BAのもとへ来た。


「ありがとうございました」


「何が?」


「中央が。


 すぐに支援してくれたことです」


 BAは。


 首を振った。


「違う」


「?」


「最初に動いたのは。


 あなたたちだ」


 市長が。


 黙る。


「俺たちが。


 中央で会議をしている間に。


 現場では。


 人が逃げなきゃいけない」


「だから。


 判断を任せた」


「そして。


 必要なものだけ。


 中央が出した」


 市長は。


 深く頷いた。


「……地方に任せる。


 という意味が。


 少し分かりました」


 BAは。


 街を見る。


「任せるだけじゃない」


「支える」


「それが。


 中央の仕事だ」


 その言葉は。


 その後。


 全国へ広がった。


 地方自治。


 それは。


 中央が地方を放置することではない。


 地方が。


 自分たちで動く。


 中央が。


 その背中を支える。


 その仕組みが。


 初めて。


 大きな危機の中で。


 証明された。


 数週間後。


 復旧が進んだ街で。


 BAを見つけた住民が。


 声を上げた。


「ヴィクター!」


 一人。


 また一人。


 人が集まってくる。


「BA!」


「ヴィクター・ヘイル!」


 その声を。


 BAは。


 静かに聞いていた。


 かつて。


 戦場で。


 BAと呼ばれた。


 今。


 地方では。


 ヴィクター・ヘイルと呼ばれる。


 その名前に。


 少しずつ。


 新しい意味が。


 加わっていた。


 戦う男。


 ではない。


 困った時に。


 現場へ来る男。


 話を聞く男。


 そして。


 必要な時に。


 国を動かす男。


 BAは。


 集まった人々に。


 深く頭を下げた。


 歓声が。


 街に響く。


 BAは。


 そのまま。


 次の被災地へ向かった。


 まだ。


 復旧は終わっていない。


 そして。


 国の仕事も。


 終わらない。


 ヴィクター・ヘイルは。


 また。


 現場へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。