中央と地方
翌朝。
BAは。
いつもより早く。
政府庁舎へ向かった。
昨日までとは。
少しだけ違う。
正式な役職が決まり。
そして。
名前も。
与えられた。
受付で。
職員に呼び止められる。
「お名前を」
BAは。
一瞬だけ黙った。
これまでは。
BAで通していた。
だが。
今日は。
「ヴィクター・ヘイルです」
職員が。
書類を見る。
「……ヴィクター・ヘイル」
その名前が。
書類に書かれる。
BAは。
その様子を。
黙って見ていた。
まだ。
少しだけ。
不思議な感覚だった。
会議室。
新政府の幹部が。
集まっていた。
「今日から。
内務部門の再編を始める」
大統領が言う。
「まず。
中央と地方の関係を見直す」
幹部たちが。
資料を開く。
現在の行政制度には。
問題が多かった。
革命前から残っている制度。
戦争中に作られた臨時制度。
革命軍が各地で運用していた行政。
それらが。
まだ一つにまとまっていない。
「地方によって。
行政のやり方が違いすぎます」
一人が言う。
「税制も。
予算配分も。
警察の指揮系統も違う」
「統一する必要があります」
別の幹部が続ける。
BAは。
資料を見ていた。
「統一するだけで。
いいんですか?」
部屋が静かになる。
「どういう意味だ?」
大統領が聞く。
「地方には。
地方の事情があります」
BAは。
地図を見る。
「山間部と。
都市部では。
必要なものが違う」
「港のある地域と。
農村部でも違う」
「全部を中央から決めたら。
また現場が困ります」
幹部の一人が。
反論する。
「しかし。
地方に任せすぎれば。
国としてまとまりません」
「だから」
BAが答える。
「最低限の基準は。
国が決める」
「その上で。
地方に任せる」
「地方自治を強くするのか?」
「はい」
BAは。
迷わなかった。
「現場を知らない人間が。
全部決めるより。
現場にいる人間が決めた方が。
早いこともあります」
大統領は。
黙って聞いていた。
「君は。
地方行政を。
どう見ている?」
BAは。
少し考えた。
「地方は。
国の下ではありません」
幹部たちが。
一斉にBAを見る。
「国を構成する。
一つ一つの場所です」
「だから。
中央が地方を管理するんじゃなく。
中央と地方が。
一緒に国を作る仕組みにしたい」
大統領は。
小さく頷いた。
「いいだろう」
会議が進む。
地方自治。
行政予算。
警察制度。
災害対策。
復興計画。
次々と。
議題が出される。
BAは。
一つずつ意見を出した。
派手な改革ではない。
しかし。
現場で何が起きているのか。
それだけは。
誰よりも理解していた。
会議が終わる。
BAが。
廊下へ出る。
そこに。
盟友が待っていた。
「どうだった?」
「疲れた」
「はは」
盟友が笑う。
「お前。
昔から会議は苦手だったな」
「今も変わらない」
BAも。
少し笑った。
そのとき。
後ろから声がした。
「ヴィクター」
BAが。
振り返る。
大統領だった。
BAは。
少しだけ驚いた。
「はい」
「その名前。
もう慣れたか?」
「まだです」
「そうか」
大統領は。
笑った。
「無理もない」
「だが。
いつか慣れる」
BAは。
少し考えてから。
答えた。
「……そうですね」
大統領は。
そのまま去っていった。
BAは。
廊下に立ったまま。
自分の名前を。
もう一度。
心の中で呼んだ。
ヴィクター・ヘイル。
まだ。
BAの方が。
自分らしい。
だが。
これからは。
この名前で。
国の仕事をする。
午後。
BAは。
地方から届いた報告書に目を通していた。
道路の補修。
学校の再建。
病院の不足。
農業用水。
雇用。
どれも。
数字だけでは分からない問題だった。
BAは。
一つの報告書を手に取った。
「この地域。
予算が足りないな」
部下が答える。
「中央からの配分は。
基準通りです」
「でも。
足りてない」
「はい」
BAは。
報告書を閉じた。
「現地を見に行く」
「大臣自らですか?」
「自分で見た方が早い」
部下が。
少し驚く。
しかし。
BAは。
すでに立ち上がっていた。
中央政府の建物。
大きな机。
大量の書類。
その中だけにいるつもりは。
最初からなかった。
地方で。
人々の声を聞いてきた。
だからこそ。
中央に来た。
国の仕組みを変えるために。
そして。
その仕組みが。
本当に人々の生活を変えるのか。
自分の目で確かめるために。
BA。
いや。
ヴィクター・ヘイルは。
政府庁舎を出た。
車が。
地方へ向かって走り出す。
中央と地方。
その距離を。
少しでも縮めるために。
新政府の内務改革は。
この日。
本格的に動き始めた。




