初代大統領
投票が。
終わった。
会場は。
静まり返っていた。
集計が進む。
一票。
また一票。
そして。
最後の票が。
読み上げられた。
「以上です」
責任者が。
紙を置いた。
しばらく。
誰も動かなかった。
「結果を発表する」
全員が。
前を見る。
「初代大統領は――」
一瞬の間。
「歴戦の将軍に決定した」
会場に。
拍手が起きた。
大きくはない。
だが。
確かな拍手だった。
将軍は。
立ち上がった。
深く頭を下げる。
若手候補も。
立ち上がった。
そして。
将軍と握手を交わした。
「おめでとうございます」
「ありがとう」
短いやり取りだった。
その後。
将軍が。
新政府の幹部たちを見る。
「私は。
この国を守る」
静かな声だった。
「だが。
守るだけでは。
国は続かない」
幹部たちが。
顔を上げる。
「経済を。
立て直さなければならない」
将軍は。
若手候補を見る。
「君に頼みたい」
「私に?」
「ああ」
「何をです?」
「経済と外交だ」
会場が。
少しざわついた。
若手候補は。
驚いた顔をした。
「私は。
あなたと違う考えです」
「知っている」
「それでも?」
「だからだ」
将軍は。
続けた。
「この国を。
外へ開く必要がある」
若手候補が。
黙る。
「外国との貿易も。
企業の誘致も。
技術の導入も必要だ」
将軍は。
はっきりと言った。
「だが。
国を開くことと。
国を無防備にすることは違う」
若手候補は。
将軍を見る。
「……分かりました」
その言葉を聞いて。
将軍は。
小さく頷いた。
その日の夕方。
BAは。
若手候補と話していた。
「負けましたね」
「ああ」
「悔しくないんですか?」
BAは。
少し考える。
「悔しいですよ」
「でも?」
「仕事は残った」
若手候補が。
笑った。
「そうですね」
BAも。
少し笑った。
数日後。
新政府から。
正式な人事が発表された。
若手候補は。
経済・外交を担当する。
将軍は。
大統領として。
国の安全保障を担う。
そして。
新政府は。
外国との関係を。
本格的に見直し始めた。
その中で。
一つの案が。
持ち上がった。
「単独で。
国を守るのは難しい」
将軍が。
地図を見る。
「なら。
守ってもらえばいい」
幹部が。
顔を上げる。
「外国に?」
「ああ」
将軍は。
静かに答えた。
「この国を。
他国が攻撃すれば。
他国も動く」
そして。
一つの名前が。
資料に書かれた。
NATO。
まだ。
加入が決まったわけではない。
ただ。
新しい国は。
初めて。
自分たちだけではない。
別の国々とともに。
国を守る可能性を。
検討し始めていた。
その頃。
BAは。
新政府の軍事部門で。
その資料を見ていた。
「……世界に。
出ていくんだな」
誰かが。
そう呟いた。
BAは。
資料から目を離さなかった。
「たぶん。
これからだ」
戦争は。
終わった。
革命も。
終わった。
そして。
この国は。
次の時代へ。
進み始めていた。




