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『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


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それぞれの一歩

 会議が終わった。


 黒崎は。


 用意された車に乗り込んだ。


 窓の外を見る。


 復興途中の街。


 壊れた建物。


 新しく舗装された道路。


 そこを歩く人々。


 戦争の傷跡は。


 まだ残っている。


 だが。


 黒崎は。


 別のものを見ていた。


 これから必要になるもの。


 電力。


 道路。


 水。


 通信。


 資源。


 食料。


 戦争が終わった国では。


 これらすべてが不足している。


 つまり。


 これから。


 大量の金が流れ込む。


 政府。


 海外企業。


 国際機関。


 そして。


 東方エネルギー。


「……なるほど」


 黒崎は。


 小さく呟いた。


 今まで。


 東方エネルギーは。


 資源を掘る会社だと思っていた。


 違う。


 資源だけではない。


 電力。


 インフラ。


 海外投資。


 復興。


 全部が。


 つながっている。


 戦争で壊れた国は。


 これから。


 大量の資金を必要とする。


 資金が入れば。


 設備が作られる。


 設備が作られれば。


 電力が必要になる。


 電力が安定すれば。


 工場が動く。


 工場が動けば。


 雇用が生まれる。


 人が働けば。


 消費が増える。


 経済が回り始める。


 その中心に。


 東方エネルギーがいる。


「……まだ安い」


 黒崎は。


 株価を思い浮かべた。


 今の株価だけを見れば。


 すでに高い。


 だが。


 未来の利益を考えれば。


 話は変わる。


 市場は。


 まだ復興の始まりしか見ていない。


 企業の利益が。


 これから増えるなら。


 今の株価は。


 通過点にすぎない。


 黒崎は。


 車の窓から。


 街を見た。


「問題は……」


 治安。


 政治。


 資金。


 インフラ。


 どれも。


 簡単ではない。


 だからこそ。


 他の投資家は。


 怖がる。


 だが。


 黒崎には。


 そこが見えていた。


 リスクがある。


 だから。


 リターンがある。


「……面白い」


 黒崎は。


 笑った。


 資源開発予定地に到着する。


 広い土地。


 まだ。


 何もない。


「こちらが開発予定地です」


 担当者が説明する。


「正式な調査結果は?」


「これからです」


「埋蔵量の予測は?」


「かなり有望です」


 黒崎は。


 地図を見る。


 開発予定地。


 道路。


 港。


 発電施設。


 すべての位置を。


 頭の中でつなげる。


「港まで何キロですか?」


「約八十キロです」


「道路は?」


「復旧計画があります」


「電力は?」


「東方エネルギーが設備投資を検討しています」


 黒崎は。


 一瞬。


 黙った。


 点が。


 線になった。


 資源。


 道路。


 港。


 電力。


 海外投資。


 全部。


 つながっている。


「……そういうことか」


 黒崎は。


 小さく笑った。


 会社が。


 何を考えているのか。


 分かった気がした。


 東方エネルギーは。


 資源だけを見ていない。


 その周辺の。


 経済そのものを見ている。


 それなら。


 この会社は。


 まだ大きくなる。


 黒崎は。


 担当者に言った。


「ありがとうございます」


「はい」


「今回の話は、非常に参考になりました」


 それだけだった。


 経営に口を出すつもりはない。


 会社には。


 会社の判断がある。


 だが。


 株主として。


 自分が何をするべきかは。


 決まった。


 日本へ戻ったら。


 買い増す。


 黒崎は。


 そう決めた。


 その頃。


 別の場所では。


 一人の少年が。


 仲間たちと街を歩いていた。


 戦闘は。


 以前より減っている。


 だが。


 問題は山積みだった。


「この地区の食料が足りない」


「倉庫を確認する」


「道路の修復は?」


「人手が必要だ」


 次々と。


 声が飛んでくる。


 少年は。


 それを聞いていた。


 銃を持って。


 敵と戦っていた頃とは。


 何かが違う。


 今は。


 敵を倒すことより。


 明日の食料を考える。


 道路を直す。


 電気を戻す。


 子どもたちが。


 学校へ行けるようにする。


 そんなことの方が。


 重要になっていた。


「武器は?」


 仲間が聞く。


「必要な分だけ残す」


「減らすのか?」


「ああ」


 少年は。


 街を見た。


「いつまでも戦争をしてるわけにはいかない」


 仲間は。


 少し黙った。


「……そうだな」


 少年は。


 歩き出した。


 銃を持つ手に。


 力を入れる。


 いつか。


 この銃を置く日が来る。


 そんな気がしていた。


 まだ。


 いつになるかは分からない。


 それでも。


 前へ進むしかなかった。


 一人は。


 数字の先に。


 未来を見ていた。


 一人は。


 街の先に。


 未来を見ていた。


 二人の方法は。


 まったく違う。


 それでも。


 二人は。


 同じ未来へ向かっていた。


 この時。


 二人は。


 まだ知らなかった。


 やがて。


 自分たちの歩みが。


 世界を二分するほどの力になることを。

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