銃からペンへ
和平が成立した。
だが。
すぐに銃声が消えたわけではなかった。
国境付近では。
散発的な戦闘が続いていた。
それでも。
戦争を続けようとする者は、少しずつ減っていった。
もともと。
この国には強い厭戦ムードがあった。
長すぎた戦争。
失われた家族。
壊れた街。
誰もが。
もう戦いたくなかった。
やがて。
銃声は少なくなった。
そして。
静かになった。
国は。
新しい道を歩き始める。
その一つが。
安全保障だった。
政府は欧米諸国との関係を深めていく。
国境を守るため。
再び戦争にならないため。
そして。
国際社会の一員として生き残るため。
NATOとの協力関係を強化し。
将来的な加盟を目指す方針が決まった。
それは。
この国にとって。
もう一度戦争をするためではない。
戦争を起こさせないための選択だった。
そして。
BAも変わっていた。
机の前に座っている。
目の前には。
大量の書類。
「これ……全部?」
「全部だ」
元小隊長が答えた。
今の彼は。
副司令になっていた。
「戦場の方が楽だったな」
「俺もそう思う」
BAは苦笑した。
かつて。
手にしていたのは銃だった。
今。
その手にあるのはペンだった。
戦うためではない。
人を動かすためでもない。
道路を直す。
学校を再開する。
電気を戻す。
食料を配る。
住民の生活を立て直す。
BAは。
新政府の地方行政を任されていた。
自分が守ってきた地域。
今度は。
そこで暮らす人たちの生活を守る。
「まず何からやる?」
元小隊長が聞いた。
BAは地図を見る。
「道路」
「道路?」
「物が運べない」
「なるほど」
「道路がなければ、何も始まらない」
そして。
もう一つ。
政府が進めようとしていたものがあった。
富国化。
戦争で失った国を。
経済から立て直す。
そのためには。
資源が必要だった。
この国には。
まだ手つかずの資源が残っている。
そこで。
政府は東方エネルギーとの協力を進めることを決めた。
資源開発。
インフラ整備。
雇用の創出。
輸出による外貨獲得。
ただ資源を売るだけではない。
その利益を。
道路へ。
発電所へ。
学校へ。
産業へ。
国そのものを豊かにするために使う。
BAは資料を閉じた。
「やることが多いな」
「戦争より?」
「……分からない」
BAは少し笑った。
窓の外を見る。
かつて。
銃声が響いていた街。
今は。
人が歩いている。
子供たちが走っている。
BAはペンを握った。
もう。
銃を握る必要はない。
これからは。
この国を作る。
そのために。
BAは。
銃からペンへ持ち替えた。




