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『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


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同じ戦場

 夜。


 BAたちは、食料を運ぶために街の外れを移動していた。


 先頭を歩いていた小隊長が、突然足を止める。


「止まれ」


 全員が止まった。


 暗闇の向こう。


 エンジン音。


 複数。


「……政府軍だ」


 小隊長が呟く。


「数は?」


「分からない」


 BAは周囲を見る。


「こっちに来る?」


「まだ分からない」


 次の瞬間。


 銃声。


 闇の中から弾丸が飛んできた。


「伏せろ!」


 一斉に地面へ伏せる。


 続けて銃声が響く。


「撃ってきた!」


「応戦するな!」


 小隊長が叫ぶ。


「ここで撃ち合ったら囲まれる!」


 だが、後方からも銃声が響いた。


「後ろにもいる!」


「挟まれた!」


 兵士たちが動揺する。


 小隊長が地図を見る。


「西へ抜ける!」


「西は敵がいます!」


「じゃあ東!」


「東も分かりません!」


 銃声が続く。


 BAは周囲を見た。


「小隊長」


「何だ!」


「南」


「南?」


「あっちは撃ってない」


「でも川がある」


「川を渡る」


「無理だ!」


「今ならできる」


 小隊長がBAを見る。


「根拠は?」


「撃ってくる場所が変わってない」


「……」


「向こうはこっちを動かしたいんだ」


 BAは続けた。


「西か東に逃がして、待ってる」


 小隊長は一瞬で理解した。


「南に誘導されるのを待ってるわけじゃない」


「そう」


「なら、逆に南へ行く」


「川を渡ったら?」


「向こうの後ろに出られる」


 小隊長は周囲を見る。


 銃声。


 暗闇。


 時間がない。


「全員、南!」


 兵士たちが走り出す。


 川へ向かう。


 背後から銃声が追ってくる。


「撃ち返せ!」


 小隊長が叫ぶ。


 数人が振り返り、牽制する。


 その隙にBAたちは川へ入った。


「深い!」


「泳げ!」


 水音。


 銃声。


 弾丸が水面を叩く。


 BAが振り返る。


「小隊長!」


「何だ!」


「撃つの止めて!」


「何でだ!」


「向こうが追ってくる!」


 小隊長が理解する。


「全員、撃つな!」


 突然、静かになる。


 敵側からも銃声が減った。


 小隊長が笑った。


「……なるほど」


 全員が川を渡りきる。


 BAが対岸を見る。


「今」


「何が?」


「走る」


「どこへ?」


「敵の後ろ」


 小隊長が一瞬、BAを見る。


「……行くぞ!」


 兵士たちが一斉に走る。


 敵はまだ、川の向こうを警戒していた。


 そのまま背後を取る。


 短い銃撃戦。


 敵が撤退する。


 静かになった。


 兵士たちは息を切らしていた。


「終わった……?」


「たぶん」


 BAが答える。


 小隊長はBAを見る。


「お前」


「何?」


「最初から分かってたのか?」


「全部は分からない」


「じゃあ、何であんな判断ができた?」


「向こうの動きを見てたら、そう思っただけ」


 小隊長は黙った。


 戦闘中。


 自分は敵の位置を追っていた。


 BAは、そのさらに外側を見ていた。


 敵がどこにいるかではなく。


 敵が自分たちをどう動かそうとしているのか。


 そこまで見ていた。


「……使えるな」


 小隊長が呟く。


「何が?」


「お前だよ」


 BAは少し嫌そうな顔をした。


「人を道具みたいに言うな」


「悪い」


 小隊長は笑った。


「でも、そういう意味だ」


 BAは何も答えなかった。


 小隊長は歩き出す。


「次から、お前も俺のところに来い」


「何で?」


「戦場で、お前の目が必要だ」


 BAは少し考える。


「……分かった」


 二人は並んで歩き始めた。


 まだ。


 互いのことを、よく知らない。


 それでも。


 この夜を境に。


 小隊長はBAを、ただの18歳の少年として見ることができなくなっていた。

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