見えているもの
翌朝。
BAたちのもとには、また人が集まっていた。
「北の道、封鎖されたらしい」
「いつ?」
「さっき」
「じゃあ、西に回して」
BAは地図を見る。
「でも西は昨日から人が多い」
「なら南」
「南は政府軍がいるぞ」
「昼には移動する」
「なんで分かる?」
BAは少し考えた。
「昨日、北側に部隊を集めてたから」
「それだけ?」
「たぶん」
仲間は呆れたように笑った。
「たぶんで決めるなよ」
「じゃあ、他にいい方法ある?」
「……ない」
「じゃあ南で」
BAはそう言って立ち上がった。
数人の住民が、その指示に従って動き始める。
BA自身は、特別なことをしているつもりはなかった。
目に入った情報を繋げて。
危なそうな場所を避ける。
ただ、それだけだった。
その頃。
少し離れた建物の中で、反政府軍の小隊長が地図を広げていた。
「北側の情報は?」
「封鎖されたようです」
「南は?」
「政府軍がいます」
「西は?」
「住民がかなり流れています」
小隊長は地図を見る。
「……あいつ、南に回したのか?」
「はい」
「南には政府軍がいるだろ」
「ですが、その部隊は今朝から移動しています」
小隊長は窓の外を見る。
BAが住民たちを誘導している。
「……どうやって分かったんだ?」
「分かりません」
「俺にも分からない」
小隊長は苦笑した。
「普通、あの年齢であそこまで全体を見られるか?」
「難しいと思います」
「だよな」
小隊長は腕を組んだ。
「ちょっと気になるな」
その日の午後。
また別の情報が入ってきた。
「東側で銃撃があったそうです」
「住民は?」
「西へ逃げています」
「西はもういっぱいだ」
BAは少し考えた。
「北は?」
「封鎖中」
「じゃあ、南」
「でも……」
「もう政府軍はいない」
「え?」
「さっき移動した」
仲間が驚いてBAを見る。
「いつ見たんだ?」
「見てない」
「じゃあ、なんで?」
BAは地図を指した。
「東で撃ち合いが始まった。北は封鎖されてる。西には人が集中してる」
そして。
「なら、残るのは南だろ」
仲間は黙った。
「……なるほど」
BAは住民たちに指示を出した。
人々が動き始める。
その様子を、小隊長が遠くから見ていた。
「……やっぱり変だな」
「何がです?」
「普通は自分のいる場所を見るだろ」
小隊長はBAを見る。
「でも、あいつは違う」
「全体を見ている?」
「ああ」
小隊長は地図を指した。
「政府軍の位置だけじゃない。住民の流れ、道の混雑、部隊の移動……全部をまとめて考えてる」
「18歳ですよ」
「そうなんだよ」
小隊長は苦笑した。
「18歳で、なんであんな見方ができるんだ?」
部下が笑う。
「小隊長も負けてられませんね」
「うるさい」
小隊長は遠くにいるBAを見る。
そして、少し笑った。




