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『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


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人が集まる

クーデターから数日。


 街の状況は、まだ落ち着いていなかった。


 政府軍と反政府軍。


 その境界は、日ごとに変わっている。


 BAたちは、相変わらず住民の避難や物資の運搬を手伝っていた。


「BA」


「ん?」


「また来てるぞ」


「誰が?」


「あそこ」


 建物の前に、数人の住民が立っている。


「何の用?」


 BAが近づく。


「西の地区へ行きたいんだけど、道が分からなくて」


「それなら……」


 BAが周囲を見る。


「市場の裏から回ればいい」


「でも、あそこは危ないって」


「昨日は危なかった。でも今朝、兵士が移動した」


「分かるの?」


「さっき聞いた」


 住民は顔を見合わせた。


「じゃあ、お願いしてもいい?」


「いいよ」


 BAは仲間を見る。


「誰か一緒に行って」


「分かった」


 住民たちが歩き出す。


 BAはその背中を見送った。


「……また増えたな」


 仲間が言う。


「何が?」


「BAを頼ってくる人」


「そうか?」


「そうだよ」


「別に、道を教えただけだろ」


「それを聞きに、わざわざここまで来てるんだぞ」


 BAは少し考えた。


「……暇なんじゃない?」


「お前な」


 仲間が呆れたように笑った。


 その日の午後。


 別の地区から男がやってきた。


「BAって人はいるか?」


「俺だけど」


「反政府軍と話ができるか?」


「何で?」


「食料を運びたいんだ。でも検問を通してくれない」


 BAは男を見る。


「どこへ運ぶ?」


「北側」


「それなら、直接行かない方がいい」


「どうすれば?」


「反政府軍の連中に先に話す」


「できるのか?」


「昨日、話したから」


 BAは仲間に声をかけた。


「連絡できる?」


「やってみる」


「頼む」


 男は頭を下げた。


「助かる」


「別に」


 BAは手を振った。


「うまくいくか聞いてみるだけだから」


 男が帰った後。


 仲間が言った。


「お前、便利屋みたいになってるぞ」


「俺は何でも屋じゃない」


「でも頼まれるだろ?」


「……まあ」


「断らないしな」


「困ってるなら、できることはやるだろ」


 仲間は笑った。


「そういうところだよ」


「何が?」


「なんでもない」


 夕方。


 また一人。


 さらに二人。


 BAを訪ねてくる人間が増えていった。


 避難経路。


 食料。


 検問。


 行方不明者。


 相談の内容は様々だった。


 BAは、その一つ一つに答えていった。


 分からなければ誰かに聞く。


 自分たちでできなければ、できる人間を探す。


 それだけだった。


 やがて。


「BAさんに聞けば何とかなる」


 そんな言葉が、街のあちこちで聞かれるようになっていた。


 本人の知らないところで。


 BAの名前が少しずつ広がっていく。


 その様子を。


 反政府軍の小隊長も見ていた。


「また増えましたね」


 部下が言う。


「ああ」


「まだ18歳ですよ」


「年齢は関係ない」


「本人は気づいていないようですが」


 小隊長は、遠くにいるBAを見る。


 人に囲まれている。


 それでも本人は、困ったような顔をしている。


「そこがいい」


「え?」


「あいつは、自分が人を動かしていると思っていない」


 小隊長は静かに言った。


「だから、人がついてくる」


 その頃。


 BAは仲間に言っていた。


「なあ」


「何?」


「最近、人が来すぎじゃないか?」


「今さら気づいたのか?」


「……どうしよう」


「知らないよ」


 二人で笑う。


 その笑い声の向こうで。


 また一人。


 BAを訪ねてくる人間がいた。


 BAは立ち上がる。


「今度は何だ?」


 そう言って。


 また、その人の話を聞きに行った。

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