接触
昼前。
BAたちは、昨日まで避難に使っていた建物に戻っていた。
窓の外では、街の様子が少しずつ変わり始めている。
政府軍だけではない。
見慣れない武装した男たちの姿も増えていた。
「反政府軍らしい」
仲間が窓から外を見ながら言った。
「昨日から増えたな」
「こっちに来るって話もある」
「何しに?」
「さあな」
BAは答えなかった。
その時、入口から声がした。
「BAというのは、お前か?」
振り返る。
見知らぬ男が二人立っていた。
「そうだけど」
「話がしたい」
「誰?」
「反政府軍だ」
仲間たちが身構える。
BAは手で制した。
「ここでいい」
男の一人がBAを見る。
「小隊長がお前と話したいそうだ」
「俺に?」
「そうだ」
「何の話?」
「それは本人から聞け」
BAは少し考えた。
「分かった」
男たちについて外へ出る。
少し離れた建物の中。
そこに、一人の男がいた。
「座れ」
BAは椅子に座った。
男はしばらくBAを見ていた。
「お前が住民を動かしている?」
「動かしてるというか……」
BAは言葉を探す。
「逃げたい人を手伝ってるだけ」
「それにしては、かなりの人数が西側へ移っている」
「道を知ってる人に聞いただけだよ」
小隊長が少し笑った。
「なるほど」
男は机の上の地図を見る。
「政府軍の検問をいくつも避けているな」
「正面から行く必要がないから」
「兵士と戦うこともある」
「避けられなかった時だけ」
「お前は戦いたいわけではない?」
「当たり前だろ」
BAは即答した。
「戦って何になる?」
小隊長は黙った。
BAは続ける。
「こっちが撃てば、向こうも撃つ。それを繰り返したら、いつまで経っても終わらない」
「それでも、戦わなければ守れない時がある」
「……それも分かってる」
BAは少し目を伏せた。
「だから困ってる」
小隊長がBAを見る。
18歳。
若すぎる。
それなのに、言葉だけは妙に冷静だった。
「お前のところには何人いる?」
「十人くらい」
「少ないな」
「うん」
「それで街を動かしている」
「動かしてないって」
BAは苦笑した。
「みんな勝手に動いてるだけだよ」
「それをまとめているのがお前だろう」
BAは返事をしなかった。
小隊長が地図を畳む。
「反政府軍に入れとは言わない」
「……じゃあ?」
「今まで通り動け」
「それだけ?」
「ただし、情報を共有してほしい」
BAは少し考える。
「こっちにも情報をくれるなら」
「もちろんだ」
「分かった」
話は、それだけだった。
建物を出る。
仲間が待っていた。
「何だった?」
「情報交換」
「それだけ?」
「ああ」
仲間が首を傾げる。
「なんか期待されてないか?」
「さあ」
BAは街を見る。
政府軍。
反政府軍。
住民。
いろんな人間が、それぞれの理由で動いている。
その中で自分たちがどんな位置にいるのか。
BAにはまだ、よく分からなかった。
ただ。
帰る途中、何人もの住民から声をかけられた。
「BA!」
「西側の道は大丈夫だった」
「助かったよ」
「ありがとう」
BAはそのたびに手を上げる。
「気をつけて」
それだけを返す。
少し離れた建物の窓から、小隊長がその様子を見ていた。
「……なるほどな」
隣の部下が聞く。
「何がです?」
「本人は、自分が何を持っているのか分かっていない」
小隊長はBAから目を離さなかった。
「だから厄介なんだ」




