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『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


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境界線

夜が明けた。


 街には、昨夜までとは違う静けさが漂っていた。


 ところどころから煙が上がり、大通りには軍用車両が止まっている。


 市場にも、ほとんど人影がない。


「東側、政府軍に押さえられたらしい」


 仲間が戻ってきた。


「こっちにも来るな」


 BAは外を見た。


「ここも捨てた方がいい」


 別の仲間が言う。


「そうだな」


 BAはすぐには動かなかった。


「でも、まだ住民が残ってる」


「何人くらい?」


「分からない。昨日の夜に避難できなかった家がいくつかある」


 BAは少し考えた。


「先に移そう」


「どこへ?」


「西側」


「大通りは?」


「使わない。裏道を抜ける」


「分かった」


 数人が先に動いた。


 BAたちは建物の間を進んでいく。


 途中、住民から道を教えてもらった。


「西へ行くなら、あの道は使わない方がいい」


「軍がいる?」


「さっき通っていった」


「分かった。ありがとう」


 BAは進む方向を変えた。


 しばらくして。


「止まれ」


 先頭の仲間が手を上げた。


 前方に兵士がいる。


 数人。


「戻れるか?」


「後ろにもいる」


 逃げ道がない。


 BAは周囲を見渡した。


「住民を先に」


「BAは?」


「俺たちが時間を作る」


 仲間が頷いた。


 その直後。


 銃声が響いた。


 BAたちは身を隠す。


 狭い路地に銃声が反響する。


「右!」


「分かった!」


 仲間が動く。


 BAも走った。


 短い時間だった。


 それでも、住民たちが路地の奥へ移動するには十分だった。


「行くぞ!」


 BAが声をかける。


 全員が後退した。


 やがて銃声が遠ざかる。


 仲間の一人が息を切らしながら口を開いた。


「BA……」


「何?」


「もう逃げるだけじゃ無理だぞ」


 BAは黙った。


「だったら、どうする?」


 別の仲間が聞く。


 BAは手にした銃を見た。


「……戦えば、終わるのか?」


「え?」


「俺たちが撃ったら、向こうも撃つ」


「そうなるな」


「向こうが撃ち返したら?」


「また撃つ」


 BAは街の方を見る。


「その先は?」


 誰も答えなかった。


「……始めたら、終わらなくなる気がする」


 仲間の一人がBAを見る。


「じゃあ、逃げる?」


 BAはしばらく考えた。


「それも違う気がする」


「どうして?」


「ここを離れたら、残った人たちはどうなる?」


 仲間は答えなかった。


 遠くで車両の音が響いた。


 BAは街の向こうを見た。


「今は、住民を移そう」


「分かった」


 誰も、それ以上は聞かなかった。


 BAたちは再び歩き始めた。


 18歳のBAには、この先どこまでこの戦いに関わることになるのか分からない。


 ただ。


 今は、目の前にいる人たちを安全な場所へ移す。


 それだけだった。

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