緊張
連邦とアメリカの対立が深刻になっていく一方で、新安共和国と連邦の交流は続いていた。
新安は建国されて間もない新興国家であり、国家としての基盤を固めながら、各国とのつながりを模索していた。
アメリカとの技術提携を進める一方で、連邦との関係も維持している。
一つの国に依存するのではなく、複数の国との関係を築く。
それが、新安にとって重要な課題だった。
今回の会談のきっかけとなったのは、以前に行われた黒崎とヴィクターの会談だった。
両者は一度、直接顔を合わせている。
その時に築かれた関係が、現在の新安と連邦をつなぐ一つの窓口となっていた。
しかし、当時とは国際情勢が大きく変わっている。
アメリカと連邦の対立は深まり、経済戦争へと発展していた。
さらに、新安とアメリカの共同研究も最終段階に近づいている。
会談当日。
新安側と連邦側の実務者が同じテーブルについた。
互いに丁寧な挨拶を交わす。
しかし、室内に漂う空気は硬かった。
しばらく経済や人的交流についての協議が続いた後、連邦側の担当者が本題へ切り込んだ。
「率直に、アメリカとはどう関係していくおつもりなのか、お聞きしたい」
新安側の担当者は、少し間を置いて答えた。
「ただの技術協力です」
「本当に、それだけでしょうか」
「どういう意味でしょう?」
「アメリカと我々を天秤にかけておられるのでは?」
室内の空気がさらに張り詰めた。
新安側の担当者は表情を変えない。
「我が国も、いろいろあるのですよ」
その言葉に、連邦側は黙った。
新安にとって、建国直後の国家運営は決して容易ではない。
経済、技術、外交、安全保障。
あらゆる分野で各国との関係を築く必要がある。
そのすべてを、一つの国との関係だけで賄うことはできなかった。
連邦側の担当者が別の資料を開く。
「世界のエネルギー事情が大きく変わろうとしています。その点については、どうお考えですか?」
新安側は即答した。
「それは、そちらも同じでしょう」
「……」
「地球エネルギーが実用化されれば、我が国だけでなく、連邦も大きな影響を受けるはずです」
「しかし、その変化によって紛争になる可能性もあります」
新安側の担当者は、静かに答えた。
「それは我が国の問題ではありません」
一瞬、沈黙が流れた。
冷たい言葉だった。
だが、それが新安の立場でもあった。
新安は新興国であり、まず自国の発展と安全を考えなければならない。
他国の事情まで背負う余裕はない。
連邦側も、それ以上追及することはできなかった。
新安がアメリカとの技術協力を続けること。
そして、連邦との交流も続けること。
その二つは、現時点では矛盾していない。
少なくとも新安側は、そう考えている。
会談はその後も続いた。
緊張が解けることはなかった。
それでも、両国が互いの立場を確認できたことには意味があった。
新安と連邦。
そして、その背後にいるアメリカ。
三者の関係は、少しずつ複雑なものになり始めていた。




