↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『東の魔王、西の勇者 ~普通のおっさんと少年ゲリラが世界を二分するまで~  作者: サラ男


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
162/186

消滅

対消滅爆弾。

それは発射された。

そして――約一年後。


研究施設の最深部。

ヴィクター、エリアス、アランの三人は、巨大なモニターを黙って見つめていた。

画面に映っているのは、遠く離れた宇宙空間。その先には、今回の実証対象となる小惑星が映し出されている。

アランが時計を確認する。


「もうすぐです」


誰も答えない。


「小惑星帯に到着しました。目標まで、あと十分です」


その言葉と同時に、画面の隅に数字が表示された。


【10:00】


室内の空気が変わった。


一年。


この日のために費やされた時間が、わずか十分間に凝縮されていく。


ヴィクターは腕を組んだまま、画面を見つめている。

エリアスも身じろぎ一つしない。

アランだけが観測データを確認していた。


【09:00】


「……」


誰も話さない。


【07:00】


モニターに映る小惑星が、徐々に大きくなっていく。


エリアスが小さく息を吐いた。


「本当に……あれを消すのか」


誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。


アランは答えなかった。


【05:00】


残り五分。


ヴィクターが時計を見る。


「アラン」


「はい」


「中止できるのは、いつまでだ?」


「最終確認が終わるまでです」


アランは画面から目を離さない。


「ですが、現在すべての条件は正常です」


ヴィクターはそれ以上、何も言わなかった。


【03:00】


室内の空気がさらに重くなる。


エリアスは椅子の背もたれから身体を起こした。


三人の視線が、モニターへ集中する。


【02:00】


「……あと二分」


アランの声が響く。


ヴィクターは無言。


エリアスも無言。


そして――


【01:00】


残り一分。


誰も言葉を発しない。


画面に映る小惑星。


巨大な岩塊。


それが、一分後にはどうなるのか。


ヴィクターはゆっくりと息を吸った。


「……始まるな」


アランは答えなかった。


【00:30】


三十秒。


心臓の鼓動だけが、やけに大きく聞こえる。


【00:20】


二十秒。


エリアスが画面を見つめる。


【00:10】


十秒。


アランが静かに告げる。


「最終カウントに入ります」


【00:09】


「九」


【00:08】


「八」


【00:07】


「七」


【00:06】


「六」


ヴィクターが無意識に息を止める。


【00:05】


「五」


エリアスの指がわずかに動いた。


【00:04】


「四」


誰も動かない。


【00:03】


「三」


アランの声が、静かな室内に響く。


【00:02】


「二」


ヴィクターとエリアスが、画面を見つめる。


【00:01】


「一」


一瞬。


世界から音が消えたような感覚。


【00:00】


「接触」


アランが呟いた。


次の瞬間――


画面いっぱいに、小惑星が映し出されていた。


そして、光が走った。


爆発。


そう表現するには、あまりにも異質だった。


小惑星が砕け散ったのではない。


そこに存在していた物体そのものが、まるで最初から存在しなかったかのように消えていく。


ほんの一瞬。


巨大な小惑星が、その姿を失った。


「……」


誰も言葉を発しなかった。


ヴィクターも、エリアスも、ただ画面を見つめている。


アランですら、しばらく何も言わなかった。


やがて、エリアスがかすかに呟く。


「あの大きさが……一瞬で……」


その言葉の続きを、誰も口にできなかった。


ヴィクターがゆっくりと椅子に腰を下ろす。


「……これは」


言葉が続かない。


アランは観測データを確認していた。

次々と表示される数値を、一つずつ確認していく。


「地球側の観測に異常なし」


アランの声だけが、静かな室内に響いた。


「現在まで、想定外の影響は確認されていません」


三人は再び画面を見る。


そこには、もう何もなかった。


つい先ほどまで巨大な小惑星が存在していた場所。


そこだけが、静かな宇宙になっていた。


長い沈黙の後、ヴィクターが口を開いた。


「……これは地球内では使ってはいけないな」


エリアスも答えなかった。


ただ、静かに頷いた。


アランは画面を見つめながら、小さく息を吐いた。


「ええ」


その声には、いつもの軽さがなかった。


「これを使えば、地球そのものがどうなるか……想像したくありませんね」


三人は再び沈黙した。


一年かけて行われた実証は、終わった。


そして彼らは、世界を変えてしまうほどの力が、本当に存在することを自分たちの目で確認した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。