異変
翌朝。
BAはいつもより早く起きた。
昨日聞いた銃声が、頭から離れなかった。
「今日は二組に分かれる」
仲間たちを集める。
「街の東側と西側を見てくれ。何か変わったことがあったら、すぐ知らせてくれ」
「了解」
十人ほどの仲間が、それぞれ持ち場へ向かっていく。
BAも街を歩いた。
昨日までと。
何かが違う。
まず目についたのは、検問所だった。
兵士の数が増えている。
しかも。
昨日まで見なかった部隊がいる。
「おかしいな……」
BAが呟いた。
市場へ向かう。
いつもなら朝から人で賑わっている場所だった。
しかし。
店のいくつかが閉まっていた。
「今日は休みか?」
「違うよ」
店主が小声で答えた。
「昨日の夜、兵隊が来たんだ」
「何のために?」
「知らない。何も言わずに帰っていった」
BAは周囲を見渡した。
人々も、その話を聞かれることを恐れているようだった。
その日の昼。
仲間の一人が戻ってきた。
「BA」
「どうした?」
「昨夜、軍の車両を大量に見たって話がある」
「どこへ向かっていた?」
「街の中心部らしい」
BAは黙った。
軍が。
夜中に。
大量に移動している。
嫌な予感がした。
「もう一つある」
仲間が続けた。
「政府軍の兵士から聞いたんだ」
「何を?」
「今夜は街から離れた方がいいって」
BAの表情が変わった。
「理由は?」
「聞いた。でも……」
「でも?」
「答えなかった」
しばらく沈黙が続いた。
BAは空を見上げた。
雲一つない。
いつもと変わらない空だった。
なのに。
街の空気だけが重い。
「今日は全員、早めに戻そう」
「分かった」
夕方。
BAたちは拠点へ戻った。
普段なら、この時間には街の明かりが少しずつ灯り始める。
しかし。
その日は違った。
一つ。
また一つ。
街の明かりが消えていく。
「停電か?」
仲間が窓の外を見る。
「……違う」
BAは答えた。
街全体が。
意図的に暗くされている。
遠くから。
エンジン音が聞こえてきた。
一台。
そして二台。
やがて。
何台もの軍用車両が走る音になった。
BAは立ち上がった。
「全員、起こせ」
「BA?」
「今すぐだ」
仲間たちが動き始める。
BAは暗闇の向こうを見つめた。
街の中心部。
その方向から。
一瞬。
赤い光が空を照らした。
続いて。
遠くで。
大きな音が響いた。
BAは何も言わなかった。
ただ。
仲間たちを見渡した。
誰も笑っていない。
誰も口を開かない。
そして。
BAは静かに言った。
「……今夜、何かが起きる」




