十八歳
BAは、18歳だった。
十人ほどの仲間を率いている。
正規軍ではない。
彼らは、この地域で暮らす人々を守るために集まった自警組織だった。
組織の中では、BAたちの班を便宜的に「分隊」と呼んでいた。
BAがその分隊を任されるようになったのは、ほんの少し前のことだった。
「BA、今日の見回りは?」
「いつも通りだ」
BAは立ち上がった。
街を歩く。
市場には人が集まり、店先には野菜や果物が並んでいる。
子どもたちが走り回っている。
どこにでもある。
普通の一日だった。
少なくとも。
少し前までは。
「最近、兵隊が多くないか?」
仲間の一人が言った。
BAも気づいていた。
検問所が増えている。
政府軍の車両を見かけることも多くなった。
街の人々も、以前より口数が少ない。
「何か起きてるんだろうな」
BAはそう答えた。
「怖くないのか?」
「怖いよ」
即答だった。
仲間が少し驚いた顔をする。
「でも、怖いからって何もしなかったら、ここにいる意味がないだろ」
BAは街を見た。
ここには。
守るべき人たちがいる。
それだけだった。
その日の午後。
小さな騒ぎが起きた。
市場の近くで、政府軍の兵士と住民が揉めていた。
原因は些細なことだった。
だが。
周囲には、すぐに人が集まった。
空気が張り詰める。
BAは仲間に目配せした。
「行くぞ」
BAたちは間に入った。
「落ち着け」
兵士も。
住民も。
BAを見る。
まだ18歳。
軍服もない。
大きな権限もない。
それでも。
BAは一歩も引かなかった。
「ここで撃ち合ったら、誰も得しない」
しばらくして。
兵士たちは引き上げた。
住民たちも少しずつ散っていく。
「助かったよ」
老人がBAに声をかけた。
「礼はいらない」
BAは笑った。
「明日も普通に市場を開けられるようにする。それだけでいい」
仲間の一人がBAを見る。
「お前、本当に18歳か?」
「18歳だよ」
「もっと年上に見える」
「老けてるってこと?」
「そういう意味じゃない」
笑い声が起きた。
ほんの一瞬。
街にいつもの空気が戻った。
しかし。
その日の夕方。
BAは街の外れに立っていた。
遠くを走る軍用車両。
いつもより多い。
検問所の兵士たちも、どこか落ち着かない。
無線から聞こえてくる会話も。
今日は妙に短かった。
「……何かあるな」
隣にいた仲間が呟いた。
BAは答えなかった。
ただ。
遠くの街を見つめていた。
人々はまだ、いつも通りに暮らしている。
市場も開いている。
子どもたちも走っている。
それでも。
その裏側で。
何かが動いている。
そんな気がした。
BAは小さく息を吐いた。
「明日から、見回りを増やそう」
「何か起きると思うのか?」
BAは少し考えてから答えた。
「分からない」
そして。
「でも、何かが近づいてる気がする」
夕暮れの街の向こうで。
遠く。
乾いた銃声が一発だけ響いた。




