表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一番近くにいるキミは  作者: 陽ノ下 咲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/21

第十一話 高校の同窓会

主な登場人物紹介


田中(たなか)彩乃あやの

二十四歳。主人公。庶務部。優しくてお人好し。過去のトラウマから恋愛には奥手。


鈴木(すずき)颯太(そうた)

二十四歳。彩乃の同期で営業部所属。仕事の出来るイケメン。彩乃の隣の部屋に住んでいる。彼女の浮気が原因で別れているところを彩乃に目撃される。


佐藤(さとう)優真(ゆうま)

二十四歳。綾乃の高校からの親友。なんでも話せて、頼りにしている存在。穏やかで誰に対しても優しい。職場は別。


山本(やまもと)莉子りこ

二十ニ歳。イケメン好きな彩乃の後輩社員。庶務部。小柄で美人。


 鈴木さんとのお出かけを控えたある日、高校の同窓会の連絡があった。


 優真くんから『同窓会、参加する?』とメッセージが届いて、どうしようかなと思いつつ、とりあえず参加者のグループチャットを確認した。

 すると、参加者の中に、元カレの名前があるのを見つけて、一瞬、戸惑った。

 だけど、懐かしい名前が並ぶグループメッセージを見ているうちに、逃げる必要はもうないんだと思えて、やっぱり参加しようという気持ちが湧いた。


 優真くんに『うん、参加するよ』と送ると、『じゃあ俺も参加しよ』と返ってきた。

 優真くんも居るんだと思うと、不思議と安心する自分が居た。


 そして同窓会当日。

 会場に入ると、懐かしい顔がいくつも目に入る。



「彩乃だ!久しぶり〜」

「元気してた?」

「わっ!みんな久しぶりー!」



 仲の良かった子達に声を掛けられて、自然と笑顔になる。


 ……あ。


 少し遅れて、視界に入った人影に目が止まった。


 小林(こばやし)直樹(なおき)。浮気現場を目撃して、その場で終わった元カレの姿。



 彼を見ても、もう何も感じ無かった。



 ーーああ、本当に、もう何とも思ってないんだ。


 

 自分の気持ちを、はっきり確認できて、心からほっとした。


 席に着いて、みんなで乾杯をする。

 仕事の話、昔の失敗談、どうでもいいことで笑い合う。


 直樹とは席が違うから特に話さすこともなく、変に意識することも無かった。

 それができる自分に、少し驚いたし、嬉しくもあった。


 同じ席に座っている当時仲の良かった子が、少しそわそわとした雰囲気で、私を見て言った。



「ねえ彩乃、なんか雰囲気変わったよね」

「あ、それ私も思ってた!前より綺麗になったよね」

「……もしかして、彼氏できた?」



 突然の質問に、思わず苦笑する。



「えへへ、ありがと、嬉しい。だけど、彼氏はいないよ」



 そう言った後、少しだけ迷ってから、他の人に聞かれるのは恥ずかしいから、机にいる仲の良い友達だけに聞こえる程度の、小さな声で続けた。



「でもね、最近……ちょっと気になってる人と、出かけることになって」

「え、なにそれ」

「聞きたい!」



 私の言葉に、友達は同じように声をひそめつつも、楽しげな声を上げた。


 その反応に、私は顔が熱くなってきてしまい、思わず両手で頬を押さえた。



「服装とか、どうしようか悩んでるの……」



 私の言葉に、みんなが楽しそうに反応してくれて、余計に恥ずかしくなった。けれど同時に、嬉しくもあった。




 しばらくして、トイレに立った。

 化粧台で身だしなみを整えて、席に戻ろうと廊下に出た、その時だった。


 そこに、小林直樹の姿があった。


 まるで待っていたかのように、私を見るなり声を掛けてくる。



「彩乃、ちょっと話したいんだけど。時間くれない?」



 胸の奥が、ひやりと冷える。



「ごめん、無理。私には話すことなんてないから。話したいなら、席でみんな一緒に話そう」



 そう言って、その場を離れようとする。


 けれど、直樹が、道を塞ぐように一歩前に出た。



「頼むって。ちょっとだけだから」



 次の瞬間、強く腕を掴まれた。



「……っ!?」

 


 背後の壁に背中を押しつけられ、両手で逃げ道を塞がれた。


 突然の出来事に、声も出ず、身体が強張る。

 怖くて逃げ出したいのに、動くことが出来ない。


 眼前の直樹は、強張った私の表情を間近で見て、なぜか、少しだけ頬を染めた。

 視線を逸らし、気まずそうに一度息を吐いてから、言う。



「なあ、彩乃。お前さ……ちょっと見ないうちに、すげぇ綺麗になったよな」

「……え?」



 あまりにも唐突な言葉に、唖然としてしまった。



「な、何……突然……」



 声がわずかに震える。



「突然じゃねぇよ。付き合ってた頃から、ずっと思ってた」



 その言葉に、耳を疑った。



「……お前のこと、綺麗だって」



 胸の奥で、何かがぶつりと切れた。

 怖さの奥から、怒りがじわじわと湧き上がる。



「……浮気したくせに、何言ってるの?」



 自分でも驚くほど、声が低くなる。



「まあ……もう、完全に吹っ切れてるけど」



 そう言うと、直樹は悔しそうに顔を歪めた。



「……あの時は、ほんとにどうかしてた。悪かったって思ってる。でも今日、もう一回お前見て……やっぱ、好きだなって思った」



 真剣な目で、そう告げられた。

 けれど、彼は、私の恐怖も拒絶も、まるで気が付いてはいない。



「なあ、俺たち……もう一回、やり直せないか?」



 答えは、考えるまでもなかった。



「……それは、絶対に無理」



 私は、はっきりとそう言い切った。

 それでも、直樹は引かなかった。



「なんでだよ。さっきお前が話してたの、ちょっと聞こえてたけどさ。まだ誰とも付き合ってないんだろ?だったら良いじゃん」



 腕を掴む力が、さらに強くなる。



「……良い訳ないでしょ!やめて。離して……っ」



 直樹の顔が、近づいてくる。

 全身を駆け巡る、強烈な嫌悪感。



 あの時の光景が、頭の中でフラッシュバックした。


 知らない女。

 絡み合う身体。

 裏切られた、あの日。



 嫌だ……。

 嫌だ、嫌だ……!



 そう思った、その瞬間。



「ねえ」



 低く、冷えた声が割り込んだ。



「すごく不愉快なんだけど。

 ……いい加減、やめてくれない?」



 怒りを押し殺した、けれど確かな圧のある声。


 そちらを見ると、そこには優真くんが立っていた。



「……優真くん」



 背中越しでも分かった。

 今まで見たことがないくらい、怒っている。



「佐藤、おま……」

「小林、……俺が殴る前に、席に戻ってくれる?」



 何か言いかけた直樹の声を遮るように、優真くんの静かな声が静かで、でも有無を言わせないような力強い声が響く。


 その言葉に、直樹は、はっきりと怯んだ。

 そして私と優真くんを交互に見て、眉を顰めて言った。



「……え、……何、……おまえら、もしかして……、そういうこと?」



 優真くんが直樹を睨んで、舌打ちをする。



「わ、分かったって!もう行くよ」



 そう言って、足早に店内へ戻っていった。


 二人きりになって、優真くんが振り返った。



「彩乃、大丈夫だった?」

「……うん。ありがとう」



 いつもの優しい優真くんの声に、心から、ほっとした。



「……私ね、ここ来るまでは直樹に会うの、ちょっと不安だったの。だけど、会ってはっきりした。私もう、完全に吹っ切れること出来てるみたい」



 そう言うと、優真くんは少し驚いた顔をした後、嬉しそうに微笑んだ。



「そっか。良かった」

「優真くんのおかげだよ。……本当にありがとう」



 心からの感謝の気持ちを込めてお礼を言った。

 すると優真くんは、「ん……」と小さく頷いて、とても優しい顔で微笑んでくれた。

 そして、いつもの様に私の頭を撫でようとして、はっとして手を止めた。


 少し悲しそうに視線を逸らして目を伏せる。



「……さっき、席にいた時にさ、」



 視線を逸らしたまま、続ける。



「俺、お前の声だけはどんな小さな声でも、耳に入ってくるんだ。……だから、聞こえちゃったんだけど、」



 胸が、少しだけ跳ねる。



「彩乃、前言ってた同僚の人と、……デートするの?」

「っ……」



 優真くんから出た“デート”という単語に、胸が跳ねた。


 あの時、鈴木さんに「デート」という言葉を使われたわけではない。

 それでも、優真くんに聞かれて、“デート”という言葉を意識して、恥ずかしさと嬉しさがじわじわと胸に広がった。


 照れながらも、正直に答える。



「うん。誘ってもらえてね、……二人でお出かけするんだ」



 改めて口にすると、恥ずかしくなる。



「……そっか」



 優真くんは、静かに笑った。



「……彩乃、凄く楽しみにしてるんだね」

「うん」



 少し間を置いて。



「えへへ……楽しみ、かな」



 正直にそう答えると、優真くんはもう一度「そっか……」と言った。


 その声に、違和感を覚えた。



「優真くん……?」



 心配になって名前を呼ぶ。



「どうしたの?……ねえ、もしかして優真くん、最近、何かあった?」



 そう聞くと、優真くんが少し驚いたようにこちらを見る。



「え?」

「優真くんが元気ないと……私、すごく心配だから。もし何かあったのなら教えて欲しい。優真くんの力になりたいの」



 そう言うと、彼は少し切なげに笑った。



「彩乃、ありがとう」



 そして、さっきは躊躇した手をもう一度上げて、今度は私の頭を優しくぽんぽんと撫でると、私を見た。



「じゃあ、……今度、俺の話、聞いてくれる?」



 その瞳は、強い意思の様なものが宿っているように感じた。



「うん!もちろん」



 力強く返すと、彼は少し照れ臭そうな顔で微笑んだ。



「俺たちも、そろそろ戻ろっか」



 歩き出した彼の背中を追いながら、やっぱり、ここ最近の優真くんは、いつもと様子が違うとはっきり思った。



 私が本当に辛かった時、ずっと隣で心を支えてくれた大切な親友。

 彼がもし今、何か辛いことがあるのなら、今度は私が、彼の心を支えたいと、心からそう思っている。

 

 

 今度はきっと、私が力になるからね、と思いながら、彼の背中を追いかけた。




本作を見つけてくださり、お読みいただき、ありがとうございました!


本作は毎週水曜と土曜日に一話ずつ投稿していきます。

次の投稿は、2月11日(水)7:00です。


引き続き、お読みいただけますと嬉しいです。

どうぞ応援のほどよろしくお願いいたします。



陽ノ下 咲


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
コメント失礼します。 なかなか時間が取れず、ようやく読み進めることができました。 同窓会というシチュエーションはとてもワクワクするものがありますよね。 とてもよくわかります。 そしてワクワクするような…
やはり元カレの直樹も出て来ましたね! そしてさも当然かのように復縁を迫る。 (・∀・) 強引壁ドンですけど、トキメキは無かったようで……。 (・–・;)ゞ にしても、無自覚残酷過ぎます。 優真〜〜…
鈴木さん推しだったのに、優真くんもかっこいいです。 読んでいてどちらを推せばいいかわからなくなってしまいました笑 心をときめかせてくれる素敵な物語をいつもありがとうございます♡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ