【第8話】
結局、僕は能力検証機構に行くことにした。
一度自宅に戻って翌朝の出発となり、施設泊まり込みになるため、着替えなどの荷物の準備をすることになった。平山さんは手続きのために先に戻り、黒服の二人は翌朝迎えに来ることになった。
玄関を開けた瞬間、二階からバタバタと足音がした。
「お帰りー!……ってバカ兄貴!?入院したんじゃないの!?」
美希子が慌てて降りてきた。
「ただいま。擦り傷はあるけどどこも異常はないよ」
「ふぅん……みんなに心配ばかりかけて全然大丈夫でしたー、とかバカ兄貴はやっぱりバカだったんだね」
「おいおい、そういってやるな。何事もなくてよかったじゃないか」
父が苦笑いしながら言った。
「美希子も、なんで事故なんかに巻き込まれるのよどんくさいバカのくせに!って言いながら、連絡した時は心配して泣いちゃってたもんねぇ」と母が言った。
「やっ、やっ、ややや、やめてよ!バカじゃないの!ウチの家はみんな低能でバカなんだから同じ血が流れてることに悔しくて泣いちゃっただけなんだから!!」
他の三人が、同じことを思っていた。
(((言ってることと顔が全然合ってないんだよなぁ……)))
能力のせいで口は悪くなる。
でも美希子の顔は正直だ。
心配してくれていたことは、丸わかりだった。
玄関では落ち着かないので続きは居間で話すことにして、四人でソファーに座る。
「指定の国立大学って一番近いところでも埼玉でしょ!?そのまま入学になったらもう家にずっと帰ってこないじゃない!!」
驚きのあまり立ち上がる美希子。
「埼玉なんてザッコォ♪しばらく会えなくておうちが広く使えるじゃない!バーイバーイ☆」
「……泣きそうな顔してそんなこと言うなよ」
鼻水をすすって、ずびずびしてる。
「……なるべく早く帰ってくるよ。母さんと家のこと、よろしくな」
「……ばぁか」
頭をそっとなでてあげるともっと泣いた。
長期間の滞在も考えられるため、着替えや持っていく荷物がどんどん増えていく。
ようやく荷物をまとめ、その夜は久しぶりに自分の部屋で眠った。
翌朝、荷物を車に詰め込んだ後、三人と出発の挨拶をする。
母には穏やかな表情で優しく抱きしめてもらった。
「きっととても不安だと思うけど、どんな能力だったとしても、独りで悩んではダメよ。私たちは家族なんだから」
父もうなずいて
「俺たちは家族だ」
と言い軽く背中を叩かれた。
美希子は
「ずびっ」
としか言えない状態になっていたが涙ぐんでサムズアップしていた。
確かに妹は口が悪い。でも根が優しいまま育っている。毎日あんなことを言っていたら言葉に引っ張られそうなものだが、妹はずっと優しい子のままだ。だからモデル仲間からも可愛がってもらえているのだろうと思う。兄としては、誇らしい。
僕も負けてはいられないなと密かにライバル認定した。
「では行ってきます!」
黒服の運転する車に乗り込んだ。
正直、今も不安だらけだ。心配もたくさんかけてる。でも、まずは今できることをやってみよう。
そう決めて、前を向いた。




