【第7話】
「雪村青葉くん——能力検証機構で、能力の精密検査と訓練を受けてもらえませんか?」
平山さんが改めて説明してくれた。
遅咲きの能力者向けの集中部門があること。能力の安全な把握とコントロールを学べること。入学に備えた特別講師も派遣されること。学校のカリキュラムのフォローも行われること。費用は推薦規定の範囲内で全額負担なし。
そして最後に付け加えた。
「能力値の高さに比べて、青葉くんはまだ身を守る術をお持ちでないため、この二名をしばらく護衛としてつけさせていただきます」
後ろの黒服二人が、軽く会釈した。
父が静かに聞いた。
「平山さん、もし息子が行かないと言ったらどうされますか」
「護衛のご同行はお願いしたく思いますが、能力検証機構への入所は強制ではありません。しかし、ありとあらゆる理由において、現在とれる選択肢の中で最善であると私の職務に誓って申し上げます」
父が、少し考えた。
「……ちなみに、あなたは何者ですか。本日の担当者というには、やけに決定権をお持ちのようですが」
平山さんが、ああぁ、とちょっとイメージとは合わない声を漏らした。
「大変申し訳ありません。こちらをお渡しするのを失念しておりました」
名刺を取り出した。父に差し出した。
父が受け取って、顔が変わった。
「能力検証機構……東京支局長!?」
「はい。人の能力を見抜くのが得意でして。お父様の晴希様の能力についてですが、名刺交換される相手の肩書や権力が大きいほど、商談に良い影響が出るのではないかと」
父が、目を丸くした。
「会場に来る前に青葉くんの家族構成を見て、ハッとしましたよ。お父様のお名前を拝見しましてね。社長の富岡とは旧友でして、以前から晴希様のことを伺っておりました。能力はプライバシーですから富岡には伝えておりませんが、晴希様は富岡の会社に採用すべき人物と才能であるとは申し伝えたように思います。いやはや、世間とは狭いものですね」
軽く笑った平山さんを見て、父さんは少々唖然としている。
父さん自身、自分の能力は頑丈になる程度だと思っていたようだが、それだけじゃなかったみたいだ。
あの表情を見る限り、もしかすると…くらいは思っていたのかもしれない。でも僕ら一般人は、時間もお金もかかる能力の精密検査まではまずやらない。
あの何気ない一言、本当はすごい価値だったんじゃないだろうか。
穏やかな笑みを浮かべていた平山が少し表情を変えて言った。
「改めてお願いいたします。我々を信頼して、青葉くんを預けては頂けませんか」
両親がお互いを見合わせたあと、二人が同時に僕を見た。
「……僕は」




