デカ・ハンドラー
僕は魔術局での発言権を上げるためにマイスター称号を集めることになった。
ラビは何のスキルもないのでお留守番だ。
まずは興味本位でヘンな資格をに挑戦してみる。
まずは幽体離脱マイスターだ!!
……できるわけないだろこんなの!!
僕はヤケクソでベッドを叩いた。
するとお花ちゃんが浮き上がってきた。寝間着に半裸だ。
エッ!!
「んも〜、幽霊を昼間に起こすとか非常識もいいとこっすわ」
もしかしたら彼女なら幽体離脱の″コツ″を知っているかもしれない。
「コツも何も、ツボがあるんよ〜。あぐらをかいて、足裏のここらへんを押すッ!!」
するとふわふわと浮き上る感覚とともに自分の体を見下ろすことが出来た。
「おおっ!! すごいぞこれは!! ……で、戻るには?」
お花ちゃんは気だるそうだ。
「ふぁ〜あ。戻るのにはコツがいるんよ。続きはまた夜なぁ〜」
ちょっ、ちょっと待ッ!!
次は手裏剣マイスターだ!!
これはまぁ頑張ればなんとか。先生はキキョウた。
「いいな、手で投げるな、手首でスナップを効かせる」
彼女の投げる手裏剣は百発百中だった。
僕はと言うと何度投げてもうまく行かない。
「ふざけてるのか!! 気合を入れてやれ!!」
スパルタ教育だ。運動能力Bの僕には荷が重かった。
手が腫れてきたが、歯を食いしばった。
それを見ていたキキョウは驚いた様子だった。
「もういい。安め。身体を休めるのも任務のうちだ」
連日のスパルタの甲斐あって、かなり怪しいものの手裏剣が当たるようになった。
これならギリギリいけるだろう。
(この男……骨があるじゃないか……ポッ)
次はハンターだ!!
ハンターマイスターを獲ると聞いて手伝いに来てくれたアンズさんはとても嬉しそうだった。
「お〜、わっちの婿にきてくれただな!! 嬉しいぞぉ!! あー、でもなー、お前は足手まといなんだわ。ゴーレムだけおいてってくりゃれ」
そこまでハッキリいわれるとちょっと悲しい。
派遣されたのはミミィとクライトだ。
暁の森の獣やモンスターを狩っていく。
アンズさんはスナイパーライフルで。ゴーレムたちは近距離戦で仕留めていく。
「久しぶりに刀を振るうな……」
「私は素手なのね……」
(う〜ん、わっちがサボれるとはえれぇゴーレムだ。負けてらんねーど!!)
こうして山狩で2体のレアモンスターを狩ることができた。
「うんにゃ。これならわっちの推薦でデュオ確定だなや。ご苦労さんだ。ハンターマイスターのじっちゃんたちもたいそう喜ぶで」
次は薬学試験だ!!
なんだかんだで薬学資格はまだ持っていない。
出題にクセがあるのを知っていたので、ルルゥさんにみっちり手伝ってもらうことした。
まさに手取り足取りだ。
デッ、デッが当ッ!! これ当ててない!?
内容自体は滅茶苦茶に簡単だった。メディスン・デュオをなめるなよ!!
次は利きパイ検定だ!!
マルシュが次々と焼いてくれるパイの味を当てる。
一見簡単に思えるが、食べれば食べるほど味が混乱していく。
とくに嗅覚の麻痺がキツく、ますますわからなくなっていくのだ。
「いいかフォル、パイの声を聞くんだ!! パイの声を聞け!!」
正直、幽体離脱より難しいよ……。
次は声楽だ。
僕、オンチなんだよなぁ。
それでもアルテアは丁寧に教えてくれた。
「フォル、ヲタ芸、上手いじゃん? あんな感じあんな感じ。リズムと音程を合わせて」
「オーーーハイハイハイ!!」
思わぬ美声がでた。
「は〜い、もう一回!!」
次はファッションショーだ。
これは着付け方から歩き方までティーリアが担当してくれた。
「186と優雅なプロポーション!! そしてリンとした歩き方。チャーミーな編み髪!!完璧ですわ〜!!まさにファッションの貴公子!!」
いや、もう貴公子はいいんだ。
次はなぞなぞ検定だ。
これはインフィニが担当してくれた。
「木材を積んだ車が、カーブで落としてしまったものは?」
「ハイ!! 木材!!」
出題者は口をとんがらせた。
「ぶっぶー。正解は″スピード″で・し・た!!」
次はアナトミア・クレイ取扱責任者だ。
アンシャンテさんが担当してくれたが、これは困難を極めた。
だって、使う方で作る方じゃないんだもん。
これを取るとクレイを自由に扱えるようになるが、素体を扱うのの滅茶苦茶、難しいからなぁ。
「私の殿方になる方なんですから、これくらいはちゃちゃっと獲ってもらわないと!!」
みんなスパルタなんだよなぁ。
ナンシャンテさんは利き酒を教えてくれるって張り切ってたけど、僕、未成年だし、バーを出禁になっておしまいだった。
一方のフーちゃんはジュース効きで協力してくれた。
「フォルサン サンレンアタリ!! キャーカコイイ!!」
次は司書マイスターだ。
これはエリーヌが教えてくれた。
「司書のソロは仕事を覚えるだけで簡単にもらえますよ。まぁデュオ、トライは難関ですが……」
僕は数日、泊まり込みで司書の勉強と実践を繰り返した。
どこが簡単なんだ!!
エリーヌは思った。
(あぁ、フォルさんと一緒……こんな毎日が続けばいいのに。神様お願い……)
ハルネ先生は直接はやってこなかったが、交換……?日記にメモが挟まっていた。
推薦状「フォル・バークライト博士は病院建設に尽力し、キャマ・クーラ地方の健康福祉に多大なる貢献を果たした。よってここにメディスン・トライ・マイスターを推薦するものとす」
これにはさすがに驚いて指が震えた。これはまず通る。
そうすればバークライト医学博士の誕生だ。
だが、僕はあまり自信がなかった。特別に腕が良いわけでもないし。
ともかくみんなの協力を得て、僕は連日、グランドールに通い、資格試験を受けまくった。
そして、魔術局へ乗り込んだ。
フォル・バークライト博士。これから査定結果を伝える。
「協会貢献度E 地域貢献度S+ 住民信頼度S+ ゴーレム製造技術・知識S+ 営業収益D 医療知識・従事S+++ 新規開拓研究A 運動能力B+、学科試験A、健康A+ 実地起動試験S+ 監察官監督(免除) 戦闘実績A+ バウンティーハンターA+ 礼節・マナーS+++ 社会福祉S+++ きけんせいぶつげきたいB」
以下、新規獲得分。
「幽体離脱S+++ 手裏剣A- ハンターS++ 薬学試験S+++ 効きパイA+++ 声楽A+ ファッションショーS+++ なぞなぞ検定S+++ アナトミア・クレイ取扱責任者S+ 利き酒(書類選考落選)ジュース効きS+++ 司書S+++」
何に使うか怪しい資格もちらほら混ざっていたが、この成績は文句のつけようがない立派なものだった。
そして、フォルは堂々と白衣を羽織った。
魔術局の人々は呆然とした。驚愕のあまり絶句してしまったのである。
まだ十数人しか成し遂げていない、トライマイスターを10個獲得したデカ・ハンドラーとなったのだ。
会長が祝辞を述べようとしたが、フォルは背中を向けて退出した。
もう何をしようが協会貢献度は戻ることはない。
この上、媚びへつらってもなんにもならない。そう思ったのだ。
そちらがその気ならこちらも考えがある。
その気になればこんなブレスレット、海に捨ててやると。
この出来事は魔術局を揺るがした。
フォルにEをつけた運営を疑問視する声が上がり始めたのである。
そんなことを知ってかしらずか、フォルはキャマ・クーラへ帰った。
そしてみんなからの大祝福を受けた。
キリッと決まった白衣。優しげなメガネ顔、すらっとした長身、うつくしい編み髪。
みんながフォルにメロメロだった。




