↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
41/59

アナタの専属アイドル

先日、お金稼ぎ大作戦で欠席したアルテアが工房(アトリエ)にやってきた。


「フォル君、この間はごめんね。今日はその埋(う)め合わせに来たよ!!」


そんなことより僕はアルテアの体調を心配した。


「大丈夫? バイタルチェックしようか?」


ゴーレムにもバイタルチェックはある。


特に駆動関連(くどうかんれん)の朱(あか)の術式(じゅつしき)、蒼(あお)の術式(じゅつしき)の異常確認は念入(ねんい)りにやる。


そして身体機能のチェック、部品の破損(はへん)チェックもやらねばならない。


ひどい場合には記憶を保ったままセーフ・リブート(さいきどう)することもある。


これは人体とゴーレム、両方の知識がないと不可能だ。


この一連の手順が可能なために協会は僕にゴーレム創造(そうぞう)を課したのだ。


だが、アルテアは焦(あせ)ったように首を左右に振った。


「今日は私がお仕事やるよ!!見に来てくれるかな?」


僕は興味がわいてきた。これだけマルチタレントな彼女がどうやってお金を稼(かせ)ぐのかと。


「じゃっ、クランドールに行こっか」


「!?」


いきなりの誘いに僕は面食(めんく)らった。


「クランドール? 何しにいくの?」


アルテアははにかんだ。


「ヒ・ミ・ツ!! はやくはやく!! みんなに見つかっちゃうよ!!」


こうして僕は汽車(きしゃ)に押し込められるようにして乗った。


周りの人がのける。


デカ男ですんません……。


クランドールにつくとアルテアは劇場街(げきじょうがい)へと向かった。


懐(なつ)かしい。アルテアを創(つく)るときに死ぬほどアイドルと触れ合った街だ。


群青(ぐんじょう)の貴公子(きこうし)と呼ばれた事もあった。


あの頃の苦労と甘酸(あまず)っぱい思い出で僕は思わず泣いていた。


「ふぉ、フォル君!? なんで泣いてるの!? まだ早いよ!!」


早い? アイドルへの想(おも)いに早い遅いがあるのだろうか。


アルテアにはわかるまい……と、彼女に当たってもお門違(かどちが)いだ。


「じゃ、しゅっぱつしんこ〜」


劇場街(げきじょうがい)はそれなりに複雑な構造だ。舞台の数も多い。


だが、アルテアは迷うこと無く歩いていく。


まるで庭を歩いているようだ。


そして彼女はあるスタジオについた。


看板(かんばん)には「土器(どき)☆土器(どき)☆ハート♥」と書いてあった。


僕は自分の脳内(のうない)データベースを漁(あさ)った。


このグループは地下アイドルながら実力派で知られている。


ただ、ガチガチの実力主義なためにメンバーの入れ替(か)わりが激しいと聞く。


推(お)しを作るのに覚悟(かくご)の要(い)るグループと言えるだろう。


実力派ゆえに地下アイドルを、卒業してメジャーに行くアイドルも多い。


今、一番にホットなグループとも言える。


「アルテアはこのグループのファンなの?いいよね〜。地下アイドルとは思えない華(はな)やかさでさ。センターとるの難しいんだって。みんな努力してるんだろうなぁ。僕、頑張(がんば)る娘(こ)、大好きだよ!!」


しまった。饒舌(じょうぜつ)に語り過ぎた。


ドン引きされたろうなぁと思っていると、無言のままアルテアはスタジオに入っていってしまった。


「ちょっ、まだ公演開始してないって!!」


彼女に着いていこうとするとコワモテのガードマンに止められた。


「開演はまだです。しばらくお待ち下さい」


だが、アルテアをほうっておくわけにも行かない。


僕は食い下がって主張した。


「僕の知り合いの女の子が入って行っちゃったんですけど!!」


ガードマンは全く取り合ってくれない。


「入待(いりま)ち行為は固くお断りしております。開演時間までお時間をつぶされては?」


埒(らち)が明かないと僕は首を左右に振った。


とっととアルテアを連れて帰らねば。


第一、こんなところに何の用があるというのだろう。


顔パスで推(お)しに会いに来たのだろうか。


いや、それはありえないな。一般人が顔パスで通れるわけがない。


そうこうしているとようやくスタジオがオープンした。


僕は若干(じゃっかん)、イラつきながら観客席を眺(なが)めた。


アルテアは……いない。まったくどこに行ったんだ。


だが、こうしてソワソワしているのもアイドルヲタとしてのマナーに反する。


僕は心を落ち着けて観客席に着席した。


そしてライブが始まった。


「ハーーーイ!! みんな〜!! 張り切ってる⁉」


観客の野太(のぶと)い声が上がる。


「こっ、この声はまさか!!」


「みんな土器土器(ドキドキ)!!」


「土器土器(ドキドキ)!!」


ボンッ!!


打ち上げのくす玉が上がる。


「ハーーーイ!! 土器(ドキ)☆土器(ドキ)☆ハート♥センターの〜〜〜アルテアでーーーーーすッ!!!!」


僕は心臓が止まりそうになった。


は? どういうこと? 僕は夢でも見てるのか?


目の前で立派にアイドルをやっているのはあのアルテアだったのだ。


ちゃんとキュートガーリー系のコスに身を包んでいる。


「じゃ、みんないくよーーー!! 私のハートは土(ド)ッ器土器(キドキ)!!」


メンバーは5人いた。その中でセンターを勝ち取るのは並大抵(なみたいてい)のことではない。


彼女はフリフリフリルを揺らして歌いながらパフォーマンスしはじめた。


「わ〜た〜し〜のココロはいつも土器土器(ドキドキ)〜♪」


〈ドキドキ〜〜!!〉


(あ〜な〜た〜を見つめて土器土器(ドキドキ)〜♪)


〈ドキドキ〜〜!!〉


(あ、いま、こっち〜をみたかも〜♪)


〈みたかも〜!!〉


(やっぱり、私、アナタのことが……)


〈こ〜と〜が〜〉


(土器(ドキ)ッ土器(ドキ)ッ!!遮光器土偶(しゃこうきどぐ)ッなの〜!!)


〈なの〜〜〜!! もう一回!!〉


「オーーーーハイ!! オーーーーハイ!!」


「ハイハイハイハイハイ!!!!」


気づくと僕は全力でヲタ芸(げい)をうっていた。


「あれ、群青(ぐんじょう)の貴公子(きこうき)じゃね?」


「マジだよ!! カッケー!!」


「本物初めてみたよ!!」


そして公演は終わった。


流石にアイドルと一緒に移動するわけにはいかなかったので、僕たちはクランドール駅で待ち合わせた。


僕は呆然(ぼうぜん)として言葉が出なかった。


なんとか一言をひねり出す。


「アルテアのお仕事ってアイドルだったんだね」


彼女は恥ずかしそうに答えた。


「うん。街でスカウトされちゃって。それ以来、コッソリとね。メジャーデビューの話も来てたりして……」


急にアルテアが遠くに行ってしまった気がした。


だが、本物と遜色(そんしょく)ない、いや、それ以上のアイドルなのだ。


まさに生まれながらと言える。


それなら素直(すなお)に祝福(しゅくふく)しよう。彼女ならスターダムを駆(か)け上っていける。


「おめでとう。もう僕が言うことはないよ。思い切り、やれるだけやってごらん」


背中を押したつもりだったが、アルテアは俯(うつむ)いた。 


「アイドル、もうやめようと思うんだ。すっごく嬉(うれ)しかった!!フォルくんがライブ見てくれて、楽しんでくれて!!でも他のお客さんもいたでしょ? 私、フォルくんだけのアイドルになりたいんだ」


おっ、専属(せんぞく)アイドルか?


「私だけを見てて……」


そして、アルテアは僕の頬(ほほ)にキスした。


あぶねぇゴーレムのキス!!


唇(くちびる)だったら内臓(ないごう)がはねて死んでたぞ!!


「フォール!! 大好きだぞ!! ニヒヒ!!」


そう言いながら彼女は、はにかんだ。


すっごく駅の人々の視線が痛かったので逃げるように僕らは汽車(きしゃ)に乗った。


いや、毎度デカくてすんません。


アルテアはと言うと僕の胸に寄りかかって眠っていた。


専属(せんぞく)アイドル……か。


はは。僕にはもったいないくらいだな。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。