↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
36/57

フォルサンスキスキアイシテル

同伴用(どうはんよう)のコンパニオン・ゴーレムのティーリアが工房(アトリエ)から独(ひと)り立ちしてからだいぶ経つ。


お嬢様の人格で主にフォーマルな場でしか活躍できないはずのゴーレムだった。


しかし、アルテアと同居させるようになって凄(すさ)まじいシナジー効果が現れた。


2人の相性は抜群(ばつぐん)だった。


ティーリアはアルテアの影響を受けておしとやかに、アルテアはティーリアの影響を受けて活発的上になっていったのである。


どちらも過度ではなく、絶妙(ぜつみょう)な塩梅(あんばい)である。


彼女らを同居させたのは英断(えいまん)だった。


さらにティーリアは自分の長所を活かし、着付け、マナー講座を開いた。


キャマにはその手の教室はなかったので、すぐに人気となった。


マダム中心だが、男性もそれなりに来る。


仕事面では商業ベースに乗り、一番、成功したと言える活躍ぶりだ。


彼女もお嬢様の性格を観察して創(つく)った。


やはり、1から作るとポテンシャルが高い傾向(けいこう)にあるらしい。


初期は調律(ちょうりつ)に苦労したが、それでも比較的早く自立できた。


失礼だが、頭がゆるそうに見えて実はかなり賢(かしこ)い。


エリーヌの次くらいに聡明(そうめい)なのではなかろうか。


空気を読むのも、立ち回りも上手い。


これに加えてアルテアが加わるともう鬼に金棒(かねぼう)だ。


髪型をどちらかソックリに換装(かんそう)すると社交界姉妹の完成である。


アルテアを男装(だんそう)させれば舞踏会(ぶとうかい)への参加も可能だ。


別に僕自身には品があるわけでもないのだが、格が上がった今、結構その界隈(かいわい)へのお誘いがある。


正直、ニガテではあるし、辞退したいところなのだが、それでは心象(しんしょう)が悪い。


魔術局(まじゅつきょく)において、仕事だけやる仕事馬鹿(しごとばか)はいらないのである。


こうやって聞き分けの良い犬を繋いでおくというわけだ。


意外なことにあのアンズさんでさえ、ドレスを着飾(きかざ)ってくる。


ちょっと小さいのが玉に瑕(きず)だが、ダンスもやってのける。


これには感心せざるを得なかった。


もっとも、その時のためのアルテアとティーリアである。


今日のティーリアは金髪にクルクルロール、ピンクのドレスでいかにもお嬢様といった見た目だ。


さりげなく僕をサポートしたり、エスコートしたりしてくれる。


本当にありがたい。ただひたすら感謝するばかりだ。


そんな中、来賓(らいひん)たちの間を動くゴーレムがいた。


「オリョウリヲオトドケシマシタ……」


席の間をまわって配膳(はいげん)するゴーレムである。


丸い頭に身体の前にお盆(ぼん)がついている。


脚はローラータイヤでコロコロと転がって移動している。


だが、会場中がそのゴーレムを笑い者にした。


僕の連れているティーリア、アルテアに比べれば玩具(おもちゃ)のようなものだったからである。


おまけに馬鹿にして蹴(け)るような輩(やから)も居る。


思わず僕は立ち上がって抗議しようとしたが、ティーリアが止めた。


「フォル様、貴方はゴーレムのことになると熱くなりすぎます。ここはこらえて……」


そう言われて、僕は頭を冷やした。


するとティーリアは尋(たず)ねてきた。


「フォル様、あの方には意思とか、自我(じが)みたいなものはありますの?」


しばらく考えると僕は答えを出した。


「う〜ん、あれはロール・ゴーレム。コンパニオン・ゴーレムより活動範囲が狭いんだ。ごくごく簡単な動作を繰り返す機能しか無い。意思とか、自我(じが)みたいなものは″全く″ないね。でも、だからといって乱暴に扱って言い訳がないよ」


コンパニオン・ゴーレムであるティーリアは切なそうな顔をした。


「じゃあ、あの方とお話したりはできませんの?」


難しい質問がきた。


ほとんどのロール・ゴーレムに刻印(こくいん)されている蒼(あお)の術式(じゅつしき)は″点″のみなのだ。


新たに蒼(あお)の術式(じゅつしき)を刻印(こくいん)することも出来るが、それは1から人格(じんかく)を設計するのと同じだ。


さらに、繊細(せんさい)な神経構造(しんけいこうぞう)を想定して造られていないので、刻印(こくいん)に成功したとしても性格が発現(はつげん)しない可能性が高い。


要するに、今の姿が限界。MAXのパフォーマンスなのである。


今回も無事にパーティーが終わった。


僕はげんなりして大きく息を吐(は)いた。


帰ろうかとあたりを見回すとティーリアがいない。


するとアルテアが厨房の方を指さした。


そちらに行ってみるとティーリアがコックに何やら頼み込んでいる。


間に入るとコックは言った。


「そういうのはね、館のご主人さんに言ってください。困りますよ」


何を頼んでいるのかと思えば、先程のロール・ゴーレムを買い取りたいというのである。


同伴(どうはん)のためだけに造られたティーリア。


料理を運ぶためだけに造(つく)られたゴーレム。


どこかでシンパシーを感じるところがあったのだろう。


「ティーリア。いいよ。わかった。主人の方にかけあってみるよ」


感極(かんきわ)まった彼女は僕に抱きついてきた。


アルテアの視線がグサリと刺さる。


館(やかた)の主人と話すとすぐに僕のGTMバッジに気づいたらしい。


その結果、タダであのロール・ゴーレムをもらえることになった。


やたら頭をペコペコ下げてたけどなんか申し訳ないなぁ。


帰りの汽車(きしゃ)でめちゃくちゃ邪魔だったけど、僕も大概(たいがい)デカいので文句は言えなかった。


こうしてこのロール・ゴーレムをキャマまで連れてくることに成功した。


そしてとりあえず工房に運び込んだ。


「で、ティーリア。この子の名前は?」


しばらく彼女は考え込んでいたが、思いついたように答えた。


「フードメイドの″フー″ちゃんですわ!!」


なかなかいい名前だと僕はうなづいた。


同時にティーリアは懇願(こんがん)してきた。


「いくらなんでも感情がないのは可哀想(かわいそう)ですの!! 失敗してもいいですから、蒼(あお)の術式(じゅつしき)を入れてあげてください!!」


流石にこれは無駄になる。


ナンテ姉妹の反応も渋(しぶ)かった。


「いやー、さすがにロール・ゴーレムに蒼(あお)の術式(じゅつしき)はキツいっしょ」


「はい。人格が発現(はつげん)しないと思いますよ」


こればっかりはバークライト流の秘伝技(ひでんのわざ)でもどうこうなるもんではない。


だが、僕はティーリアの願いにかけてみることにした。


「はぁ〜。フォルったらほんとお人好し。まぁそういうとこがたまらんわ」


「ふふっ。そこは姉さんと同意見ですわ。お手伝いはできないけれど、幸運をお祈(いの)りいたしますわ」


っていうか2人揃って下着でベッドに寝るのやめれ。


透(す)けキャミエッ!!


こうして僕は出来る限りのベストをつくした。


1から、しかも変な素体(そたい)への刻印(こくいん)は僕の体力を著(いちじる)しく奪った。


3徹(てつ)くらいしたころだろうか。フーちゃんへの刻印(こくいん)が終了した。


お盆(ぼん)のプレートの裏にFoll.Bと刻む。


そしてゴーレム関係者が見守る中、火を入れた。


「いくぞっ!! ゴーレム・バース!!」


フーちゃんが動き出した。まぁ特に変わらないロール・ゴーレムになるだろう。


「オリョウリヲオトドケシマシタ」


その場のみんなが肩(かた)を落とした。


その次の瞬間(しゅんかん)だった。


「ティーリア。てぃりあダイスキ……」


一同に衝撃(しょうげき)が走った。


「せ、性格が……発現(はつげん)した……」


設計した僕も驚愕(きょうがく)した。


ナンテ姉妹は土下座(どげざ)し始めた。


「ひえ〜フォルさまさま〜」


「な、なんでもしますからおゆるしを〜」


そしてフーちゃんは僕の方を向くと呟いた。


「ふぉるさん、スキスキ」


え。ここは適当に誤魔化(ごまか)す!!


「ほら、僕にも懐(なつ)いてるからさ!!」


またもやフーちゃんがささやきかけてきた。


「ふぉるさん、スキスキ、アイシテル」


まっ、待ってくれ、きっと僕の魂名(こんみょう)をきざんだから。


ほらさ、別に僕がそんな人格に設定したわけじゃなくてさ。


やめて、そんな冷たい目で見ないでよ!!


こうしてまた1人、女の子が増えた。


まぁティーリアがとても喜んでるし、良しとしよう。


あれ、なんでだか、ますますピリピリしてないか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。