ゴーレム当てごっこしましょ
僕は久しぶりに査定を受けにきていた。
気合を入れてギュッと三つ編みを結う。
「協会貢献度A 地域貢献度S 住民信頼度S ゴーレム製造技術・知識S+++ 営業収益D 医療知識・従事S++ 新規開拓研究A 運動能力B、学科試験A、健康A+ 実地起動試験S+ 監察官監督B 戦闘実績A+ バウンティーハンターA+ 礼節・マナーS+ 社会福祉D きけんせいぶつげきたいD---」
地域貢献と、住民信頼度がSになった。
ここらへんはまぁ自然体で活動をしたまでなので、特に苦労したことはなかった。
だけど影響収益が滅茶苦茶に落ちた。
ここのところ、アナトミア・クレイを多用したことが原因となっている。
貧乏アトリエではないけど、リッチではない。
ボーンズちゃん、本当にありがとう……。
医療知識は一段階上がってメディスン・デュオ・マイスターになった。
ハルネ先生の推薦があったみたいだけど、足を引っ張っだだけだよなぁ。
実地起動試験もS+にアップ。ゴーレムの日常生活は可能と評価されたみたいだ。
監査官監督は項目が消されてもいいはずなんだけど、消えない。
引き続き素行の悪い酒飲みの手綱を握っとけという話なのだろう。
戦闘実績はA。ミミィと、ボーンズちゃんが評価されてるみたい。
ボーンズちゃんはバトルタイプじゃないんだけどなぁ。でも頑張り屋の女の子だ。
バウンティーハンターはA+でかなり上がった。
ジュッテ団には協会も手を焼いていたらしく、そのリーダーを退治したことが評価されたらしい。
僕はイヤな予感がした。
魔術局の査定は後に求められる能力がくっつく傾向にある。
ただ、それらは任意の物が多いので再試験の心配はない。
なになに……?
社会福祉D……こりゃまた漠然とした。でもこれは病院開業と被ってるところがあるので自然と上がるだろう。
申し訳ないけど募金とかは厳しいな。
ハルネさんのサインが入っている。僕に期待しすぎじゃないか?
その後にきったないミミズみたいな文字で「きけんせいぶつげきたい」と書いてあった。
こんなイタズラ書きをするのはアンズさんしかいない。
するとタイミングよくハルネ先生とアンズさんが協会に入ってきた。
「やあ。青年。査定はどうだった?」
特に問題はなかった。一部を除いては。
ハルネさんは申し訳なさげに手をひらひらと振った。
「いや、無理を言って済まないね。ただ、キャマ・クーラの周辺には社会福祉のスキルを持つ人材がいなくてね。面倒でも誰かがやる必要がある。頼んだよ」
ポンポンと肩をたたかれた。トライにこんな風に頼まれたら断るわけにも行かない。
だが、問題はアンズさんだ。
「なんです?この落書きは?」
彼女はあっけらかんと答えた。
「なにって……わっちの助手をやってもらう」
話がぶっ飛んでいて、ついていけない。
「手伝いって……僕にハンターをやれと?」
アンズさんは満足気にうなづいた。
「うんにゃ。魔術局にはハンターが少ないでな。猫の手もかりたいんじゃ。っちゅーわけで、わっちもおみゃあを見込んで危険生物狩りをてつだってもらうど!!」
僕は戦闘要員ではないのだが……。
「厳密に言えばおみゃあに頼んでるでねぇ。おみゃあさんのゴーレムに期待してるだ。別に積極的に狩りに行けとはいわねぇよ。とりあえず受けといといてくれって話じゃあ」
頼りにされてないとハッキリ言われてちょっと悲しくなった。
だが、所属メンバーが少なく、肩身が狭いという点で彼女にはシンパシーを感じるところがあり、渋々(しぶしぶ)、受けることにした。
今はボーンズちゃんもミミィもいい感じに仕上がってきているので、とんでもないバケモノでもなければなんとかなりそうであったし。
2人にお辞儀をして帰ろうとしたところ、彼女らは僕に腕を絡ませてきた。
貧ッ!! 普ッ!!
ハルネ先生は張り切っているようだ。
「それでは!! 早速、キャマ・クーラの病院の建設予定地を見に行くとしよう!!」
ぶら下がり健康器のようになったアンズさんもニッカリと笑った。
「おいす。わっちもゴーレムみたいぞ!!」
まだ昼過ぎだったこともあって僕らはキャマ・クーラへ移動することになった。
汽車では僕がスペースを圧迫してしまい、申し訳なかった。
「うんにゃあ。でっけぇ身体。いい匂い。ええのぉ」
「この安心感、包まれるようなたくましさ、女の子のような香り。ほぉ、これはなかなか……」
こうして僕らはキャマへ移動した。
そして、僕は2人に注意事項を伝えた。
「普段、ゴーレムたちは自分がゴーレムであることを隠して生活しています。バラしてもいいんですけど、説明が面倒ですからね。だから、ゴーレムに関する発言は控えてください。工房にゴーレムと人間が混ざってることが多いので」
ハルネ先生とアンズは顔を見合わせた。
「ゴーレムと人間が混じってる? 同じ空間で実験してるってことなのか」
女医は不思議な顔つきた。
「ああ、いや、同居していることもあるので」
ハンターの少女は目を見開いた。
「ってこたぁ、それだけせーこーなゴーレムがいるっつーことなんだなぁ。すげぇぞフォル!!さすがGTMなだけあるど!!」
思わずメガネを上げて僕は照れた。
その前に、僕らは病院建設地の下見に行った。
立派な病院の土台が出来始めていた。
それを見たハルネ先生は感心したようにうなづいた。
「社会福祉なんて評価項目はバカげていたな。見直したよ。評価はあげておく。しかし、こんな広い土地、確保するのに苦労したろ?」
思わず僕は回答に困った。
「お墓とか……移転させてもらったりもして。それ以来、お墓が庭に来たりとか……」
ごにょごにょと誤魔化すとハルネ先生が突然、泣き始めた。
「うっうっ、自らの身を挺してまで病院を……。私はキミに惚れたよ。漢の中の漢だ!!お友だちからお願いします!!」
彼女はそう言って手を差し出した。
お友だちって……もう友達みたいなもんじゃなかったんです?
そして泣いているハルネ先生を落ち着けてから僕らは工房へ向かった。
きて、何人居るかだが……多分3人!!
扉をあけるとマルシュ、アルテア、エリーヌ、ナンテ姉妹、ミミィ、インフィニが居た。
7人!! ナンテ姉妹スケスケキャミエッ!!
っていうか我が物顔でベッドに寝ないで……。
ちょっと珍しい組み合わせ。特にエリーヌは珍しい。
帰った途端、全員が声をかけてきた。
「フォル君おかえり!! 今日はエリーヌちゃんとショッピングに行っててね!!」
エリーヌは顔を真っ赤にしている。
「こ……こんにちは」
ナンテ姉妹は気だるげに身体を起こすと微笑みながらまた寝てしまった。
その姉妹揃ってみたいなのよろしくないから多分!!
ミミィはポンポンと刀の手入れをしていた。
「おかえり」
リミッターを外してからなんだか極まってきた気がするぞ……。
そしてマルシュも溶け込んでいる。
「おかえり〜。今日は、トマトパイだぞ〜。みんなで食べてたんだぁ」
いや、逞しくなりすぎだろ。
「わ〜い!! お客さんだ〜!!」
インフィニが愛嬌を振りまいてやって来た。
工房は女の子だらけである。
ハルネ先生とアンズさんは呆然とした。
ゴーレム当てごっこをやったら絶対に勝てない。
それだけ精巧に出来ていたのだ。
クランドールへの帰り道、ハルネ先生はつぶやいた。
「こっ、これ……交換日記です。よ、よろしくお願いします!!」
日……記……?
アンズさんも屈託のない笑顔でニカッっと笑った。
「ニヒヒ!! わっちもフォル兄、すきになってまったよぉ!!」
え……あぁ、ハイ。
2人とも、ぶら下がり健康器に捕まって帰ったのだった。




