海水浴に行こう!!
ある日、ポストを確認するとアルテアから手紙が入っていた。
なんでまた手紙なんかを……。
中をあけるとメッセージを書いた紙が入っでいた。
「フォルくんと私とマルシュちゃんで海水浴に行こうよ!! 集合は薬科店で!! みんなにはナイショだよ!!」
ははーん、なるほど、極秘のミッションってわけだな。
それならマルシュのヤツが工房にやってこない理由も合点がいく。
工房にはミミィとティーリアが居る。
2人ともかなり成熟してきていて、普通に留守番する分には問題ない。
ミミィは塞ぎ込んだままだ。なんとかしてやりたいところだが……。強く生きて。
そういうわけで、僕はマルシュの実家の薬科店へやってきた。
「フォル君!! 早速、海、いこっか!!」
「そうだね。いこうよ!!」
キャマ・クーラは山と海に挟まれた天然の要塞である。
もっとも、平和になった今ではただの海辺の町なのだが。
浜辺につくと2人はモゾモゾと着替えだした。
えっ!? そこで着替えるの!? エッ!!
だが、2人は服の下に既に水着を着ていた。小学生かよ……。
アルテアは上下オレンジのストライプビキニ。
かなり角度はエグいが、スタイルがいいのでとにかく映える。
すごく健康的で良い感じです!!
一方のマルシュは黒くてちょっとシースルー気味の水着だ。
普ッ!! 貧ッ!! エッ!!
しかし、毎回のことだが、マルシュのこのセンスはどこから来るのだろうか。
下着も黒だったし。少女趣味に反して黒が好きなのか?
平べったいのが哀愁を誘う。
が、それもエッ!!
こうして僕らは海水浴を楽しみ始めた。
だが、僕は浅瀬から先にはいかない。いや、行けない。
そうだよ泳げないんだよぉ!!
一方、アルテアとマルシュはスイスイと沖へ泳いでいく。
観察するに、設計通り術式は水で消えないようだ。
いや、水に溶けたら動けなくなっちゃうよ。
アルテアの機動性は良好だ。一通りの泳法をこなすことが出来る。
というかアルテアは何でも出来るな。
我ながら完璧に創りすぎた。
査定を人質にとられていたのでそれだけ必死だったというのもあるんだけどさ。
むしろ後から来る娘のほうが手がかかるくらいだ。
でも、その分、アルテアに関しては甘えさせてあげる期間が短くなってしまった気がする。
積極的にコミュニケーションをとっていかなきゃな。
それはともかく、なんでマルシュはあんな泳げるんだ……。
アイツ、ああ見えて運動神経は良いんだよなぁ。
海水浴に来たはいいものの、なんだかアウェー感あるなぁ。
泳げない主人公とかだっさいなぁ……。
2人は沖から上がってくるとこちらにぴしゃぴしゃと水をかけはじめた。
「うわ冷てっ!!」
僕は思わずのけぞった。
「フォ〜ル君のカナヅチ〜!!」
「やーいカナヅチ〜!!」
お、女の子2人になじられるとかなんか悪くないぞ。
ちょっとテンション上がってきた!!
僕も2人に水をかけかえした。
「そ〜れ!!」
「アハハ!!」
「キャハハ!!」
うーん、なんという青春。
いつもは女の子に揉まれてるけど、こういうのは新鮮だな。
一緒に海に行ってくれる女の子が居るって幸せなのかもしれない。
甘酸っぱくて、いいなぁ。
3人揃ってビーチで昼食をとっていると向こうから女性が2人歩いてきた。
わがままボディの二人組、ナンテ姉妹である。
いつもならエッエッデッデッと歓喜するところだか、今回はささやかな幸せを破壊する存在でしかない。
「お〜っ。フォル少年じゃん。両手に華だな〜」
ナンシャンテさんはデッがはみ出るほどの黒ビキニを着ていた。
「こんにちはフォルさん。奇遇ですね」
アンシャンテさんはなぜか競泳水着を着ていた。
どの層を狙ってるんだ?
(なびく長髪、厚い胸板、すらっと伸びた脚……)
アンシャンテはこちらに釘付けだ。
この人なんか視線が怖いんだよなぁ。
突然の乱入者にアルテアもマルシュもあまり良い気はしないようだ。
ましてや爆発するくらいのデッ!!が2つ、いや4つも揃っているのである。
圧を感じざるを得なかった。
僕もさすがにこの迫力にはビビったが、ささやかな幸せを選んだ。
「すいません。僕ら、これからカフェに寄るんです。お2人は……」
そう言いかけると2人はデッを投げ出して甘い声をかけてきた。
「フ・ォ・ルくん!! オイル、塗ってくれないかな?」
「フ・ォ・ルさん。お、お願いします……」
デュへへへ、そりゃ、もう……すいません。自分で塗ってください。
そう言って僕はナンテ姉妹に背を向けた。
欲望を断ち切ったのだ。我ながらえらい。
あぁ、でもエッ!! デッ!! デッ!!
置いてけぼりをくらったナンテ姉妹は焦った。
「最近、セクシー攻撃の効き目が薄くね? 元からだけど最近は特に。こりゃなんかあったな? ギアをあげてくしかないな」
「ここはやはり既成事実を……」
「あー、この子はまた!! 先乗りするのはあたしよ!!」
「もー!! 姉さんなんだから妹に譲ってよ!!」
「またわけのわからない理屈を!!」
浜辺で取っ組み合いが始まった。どーしょもない姉妹である。
一方、美女2人の誘惑をはねのけた僕の好感度は爆上がりだった。
アルテアもマルシュも腕にまとわりついてくる。
「エッ!! 普ッ!! 貧ッ!!」
「フォル君、見直したよ。2人についていっちゃうかと思ったよ」
「フォル!! よくデカパイに手を出さなかったな!! あたしも感心したぞ!!」
ほめられてるのか、けなされてるのかわからんな……。
ともかく、平穏は守られた。
2人が岩陰で着替えるというので僕はそばで時間をつぶしていた。
いやー、さすがにここで覗きイベントはないだろう。
ここまでは好感度が高い好青年なのに台無しにすること無いもんな。
その時、2人の悲鳴が聞こえた。
「キャー!!」
「ギャーーー!!」
これはただごとではない。僕は2人を助けに入った。
「大丈夫!?」
そこには水しぶきを上げて海から出てくるボーンズちゃんが居た。
海水浴バッティングのタイミングが悪すぎる。
そして目に入ったのはアルテアとマルシュの半裸だった。
π(ぱい)ッ!!
「フォル君のエッチー!!」
「ギャーーー!! 不潔ーーッッ!!」
こうなんていうかちょっと甘酸っぱい感じのリアクションだと思ったんだけど、ガチボコリでした。
流石に一線を超えるとリアクションが変わってきます。
エッとかそんな事を言ってる余裕はありません。
ありがたみより、痛みのほうが勝りました。
特にアルテアに関してはパワーがあり、なおかつリミッターをつけていなかったので、かなり強烈なビンタで。
マルシュのひっかきも地味にキツくて。海水でジンジンしみるんです。
おまけに、どこからか水着デートを察知してやってきたボーンズちゃんにまで殴られて。
こんなところで防水機能を活用しないでほしかった。
っていうかこれDVだよね? DVだよ!!
待ってくれ、僕は悪くない!!僕は悪くないんだッ!!
事故なんだよ!! 事故なんだッ!!
こうして3人に放置されたまま、僕は沖合に浮いた。
当然、かなりこっぴどく嫌われてしまった。トホホ……。




