お嫁さん第一号のオシオキ
ボーンズ君は女の子だった。いや、ボーンズちゃんか?
それを土木業の親方さんに話したらどうしてもお嫁にもらってくれという。
断るわけにも行かず連れてきてしまったわけだが……。
まさかのお嫁さん一号である。
うーん、こんなこと誰かに言ったらなんとな〜くぶっ殺されそうなので黙っておこう。
しかし、野ざらしも可愛そうだから工房にガレージを併設しておくことにしよう。
彼女は続けて土木作業員として働くことになり、僕に多大なるお給料をもたらしてくれるのだった。
本当にありがたい。大切に貯金しておこう
どうやら現場でもちやほやされているらしく、給料にもボーナスがかかっているらしい。
こまめに愛情こめてメンテしてやらなきゃな。
やっぱりヒモじゃないか!!
それにしても、ボーンズちゃんに負けてからミミィの落ち込み具合が激しい。
戦闘がアイデンティティなのにあそこまで簡単にいなされるとそりゃへこみもする。
しかも相手はおよめさ……作業用ゴーレム、
なんとかして自信回復させたいけど、ちょっと思いつかないな。
「コンコン」
ドアがノックされた。これは……マルシュではない。
そこにいたのはエリーヌだった。
「やあ、ようこそエリーヌ」
すると彼女は突然、走り出してミミィに飛びついた。
そしてディープキスをし始めた。
あまりの光景に僕もティーリアも固まる。
「う、初めて、奪われちゃった……」
ミミィは泣きながらへなへなとダウンしてしまった。
次のターゲットはティーリアだ。
「わ、わ、私は遠慮しておきま…キャーーーっ!!」
彼女も″奪われて″床に崩れ落ちた。
最後は僕の方を狙っているらしい。
まずいぞ!! ゴーレムのマウストゥマウスを食らったらどうなるかわからない!!
じっちゃんは言っていた。
ゴーレムは人工呼吸の加減がわからない。
うっかりマウストゥマウスすると内臓ごとふっとばされることがある……と。
それでも僕は彼女を受け入れた。
「んむ!! んーー!!」
どうやら内臓を爆破させられるいうことはなさそうだ。
そして僕は彼女を抱きしめながら秘孔を突いた。
かなり高度なテクニックだが、ゴーレムの朱の術式、蒼の術式の一部には刺激すると活動を停止するポイントがある。
そのため、的確にその″秘孔″をつけば気絶させたり、活動停止させることができるのである。
これが出来るのはごく一部のゴーレム使いだけだが。
今回、残念ながらエリーヌには活動停止してもらった。
そして体中の術式を観察していると原因がわかってきた。
「42年モノ以前の素体に稀におこる不具合、チュッチュ症。好感度の高い人中心に誰それ構わずキッスをするというゴーレム特有の厄介な症状だ」
本来ならば彼女も新しい素体に乗り換えてやるべきなのだが、古すぎて互換性がない。
と、いうわけで僕はしょげたミミィを連れてクランドールの3つ目に大きい街″セポール″へやってきた。
ここにはなんでも揃うというアヤしい店があると風のウワサに聞いていたからだ。
薄暗い路地裏にその店はあった。
「シエリアの店?」
桃色の髪の少女がニコニコしながら駄菓子を食べている。
ホントにここかぁ?
「あ!! いらっしゃいませ!! ここはシエリアの店って言います。御用は何ですか?」
「あのぉ……ゴーレムの42年物の素体ってありますか?」
そう尋ねると少女はパラパラとカタログをめくりはじめた。
「う〜ん、その商品はかなりレアですねぇ。在庫切れです。ただ、半日くらいあれば取り寄せられますが」
早ッ!! 絶対に見つからないと思っていたのだが、それどころではなく、おそろしい早さで確保してくれるという。
第一、並んでる品揃えもめちゃくちゃマニアックだ。
ゴーレム関連のものもたくさんある。
なんなんだこの店は……。
半日、潰すために僕とミミィは八ツ釜亭という大衆食堂に入った。
8つ釜があるからやつがまていなんだそうだ。
クランドールにも支店があるらしい。
入店しようとした僕はおでこを梁に強打した。
〜〜〜!! これだからデカい図体は!!
僕はゴーレムのトライマイスターのブレスレットをかざした。
どうやら資格によって無料で食事が出来るらしい。
最初は単体のブレスレットだったけど、メディスン・ソロ・マイスターが加わってからはバッジをはめこむ形となっている。
2つのバッジ持ち、通称″ツーハンドラー″となった。
17歳でこれに到達したのはごくわずかと聞く。
「う〜ん、そんなにエラいもんかねぇ」
今まで必死にやって来たらこうなったわけで、僕にはあまり実感がなかった。
「ねぇ、ミミィはどう思う?」
だが、彼女は上の空だった。
ダメだこりゃ。自信を取り戻すまでは元気にはならないだろうな。
食事を終えて店を出ると店のそばの坂の上から大声が聞こえた。
「馬車が脱輪したぞ!! 危ない!! よけろーーー!!」
坂の上から車輪が転がってきた。
2m超えか!! 僕と同じぐらいのデカさはある。
避けようかと身構えると背後に子どもがいた。
「まずい!! こらえる!!」
僕は精一杯、車輪に体当たりをかました。
ミミィが手伝ってくれるかと思ったが、案の定、上の空である。
そして僕は跳ね飛ばされて、意識を失った。
それに気づいたのか、ミミィも車輪にとりついた。
フルパワーでそれを握りつぶす。まもなく車輪はバラバラに砕け散った。
子どもは無事にすんだが、僕はすっかりのびていた。
気絶していただけなので大騒ぎするほどではなかったのだが。
「フォル殿!!フォル殿!!ええい!!かくなるうえは、まうすつーまうすで!!」
ちゅっ。
ん?マウストゥマウスにしては甘くねーかコレ!?
頭を振りながら僕は跳ね起きた。
ミミィは驚いたような顔をしている。
想像以上のパワーが出たように見えたぞ。
「おっ、乙女の恋心は無限のパワーとどこかで……こっ、こい、ごころ……」
なんだかわからないが、自信を取り戻したようでなによりです。
こうして「シエリアさん」の店で42年モノの素体を手に入れると僕らは急ぎキャマ・クーラへ帰った。
故障したパーツと回路を交換してエリーヌを起動した。
「再起動(リブート!!)」
すると無事に彼女は目を覚ました。
次の瞬間
ちゅっッッ
エリーヌが僕にマウストゥマウスをしてきたのである。
しまった。まだ治ってなかったか!!
ちゅっ!!
油断していると派手なのが来た。やはりまた機能停止するしかない。
秘孔をつこうとするとエリーヌさんは顔を真っ赤にして起き上がった。
「へ、へ、へ、平気です!! お、お、おおかげさまで治りました!!」
そりゃあよかった!!セポールまで行った甲斐があったよ!!
だが、回路とパーツを交換した時点でエリーヌは既に″治っていた″のである。
(あっ……私ってばフォルさんに3回もキスしちゃった。フォルさんの唇……温かかったなぁ。私だって……私だって……)
それを見ていたミミィはまたもや自信を喪失してダウンしてしまった。
さすがに濃いマウストゥマウス2連発はショックだったらしい。
ん?自信と関係あるかぁ?
にしてもライバルがどうとかいって張り合うかと思ったのだが。
こういうところはマルシュを見習ったほうが良い。
こうしてこの一件は無事に幕を閉じたのだった。
「ふぅ、あぶねー。度重なるゴーレムのマウストゥマウスでゾウモツがぶっとぶかと思ったよ」
だが、それでは終わらなかった。その後、僕はしこたまボーンズちゃんに殴られたのだった。
窓からこの一連の流れを覗いていたらしい。
あざにたんこぶ。痛って〜。なにかしたかね、僕が。




