kiss kiss kiss
久しぶりにボーンズ君がメンテナンスにやってきた。
今日はバラさないで屋外でのメンテだ。
彼は突っ込んでくるタンカーを食い止めた街の英雄である。
僕はちょっと手伝ったに過ぎない。全部、彼のおかげさ。
フリキ人形のような顔に、3mはある巨体。
僕は186cmだからさすがに大きい。
逆三角形をしていて愛嬌のあるコミカルな体型だ。
普段は土木現場で働いている。
彼の活躍についてはバークライトのレボートを読んでほしい。
本来はただの作業ロボで、最低限のパワーしか出ない。
……はずだったんだけど、タンカーを押し返すためにパワード改造を施してしまった。
「今もまだカスタムされてるのかな?」
彼の朱の術式を確認したところ、まだリミッター解除やバーストの機能が動いていた。
外してないから当たり前といえば当たり前なのだが。
しかしこれでは完全にオーバースペックなので負荷がかかりがちだ。
「今回のメンテで外そうか。君には必要ないからね。よくやったよ」
僕はボーンズ君をねぎらってピタピタと装甲に触れた。
ガシャンガシャンとボーンズ君は喜んだ。
その時、ミミィが彼に飛びかかった。
回し蹴り2連を放つ!!
「ガシィンガシィン!!」
ボーンズ君はそれをガードしきった。
戦闘ゴーレムの攻撃を受けるとかうっそぉ!?
「お見受けした通り、かなりの実力者と見たり!! お手合わせ頼み申す!!」
次にミミィはロケットパンチを発射した。
「うわぁやめやめ!! 普通の女の子は人前で腕、飛ばさないから!!」
ボーンズ君はいとも簡単にそれを弾いた。
「これならッ!!」
最後の手段とばかりに指を折るとハンドガンを連射した。
だが、ボーンズくんの装甲はそれをはじいた。
ミミィは目を見開いた。
「そ……そんな……」
そして四つん這いになって激しく落胆してしまった。
「戦闘がアイデンティティなのに、それを打ち破られてしまったのだ。無理もない」
これには理由が2つある。
まずはミミィがうっかり人を殺さないように強めにリミッターをかけてあること。
そして、ボーンズ君がかなり派手に改造済みということだ。
大型タンカーとの衝突を想定したゴーレムにそう簡単にダメージを与えることは出来ない。
「はいはい。じゃあ、パワード処理、抜こうね」
準備をしていると街のほうが騒がしくなった。
恐竜タイプのゴーレムが暴れていたのである。
実際のものにくらべると5m前後と可愛いサイズだが、馬鹿にはできない。
発掘されたゴーレムが闇ルートで出回ることはそれなりにある。
それが犯罪に使われることも多かったりして、協会も手を焼いている。
だからバウンティーハンターなんていう評価があるわけで。
ダイナソア・ゴーレムに乗ったスーツの男は名乗りを上げた。
「俺達、ジュッテ団!! 金目の物を出せば街は壊さないでやるぜ!!」
列車強盗の連中だ。懲りないなぁ。
それに反応してミミィが立ち上がった。
「私が!!」
だが、体格差からすると分が悪い。僕は彼女を止めた。
「ミミィは待機!! いいね?」
「え……あ……」
戦闘ゴーレムの顔は真っ青だった。
僕はボーンズ君のそばに立って指示を出した。
正面から挑むと街が破壊されてしまう。
そこで、ボーンズ君はスニーク・モードを起動した。
コロコロとローラーを転がして音を立てずに近寄る。
「背後をとった!!」
ボーンズ君は思い切り恐竜ゴーレムにタックルをかました。
敵は坂を転がって砂浜に激突した。すぐに追い打ちをかける。
作業用ゴーレムはジャンプするとボディプレスをしかけた。
「へへん!! バカにするなよ!! ダイナソア・ゴーレムは伊達じゃないぜ!!」
だが、発掘されたゴーレムはたいていかなり古い。
「あんなの敵じゃない!! いくぞボーンズ君!! リミッター解除!!、バースト!!」
彼の背中をスーッとなぞると背中に無数の朱の術式が浮かび上がった。
そして一回りも大きい恐竜型・ゴーレムに突っ込んでいった。
だがジュッテ団はしぶとかった。
「おおおあああ!! こなくそーーー!! 連敗したらボスにどんなおしおきされるかわかんねぇぜ!!まけるわけにゃあいかねぇ!!こっちもフルパワーだ!!」
ダイナソア・ゴーレムは真っ黒な煙を上げながらボーンズ君を押し始めた。
さすがに体格差がデカい。
そして揉み合いになったまま砂浜に出た。
海岸線ではギャラリーがあつまり、ボーンズ君を応援していた。
その激励を受けてか、作業用ゴーレムも真っ黒な煙を上げ始めた。
「そのゴーレムはかなりの旧式!! 水に濡らせばショートしてしまうはず!! こらえくれボーンズ君!!」
彼は馬力でジュッテ団を押し込みだした。
「嘘だ!!こんなダッサイ作業ロボに俺達のダイナソアが負けるわけがない!! 嘘だぁ!! 嘘だーーーーーッッッ!!」
ボーンズ君は強烈な張り手をくらわせた。
そして恐竜ゴーレムは仰向けに半身を水に晒した。
「ジュオっ……ジュオジュオっ……」
やがて相手はショートしてピクリとも動かなくなった。
街中から歓声が上がる。
思わず僕はボーンズくんに抱きついた。
彼もまんざらでもなさそうにガッツポーズをとった。
そんな中、魔術局から査定の呼び出しがかかった。
会長から内容が読み上げられる。
「協会貢献度A 地域貢献度A++ 住民信頼度A++ ゴーレム製造技術・知識S+++ 営業収益B 医療知識・従事S+ 新規開拓研究A 運動能力B、学科試験A、健康A+ 実地起動試験A 監察官監督B 戦闘実績B バウンティーハンターC++」
戦闘関連がちょいちょいプラスといったところで、そこまで変化はない。
僕が安心していると会長は追加点を伝えてきた。
「君の医療評価を上げるように嘆願書が来ている。これを評価して医療・従事をS+とし、メディスン・ソロ・マイスターの称号を与える」
傍聴席から拍手が送られた。
メディスンのソロマイスターといえば、代表者にならずとも責任者になれば病院を開業できる資格がある。
これには思わず僕もボーンズくんのようにガッツポーズをとった。
キャマ・クーラに帰るとみんなが歓迎してくれた。
「バークライト先生!!」
「フォル先生!!」
「フォルくん!!」
うれしいけど冗談なしに僕はもみくちゃにされて窒息しそうだった。
ルルゥさんと目があった。
すると彼女は涙を浮かべ、感動した様子でこちらに駆け寄ってきた。
そして僕と唇を重ねた。結構ベロが深いぞ……。
これは……専門家の人工呼吸……マウストゥマウスだ!! 助かる!!
これによって僕は意識を取り戻し、無事に家に帰れた。
これ以降、なんだかまたルルゥさんの態度が変わったような気がするが……よくわかんねぇなぁ。
こうして一悶着あったわけだが、病院建築のプランも動き始めたしめでたしめでたし。
あとはボーンズくんを現場に返して終わりだな。
「ん? ボーンズ君の頭部の……蒼の術式が変化してる。作業ロボでもそんなことあるんだなぁ」
僕は頭の蓋をあけて驚いた。あまりにも蒼の術式が発展していたからである。
「なになに? オンナノコ、コイゴコロ……」
「ボーンズくんって……女の子だったのか……!?」
ブリキの顔が心無しか微笑んでいた。




