女の子落ち物パズル
僕は今、落ち物パズルのような状況に悩んでいる。
家から女の子がいなくなったかと思うと、別の女の子が降ってくるのである。
マルシュ、ルルゥさん、アルテア、エリーヌ、ナンシャンテさん、ミミィ、アンシャンテさん、ティーリア……うわ、8人もいるじゃないか!!
このうちゴーレムはアルテア、エリーヌ、ミミィ、ティーリアの4人。
ちなみにナンテ姉妹しかガーリー・ゴーレムの存在は知らない。
当人もバラさないことにしてるしね。
さすがにこう増えると仕事に集中できない。
最近増えたのはアンシャンテ・ナンテさん。
ナンシャンテさんの妹さんらしい。姉さんとの年齢差を考えると20歳前後かな。
肌は雪のように白く、瞳は大きく、鼻筋の通った美女だった。ケバすぎないナチュラル・ルージュが逆に艶めかしい。
……と、よくナンシャンテさんと似ているが、髪色はシルバーだし胸元はしっかり閉じてロングスカートと、清楚な感じは姉さんとは正反対だ。
会った時はしっかりものだと思ったんだけど、姉さんとは別方向でネジが飛んでる気がするよ。
セクシー担当なのか、やたらエッなシチュエーションに遭う気がする。
既成事実とか言っちゃうタイプだと思う。キセージジツってなに?
次はミミィ・チモシー。
元戦闘用ゴーレムの敗残兵でポーレイ・ポレイ・ジャングルから回収してきた。
さすがにガチのソルジャー・ゴーレムのままだと困るので調律して人格をマイルドに調整した。
戦闘用の名残を消すために名前は可愛めにしてある。
その結果、ガードマンじみた精神構造に落ち着いた。
今では頼りになる用心棒だ。
勝手に搭載武器を盛りたがるクセがあるが。
あどけない性格と思いきや、意外とグイグイ来ることもある。
そしてティーリィア・イリス。
魔術局重鎮の依頼で創ったコンパニオン・ゴーレム。
これといった能力はないけど、中身はほぼ完璧なお嬢様。
お茶会とか舞踏会とか晩餐会には強いかも知れない。
まだ来て間もないから性格はよくわからない。
一般常識が全く無いのでしばらく調律しないと外には出せないかな。
すくなくともティーリアが居るので常時、1人は居ることになる。
ミミィはもう独り立ちできるんだけど、護衛護衛って言って乗り気じゃないらしい。
かといって無理に追い出すのもなぁ……。
この時点で2人いるし、僕は硬くて狭いソファーに眠らざるを得ない。
2m幅のソファー買おうかな……。
「コンコンコンコン」
「おいっすフォルー!! 今日はマーマレードパイだぞ!!」
これに加えてほぼ毎日、この幼馴染のマルシュがやってくる。
最近は他の女の子が居ても突撃してくる。なんというガッツとバイタリティ。
キスらしいことをしてきた唯一の女の子だが……いや、あれはほっぺのパイを舐めただけだな……。
それにしてもゴーレムの調律は大変だ。
決して頭が悪いわけではないんだけど、染み付いた特性はなかなか抜けない。
「オーッホッホ!! ご機嫌麗しゅう!! 今日はお日柄もよく……」
「そこはこんにちはでいいんだよ……。あとオーッホッホをつけるクセもやめよう」
焦げ臭い匂いがしたので焦って振り向いた。
「そ、その、パイというのを作ろうと、その、軽く炙ってみたところだな……」
僕は駆け寄ってフライパンに水をかけた。
「あのね、普通、料理には火炎放射器は使わないの」
僕もミミィもびしょ濡れだ。
白ブラエッ!!
こりゃ駄目だ。ミミィも当分、一人暮らしはさせられない。
ゴーレムの精神構造は蒼の術式というもので成り立っている。
ここをいじれば矯正が可能だけど、そうすると″元の人格″は死んでしまう。
それはもう本人の意思でもなんでもなく、所有者のエゴでしか無い。
それに、下手にいじれば廃人になってしまうこともある。
いずれにせよ、むやみにいじっていい部位でないのはあきらかだ。
だから僕はこうやって手間のかかる方法で調律している。
それに成長や変化にも興味深いものがある。
それこそミミィなんて手のつけようのないキリング・ゴーレムだったわけだし。
今の彼女をみるとそれこそ自爆装置が搭載されていたとは誰も思わないだろう。
そう考えるとこれも立派な仕事の一環だと思えてくる。
そうだろ。じっちゃん……。
そうかな? う〜ん。そうじゃないかもなぁ。
と、言うわけで僕は本格的に内職を再開することにした。
もっとも赤ちゃん2人のおもりをしながら仕事をするようなものなのだが。
いや、さすがにミミィはもうちょっと大人か。
久しぶりのゴーレム修理で生き生きとしてきた。
だが、同時に診療所の事も気ががりだ。
病院開業の話題を保留にしてしまっているからだ。
ルルゥさん、返事を待ってるだろうなぁ。
この間のロッカー事件がフラッシュバックした。
「すごいくっついちゃったね♥もう。フォルくんのエ・ッ・チ♥」
エッ!!
そんなことはどうでもいい。いつまでもはぐらかしているわけにもいかないからね。
とはいってもなぁ。
僕は腕に着けたプラチナに光るゴーレム・トライ・マイスターのブレスレットを見つめた。
王立宮廷魔術師ねぇ。病院経営とどっちが人の役に立つのかな。
こんな大層なものをもらったので文句が言えなかったが、僕は協会に不信感を抱いていた。
ゴーレムの扱いがぞんざいなところなんてロクなとこじゃないし。
そもそも平気で再試験を人質にするようなところがまともなわけがない。
それこそヤクザみたいなものだ。
でもなぁ。マイスター棄てるって言ったらじっちゃん泣くだろうしなぁ。
僕は頭を抱えた。悩み事が山積している。
そうしていると女の子が降ってきて、僕の思考タイムを奪っていくのだ。
そうだ。その手があったか。
ティーリアとミミィを連れてアルテアのところへ行ったのである。
「半日で、いいから預かってくれないかな?」
アルテアは呆れているようだったが、それでも依頼を受けてくれた。
「しかたないなぁ。私は保母さんじゃないんだけどなぁ」
だがティーリアは嬉しそうだ。
「あらアルテアさん。一緒にお話しませんこと?」
そう言われたらアルテアもまんざらではないらしい。
「わかりましたわ。ティーリアさん、お茶にでもいたしましょうか」
おもりゴーレムはウインクしてきた。
本当に申し訳ない。ペコリと頭を下げると僕は気分転換に砂浜を散歩した。
するとあることが思い浮かんできた。
「……僕が居なかったらゴーレムのみんなはどうなるんだろ?」
確かにアルテアやエリーヌのように自立できる子もいる。
だが、そうでないゴーレムはどうだろうか。
自立できていたとしても彼女たちは身体の異変を自覚できない。
あれだけしっかりしているエリーヌでも壊れることがある。
あまりこの呼び名は好きじゃないが、マスターとしての責任はある。
「ルルゥさん、ごめんなさい。僕、ゴーレム使いやるよ」
気づくとすっかり日が暮れていた。
アルテアが2人を家に送り届けてくれているはずだ。
「ただいま」
「それですね、これこれこうでして、ですから……」
ティーリアがマシンガントークをしている横でアルテアが眠っていた。
これは疲れる。
同時に焦げ臭い匂いがした。
「えっと、パイを焼くにはとろ火で……」
「ミミィ!! 火炎放射器はやめてって!!」
僕はフライパンに水をかけた。
2人ともびしょぬれだ。
白ブラエッ!!
……もう勘弁してください。




