根暗、勇気なし、普ッ!!
実地起動試験が進むなか、僕は図書館のエリーヌに会いにいった。
彼女はなにはとにかく聡明で、物わかりが良く。空気も読めるし安定感があった。
だから割と早く組み込んだし、何ら心配はしていなかったのだが……。
「おはようざいます」
カウンター内のエリーヌがなんだかおかしい。
ひっぱりだしてみると左腕が派手に壊れていた。
「こりゃひどい。工房にいこう。さぁ!!」
だか、エリーヌは不服げだ。
「でも!! お仕事が!!」
それを無視して僕は彼女を運んだ。
腕を露出して再確認するとかなり酷い。
この感じからするとなにかの角に強打したのだろう。
元は42年前の素体なのだから仕方がない。
にしてもナンシャンテさんは何やってたんだ。こういうときにサボる。
最低限、ゴーレムの体調を把握してくれなければ困るのだが。
今はミミィの慣らしをしているはずだがこりゃ帰ったら説教だな。
エリーヌはと言うとテーブルの上ですすり泣いている。
「大丈夫?痛いところはないかい?」
そして。彼女はますます泣き出した。
「すいません。私、フォルさんにご迷惑をかけてしまって」
泣きつづける彼女を片目に僕はパーツの交換を終えた。
古いだけでさほど難しい工程ではない。
そして僕はとても後悔した。いくら自分の意思で働いていたとはいえ、ゴーレムをここまで放置してしまうのは言語道断である。
「エリーヌ。エリーヌ。顔を上げて」
すると彼女は僕にすがりついてきた。
「一緒に……私と一緒に居てください……お願いします……」
そう言われてたら応じざるを得ない。
(う〜ん、メンタルケアが必要かな。)
夜に帰ってきたナンシャンテさんとミミィには事情を伝えてホテルに移動してもらうことにした。
お茶を淹れているとエリーヌが重い口を開いた。
「私、ホントはフォルさんのお宅に何度も行こうと思ったんです。でも、勇気が出なくて…。。
言わんとすることはわかる。
が、そんな魔王かなんか倒しにいくわけじゃないんだから……。
「フォルさんちにいくといつも誰かいて……私はフォルさんと2人きりで居たいんです!!」
エリーヌは思わず、口から出た自分の想いに気づいて驚いた。
(えっ、あっ私、何を……?)
それを知ってか知らずか……知るわけ無いな。
フォルは快諾した。
「うん。いいよ。しばらく2人で一緒に過ごそうか
「ほっ、ホントですかぁ!!!」
こうして、エリーヌと僕の数日間の共同生活が始まった。
まじまじと見たことはなかったが、彼女は美人可愛い。
儚げな様子をみると守ってあげたくなる見てくれだ。
彼女は意外と料理が上手く、家に居る時は決まってなにか作ってくれた。
とにかく頭が良いので難しい話題にもついてきたり。逆に難しい質問をしてくる事もある。
哲学的な話題が得意で、思慮深い。
理論的な雑談ができるゴーレムは多いが、ここまで哲学的なゴーレムはなかなかいない。
司書としての情報が蓄積した結果だろう。
その中で、当然ながら恋愛の話も出てくる。
「フォルさんはどんなタイプの女性が好きなんですか?」
「う〜ん、可愛くて、優しくて(デッ!!)」
我ながら浅い回答だ。
そのたびに彼女は物悲しそうな顔をした。
「どんなにそんなに自信なさげなのさ?」
また彼女はうつむく。
「だって、私、根暗だし、他の皆さんみたいに勇気はないし、デッ!! ではないし……」
とくに深く考えずに僕は感想を返した。
「僕はエリーヌのこと″好き″だよ。だって、料理は美味いし、頭も良い。理想のお嫁さんって感じだよ。根暗って言うけど女の子なんてちょっと控えめくらいでいいと思うし」
この一言を聞いたエリーヌは電撃ショックを受けたようになってしまった。
そして元からくすぶっていた火種に火がついてしまった。
「ほ……本当ですか?」
急に彼女は、はにかみだした。
「ああ、本当だよ。エリーヌは素敵な女の子さ!」
別にこれはメンタルケアでもお世辞でもなく、フォルの本音ではあったのだが当たりどころが悪かった。
そして、フォルとエリーヌは気分転換でピクニックへとニックの大木へやって来た。
ここなら誰もおらず、落ち着くことができる。
「はい。今日はサンドイッチです!!」
「うわぁ、美味しそうだね!!」
本格的なメンタルケアが必要かと思われたエリーヌだったが、その必要はなかった。
植物の根が水を吸うように、フォルとの共同生活で彼女は回復した。
それどころか、前よりも元気になったようにも思える。
うんうん、いいことだ、いいことだ。
でも何だが、モジモジしている。顔も赤いし、風邪か?
「わたし、実はフォルさんのこと」
「ん? 何?」
「なんでもないです♥」
フォルと話があう知的美人という強力なライバルの本格参戦に、女子たちは身震いしてイヤな予感がした。
他の女子たちは割とイケイケGOGOで突っ込んでくる連中ばかりだ。
それに対して、エリーヌには純朴で素朴、控えめな良さかあった。
これはライバル女子たちにはない魅力だった。
フォルに変な負荷をかけないという点で言えば相性も良い。
まぁそれが恋愛的なアドバンテージになるかは微妙なところではあるが。
「フォルさん。せっかく、ピクニックにきたんですから、水遊びしましょ」
ニックの大木に来たら根本の小川で水遊びするのは常識である。
僕が大人しく足を冷やしているとエリーヌが水をかけてきた。
あれこれ普通、逆だよね?
反応しないのもあれなので、僕もパシャパシャと水をかけた。
すると、エリーヌは滑ってころんだ。
これは………デジャヴュッ!!
エリーヌの白いワンピースがモロに透けた。
可愛らしい上下ピンクの下着。フリルがフリフリしている。
「エッ!! 普ッ!!」
だがマルシュの時を思い出した。
このあとビンタが飛んできて顔にもみじ饅頭ができてしまう。
僕は顔をガードしたが攻撃が来ない。
おそるおそるエリーヌの方をみるとエリーヌは恥じらいを浮かべて下着を手で隠した。
「………フォルさんの……えっち♥」
「エッ!!」
最近、エッ!!なシチュエーションが増えてきてさすがの僕も疲労が隠せない。
それでも反応してしまうのは男の性というやつなんだな。
「メガネ……濡れちゃいました」
エリーヌはメガネをとるとそこには美人さんがいた。
コンセプトは違うが、アルテアにも負けじと劣らない。
これは掘り出し物だ!!
にしてもなんでこんなエッ!!が増えたんだ。
フォルは自分の周りの女子がメキメキ増えているという実感がなかった。
それに競争も激化してきている。
それなのにエッ!!が増えている理由が把握できていなかった。
物事の分析や研究は得意なのに、こういうことに関しては本当にからっきしなのである。
ともかく、このままのペースでエッ!!が増えまくることはないだろう。
フォルがそうタカをくくっていた時………。
???「まったく、姉さんったら……どうにかならないものかしらね。何としても再試験は撤回させないと……とりあえず、フォルさんのところをたずねてみようかしら」




