↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/58

フォル・バークライトのレポート

僕はフォル・バークライト。


ゴーレムを作ったり、調律(ちょうりつ)したりしているゴーレム使いだ。


今回はゴーレムの修理依頼。


土木建築現場(どぼくげんば)で活躍していた″ボーンズくん″という名だ。


経年劣化(けいねんれっか)で修理に出されてきた。


3m近い背丈(せたけ)だったので、分解して運び込(こ)んだ。


工房(アトリエ)のテーブルにギリギリ乗っかるほど大きい。


工業用なので、さほど複雑(ふくざつ)な術式(じゅつしき)を刻(きざ)み込(こ)む必要はない。


だが、土木作業に従事(じゅうじ)しているだけあって、あちこちの摩耗(まもう)が激しい。


僕はマギ・クレイを練(ね)って素体(そたい)を形成(けいせい)した。


素体作(そたいづく)りと言えば専門家がやるけど、下級〜上位くらいなら僕にも形成(けいせい)、修復することが出来る。


ペタペタと損傷箇所(そんしょうかしょ)にクレイを練り込んでいく。


「よーしよしよし!!」


僕はボーンズくんを褒(ほ)めながら素体(そたい)をなでた。


素体(そたい)を物のように扱(あつか)うゴーレム使(つか)いも多(おお)いけど、僕(ぼく)としては大切に、大切に扱(あつか)わなきゃと思ってる。


ゴーレムとは言え、命の宿(やど)る身体(からだ)なんだから。


もっともこれはじっちゃんからの受け売りなんだけどね。


バークライト流ゴーレムのポリシーの1つでもある。


なにせ身体が大きいからか、半日かけても半分も終わらない。


僕はコーヒー休憩(きゅうけい)に入った。


今日、誰も来ないのは実のところ仕事と伝えているからだ。


さすがに仕事に集中するからって言うと誰も来ないもんなんだな。


久しぶりのストイックな仕事に僕はやりがいを感じていた。


腕(うで)にはめたゴーレム・トライ・マイスターの腕輪(うでわ)を眺(なが)める。


「う〜ん、落第(らくだい)からコレをもらうとまではとても思わなかったなぁ。夢かなんかじゃないだろかな」


腕輪はプラチナに輝いた。


だけど、僕は俯(うつむ)いた。


ある女性型ゴーレムの酷(ひど)い扱(あつ)いが頭から離れない。


もっとゴミのように扱(あつか)われているゴーレムもいるだろう。


今日の依頼主(いらいぬし)さんは「ウチのボーンズを頼んます」と言っていた。


″ウチの″


そう扱ってもらえるだけこのゴーレムは幸せだと思える。


「さて、続きをやろうか」


ボーンズくんの仕様書(しようしょ)を再確認した。


「なになに? 二足歩行(にそくほこう)で、重量のある荷物を腕部(わんぶ)で運搬(うんぱん)。工事現場での運用が中心。雨の日は作業を休みにつき、防水加工なし。急な雨用に撥水(はっすい)加工はあり、防塵加工(ぼうじんかこう)あり」


防水、防塵(ぼうじん)をつけるかどうかは難しい問題だ。


そりゃあフルオプションでつけたいのは当たり前だけど、コストと相談しなければならない。


ボーンズくんのようなタイプは複数体運用(ふくすうたいうんよう)が多い。


そうなると余計にコストが嵩(かさ)んでしまう。


どうしても高価な防水は外さざるを得ない。


ゴーレム使いとしては後ろ髪引(かみひ)かれる思いだが、どうしようもないこともある。


僕は彼の顔の形成(けいせい)にはいった。


ブリキの人形のようなものだが、僕はつけるようにしている。


だから、この街のゴーレムにはだいたい顔がついている。


これもバークライト流である。


そりゃあ顔があったほうが愛着(あいちゃく)がわくに決まっている。


僕はカッコよくしてるつもりなのだが、かわいい、ヘンテコと称(しょう)されることが多い。失礼な。


「よし!!良い顔だ!!」


一通りの修理が終わった頃、窓の外が光った。


すぐに屋根を叩く豪雨の音が聞こえる。


大きな雷鳴がキャマ・クーラの街に響いた。


あまりにも猛烈な雨だ。窓の外を見ると海は荒ぶっていた。


「あちゃ〜。この雨じゃ納品は明日だな。う〜ん。疲れた。早いけど今日はもう寝ようか」


僕は充実感とともに眠りについた。


だけど、なんだか街がざわめいていて僕は目を覚ました。


「なんだ? こんな雨なのに、人手が多い……」


雨の中、僕は庭に出た。


そして人が行き来する港町の方を見るとタンカーが座礁(ざしょう)していた。


じわじわと街の方へと向かっている。


「まずい!! このままだと海岸線の街が全滅だ!!」


多くの人がタンカーを食い止めようとしているが、止まる気配はない。


「み、みんなの……街が……」


僕は呆然(ぼうぜん)として膝(ひざ)をついてしまった。


何分間か放心していただろうか。


僕は雨で身体がビショビショになっているのに気づいた。


「待てよ……防水か!!」


僕は工房に戻るとボーンズ君に触れた。


そして急いで防水加工を施したのである。


並みの使い手なら2時間はかかるところを10分で終わらせた。


この時の僕は火事場(かじば)の馬鹿力(ばかぢから)でありえない力を発揮していた。


すぐに朱(あか)の術式(じゅつしき)の準備をした。


「ハァッ、ハァッ、あんなタンカー、押し返せるのか!? 押し返せるのか?! やる、やるんだよフォル!!」


作業用の朱(あか)の術式(じゅつしき)は最低限の動作(どうさ)しか組みこまないごくごく簡単なものだ。


出力に関してもそれは同じで、暴走のリスクもあってそこまでパワーは出ない。


だが、術式(じゅつしき)を書き換えれば話は別だ。


僕は急いで朱(あか)の術式(じゅつしき)を設計しはじめた。


「出来る限り出力を!! 出来る限り出力を!!」


ありったけ動力を積んで、リミッターを解除していく。


時間がない!! 時間がない!!


僕はありえない速さで朱(あか)の刻印(こくいん)を刻(きざ)み込んだ完成させた。


「できた!! ボーンズ君!!起動!! 行くぞぉ!!」


修復され、防水加工を施した人型ゴーレムが立ち上がった。


家の屋根がぶっ飛んだが、そんなのはどうでもいい。


僕はボーンズ君にまたがると海岸線まで走った。


本来は走ることを想定されていなかった彼だったが、術式の刻印によって高速走行が可能になっていた。


すぐにタンカーまでつくと、船底にとりついた。


突然の助(すけ)っ人(と)に人々は驚愕した。


あまりの負荷(ふか)でボーンズ君が悲鳴を上げる。


相手は大型タンカーである。無理もない。


「ギギギ……ギリギリギリ……」


それでもゴーレムは踏(ふ)ん張(ば)った。


「こらえてくれボーンズーーーーッッ!! リミッター、リリース!!」


ゴーレムはタンカーを押し返し始めた。


住人たちから歓声(かんせい)と応援(おうえん)の声が上がる。


「ギリギリギリ……ボスン!! ボスン!!」


だが、ボーンズくんの体中から煙(けむり)が上がり始めた。


押し返す対象が大きく、重すぎる。限界だった。


するとゴーレムは丸まった。そして、タンカーと岩の間に挟まった。


身を挺(てい)して食い止めようというのである。


「やめてくれボーンズ!! そんなことしたら、君を修復できなくなってしまう!!」


「ギリギリギリギリギリギリ………」


僕にはわかった。その時のボーンズくんは嬉(うれ)しそうだった……。


――――――――


なーんてことがあってね。


まったく、修復が大変だったよ。


でも、顔に蒼(あお)の刻印(こくいん)を刻(きざ)んといてホントによかったよ。


頭部は無事に回収できたからね。


やっぱ顔はつけるべきだようん。学会にレポート提出しなきゃ。


納品も完了したし、ゆっくり寝ようか……あ、屋根ぶち抜けたままだったよ……。


―Foll.Barklight's report―

―and Girly Golem ready?―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。