フォル・バークライトのレポート
僕はフォル・バークライト。
ゴーレムを作ったり、調律したりしているゴーレム使いだ。
今回はゴーレムの修理依頼。
土木建築現場で活躍していた″ボーンズくん″という名だ。
経年劣化で修理に出されてきた。
3m近い背丈だったので、分解して運び込んだ。
工房のテーブルにギリギリ乗っかるほど大きい。
工業用なので、さほど複雑な術式を刻み込む必要はない。
だが、土木作業に従事しているだけあって、あちこちの摩耗が激しい。
僕はマギ・クレイを練って素体を形成した。
素体作りと言えば専門家がやるけど、下級〜上位くらいなら僕にも形成、修復することが出来る。
ペタペタと損傷箇所にクレイを練り込んでいく。
「よーしよしよし!!」
僕はボーンズくんを褒めながら素体をなでた。
素体を物のように扱うゴーレム使いも多いけど、僕としては大切に、大切に扱わなきゃと思ってる。
ゴーレムとは言え、命の宿る身体なんだから。
もっともこれはじっちゃんからの受け売りなんだけどね。
バークライト流ゴーレムのポリシーの1つでもある。
なにせ身体が大きいからか、半日かけても半分も終わらない。
僕はコーヒー休憩に入った。
今日、誰も来ないのは実のところ仕事と伝えているからだ。
さすがに仕事に集中するからって言うと誰も来ないもんなんだな。
久しぶりのストイックな仕事に僕はやりがいを感じていた。
腕にはめたゴーレム・トライ・マイスターの腕輪を眺める。
「う〜ん、落第からコレをもらうとまではとても思わなかったなぁ。夢かなんかじゃないだろかな」
腕輪はプラチナに輝いた。
だけど、僕は俯いた。
ある女性型ゴーレムの酷い扱いが頭から離れない。
もっとゴミのように扱われているゴーレムもいるだろう。
今日の依頼主さんは「ウチのボーンズを頼んます」と言っていた。
″ウチの″
そう扱ってもらえるだけこのゴーレムは幸せだと思える。
「さて、続きをやろうか」
ボーンズくんの仕様書を再確認した。
「なになに? 二足歩行で、重量のある荷物を腕部で運搬。工事現場での運用が中心。雨の日は作業を休みにつき、防水加工なし。急な雨用に撥水加工はあり、防塵加工あり」
防水、防塵をつけるかどうかは難しい問題だ。
そりゃあフルオプションでつけたいのは当たり前だけど、コストと相談しなければならない。
ボーンズくんのようなタイプは複数体運用が多い。
そうなると余計にコストが嵩んでしまう。
どうしても高価な防水は外さざるを得ない。
ゴーレム使いとしては後ろ髪引かれる思いだが、どうしようもないこともある。
僕は彼の顔の形成にはいった。
ブリキの人形のようなものだが、僕はつけるようにしている。
だから、この街のゴーレムにはだいたい顔がついている。
これもバークライト流である。
そりゃあ顔があったほうが愛着がわくに決まっている。
僕はカッコよくしてるつもりなのだが、かわいい、ヘンテコと称されることが多い。失礼な。
「よし!!良い顔だ!!」
一通りの修理が終わった頃、窓の外が光った。
すぐに屋根を叩く豪雨の音が聞こえる。
大きな雷鳴がキャマ・クーラの街に響いた。
あまりにも猛烈な雨だ。窓の外を見ると海は荒ぶっていた。
「あちゃ〜。この雨じゃ納品は明日だな。う〜ん。疲れた。早いけど今日はもう寝ようか」
僕は充実感とともに眠りについた。
だけど、なんだか街がざわめいていて僕は目を覚ました。
「なんだ? こんな雨なのに、人手が多い……」
雨の中、僕は庭に出た。
そして人が行き来する港町の方を見るとタンカーが座礁していた。
じわじわと街の方へと向かっている。
「まずい!! このままだと海岸線の街が全滅だ!!」
多くの人がタンカーを食い止めようとしているが、止まる気配はない。
「み、みんなの……街が……」
僕は呆然として膝をついてしまった。
何分間か放心していただろうか。
僕は雨で身体がビショビショになっているのに気づいた。
「待てよ……防水か!!」
僕は工房に戻るとボーンズ君に触れた。
そして急いで防水加工を施したのである。
並みの使い手なら2時間はかかるところを10分で終わらせた。
この時の僕は火事場の馬鹿力でありえない力を発揮していた。
すぐに朱の術式の準備をした。
「ハァッ、ハァッ、あんなタンカー、押し返せるのか!? 押し返せるのか?! やる、やるんだよフォル!!」
作業用の朱の術式は最低限の動作しか組みこまないごくごく簡単なものだ。
出力に関してもそれは同じで、暴走のリスクもあってそこまでパワーは出ない。
だが、術式を書き換えれば話は別だ。
僕は急いで朱の術式を設計しはじめた。
「出来る限り出力を!! 出来る限り出力を!!」
ありったけ動力を積んで、リミッターを解除していく。
時間がない!! 時間がない!!
僕はありえない速さで朱の刻印を刻み込んだ完成させた。
「できた!! ボーンズ君!!起動!! 行くぞぉ!!」
修復され、防水加工を施した人型ゴーレムが立ち上がった。
家の屋根がぶっ飛んだが、そんなのはどうでもいい。
僕はボーンズ君にまたがると海岸線まで走った。
本来は走ることを想定されていなかった彼だったが、術式の刻印によって高速走行が可能になっていた。
すぐにタンカーまでつくと、船底にとりついた。
突然の助っ人に人々は驚愕した。
あまりの負荷でボーンズ君が悲鳴を上げる。
相手は大型タンカーである。無理もない。
「ギギギ……ギリギリギリ……」
それでもゴーレムは踏ん張った。
「こらえてくれボーンズーーーーッッ!! リミッター、リリース!!」
ゴーレムはタンカーを押し返し始めた。
住人たちから歓声と応援の声が上がる。
「ギリギリギリ……ボスン!! ボスン!!」
だが、ボーンズくんの体中から煙が上がり始めた。
押し返す対象が大きく、重すぎる。限界だった。
するとゴーレムは丸まった。そして、タンカーと岩の間に挟まった。
身を挺して食い止めようというのである。
「やめてくれボーンズ!! そんなことしたら、君を修復できなくなってしまう!!」
「ギリギリギリギリギリギリ………」
僕にはわかった。その時のボーンズくんは嬉しそうだった……。
――――――――
なーんてことがあってね。
まったく、修復が大変だったよ。
でも、顔に蒼の刻印を刻んといてホントによかったよ。
頭部は無事に回収できたからね。
やっぱ顔はつけるべきだようん。学会にレポート提出しなきゃ。
納品も完了したし、ゆっくり寝ようか……あ、屋根ぶち抜けたままだったよ……。
―Foll.Barklight's report―
―and Girly Golem ready?―




