第8話 猫好きな人には、たぶん理解されない話
世の中には、猫が好きな人がたくさんいる。
動画を見て癒やされる人。
猫カフェに通う人。
道で猫を見つけると嬉しくなる人。
私は違う。
猫が怖い。
かわいいと思えないわけではない。
でも、近づかれると体が固まる。
小さい頃から、なぜか猫のほうが私を追いかけてくる。
道を歩いていたら先回りされる。
気づけば後ろをついてくる。
「なんで!?」
と心の中で叫びながら逃げることも、一度や二度ではない。
たぶん、餌をくれそうに見えるのだろう。
残念ながら、一度も持っていたことはない。
そしてある日、駅の駐輪場で事件は起きた。
自転車を押して帰ろうとした、その時。
ニャー。
足元を見る。
一匹いる。
「まあ、一匹なら……」
そう思った次の瞬間。
もう一匹。
さらに一匹。
気づけば、猫に囲まれていた。
どうしよう。
前へ進めない。
自転車を押そうとしても、猫たちは私の進行方向へ集まってくる。
ニャー。
ニャー。
猫好きの人なら天国なのかもしれない。
私にとっては完全に包囲網だった。
人生、終わった。
大げさではなく、そのくらい本気で思った。
その時だった。
通りかかった大学生くらいの人が状況を見て、
「大丈夫ですか?」
と声をかけてくれた。
そして猫をやさしく追い払い、そのまま私の自転車を押して駐輪場の外まで運んでくれた。
救世主である。
本当に助かった。
すると、その人は笑いながら言った。
「そんなことしてたら、一生帰れないですよ!」
……ごもっともである。
私も帰りたかった。
でも帰れなかったのだ。
猫がいるから。
猫好きの人からすれば、
「囲まれるなんてうらやましい!」
と思うかもしれない。
でも、人にはそれぞれ苦手なものがある。
私にとって猫は、その一つだ。
だからあの日、あの大学生は間違いなくヒーローだった。
名前も知らない。
もう二度と会うこともないと思う。
でも今でも猫を見るたびに思い出す。
あの日、私を救ってくれて、本当にありがとうございました。
そして……。
猫たちへ。
どうしてそんなに私のところへ来るんですか。
本当に、今でも謎です。




