表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【実話】なんで私はこうなる?  作者: 月白ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/14

隣の人が気になった理由

 電車の中では、できるだけ周囲を気にしないようにしている。

 スマホを見る人。

 本を読む人。

 ぼんやり窓の外を見る人。

 おにぎりを食べる人……これはなんか違うか。

 それぞれが、自分の時間を過ごしている。

 その日も、私は吊り革につかまりながら、目的地まで揺られていた。

 最初は、小さな違和感だった。

 なんとなく、隣から視線を感じる。

 気のせいだと思った。

 自分が見られているなんて、そんなことはない。

 人が近くに立っていれば、視界に入ることもある。

 たまたま目が合うことだってある。

 だから、あまり気にしなかった。

 でも、なんかやっぱり気になる。

 視線がこちらに向いている気がする。

 さすがに少し不安になって、横目で確認した。

 そして、固まった。

 隣に立っていた人が、こちらを見ながら自分の手首を舐めていた。

 注意。私の手首ではない。

 ……え?

 一瞬、脳が状況を理解することを拒否した。

 なぜ?

 何をしているの?

 どういう意味?

 怖!

 しかも、その人は明らかにこちらを意識している。

 視線が真正面から合っているわけではない。

 それでも、こちらを気にしながら、自分の手首を舐めている。

 怖かった。

 怖いと、意外と声が出ない。

「やめてください」

 そう言うこともできなかった。

 いや、この場合の正解が分からない。

 周囲に助けを求めることもできなかった。

 そもそも、

「助けて!」

 も、なんか違う。

 何をされたのかと聞かれたら、私だって説明できない。

 ただ、もう早くこの状況から離れたかった。

 そのことだけを考えていた。

 そして、次の駅。

 電車の扉が開いた瞬間、私は降りた。

 目的地とは違う駅だった。

 でも、そんなことはどうでもよかった。

 ホームに出て、人の流れから少し離れる。

 そこでようやく、息を吐いた。

 ……あれは何だったのだろう。

 今でも分からない。

 何か意味があったのか。

 ただの癖だったのか。

 それとも、本当に私を見ながら何かをしていたのか。

 考えても答えは出ない。

 ただ、それ以来、電車の中で妙な違和感を覚えたときは、ちょっとだけ周囲を見るようになった。

 気のせいかもしれない。

 勘違いかもしれない。

 でも、「なんか変だな」と思ったなら、無理に気にしないふりをしなくてもいいのだと思う。

 何もなかったなら、それでいい。

 次の駅で降りたっていい。

 目的地に遅れたっていい。

 いや、遅刻はしたくないが。

 それはそれ。その時考える。

 その場から離れて、それで何もなければ、それでいい。

 ……まあ、それはそれとして。

 今でもたまに思う。

 あの人は、なぜ自分の手首を舐めながら、私を見ていたのだろう。

 あれだけは、いまだに分からない。

 たぶん、一生分からない。

 そして、できれば分からないままでいいと思っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ