本の好みを把握されていた話
こんなことを書いたことがあった。
「知らない人から突然握手を求められるくらいなら、本のおすすめを聞かれる方がまだ平和だ」
と。
まさか、その後に本のことで話しかけられるとは思わなかった。
もちろん、想像していた形とは少し違った。
その日、私は読みたかった本を手に取って、レジへ向かっていた。
すると店員さんが声をかけてきた。
「そのシリーズ、面白いですか?」
……え?
一瞬、反応が遅れた。
今から買おうとしている本について突然そんなこと聞かれるとは思っていなかった。
戸惑っていると、店員さんが続けた。
「好きな本の好みが似てるなと思っていて、気になって。面白いなら読もうかと思って」
なるほど。
そういうことだったのか。
……いや、待ってほしい。
私の本の好み、把握されていたの?
もちろん、悪い意味ではない。
むしろ本好きとしては、好みが近いと思われたことは少し嬉しい。
でも、同時にめちゃくちゃ驚いた。
その店員さんを見かけたのは、たぶん数回くらいだったと思う。
それなのに、
「あ、この人こういう本読むんだ」
と思われていたらしい。
私は普通に、
「面白いですよ」
と答えた。
本当に面白いので、それは嘘ではない。
その後、何事もなく会話は終わった。
でも、帰り道にふと思った。
これって本屋さんでは普通なのだろうか。
店員さんは、お客さんの選ぶ本を意外と見ているものなのか。
それとも、私が思っている以上に分かりやすい顔をして本を選んでいるのか。
考えてみれば、私はよく知らない人に話しかけられる。
どうやら私は、ただ本を買いに行くだけでも何かしらのイベントが発生するらしい。
でも、今回に限って言えば悪くなかった。
好きな本について話せる相手がいるのは、やっぱり嬉しい。
……ただ、次にその本屋へ行くかどうかは少しだけ迷う。
それにしても私が何の本を手に取るか、誰か見ているのだろうか。
いや、考えすぎだろう。
たぶん。




