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【実話】なんで私はこうなる?  作者: 月白ゆう


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2/15

本屋で知らない人に「握手して」と言われた話

 本屋さんは好きだ。

 静かで、たくさんの物語に囲まれていて、目的の本を探している時間は楽しい。

 店員さんの手書きPOPを見るのも好き。

 その日も、私は普通に本を見ていた。

 本当に普通に、本を探していただけだった。

 突然、知らない人から声をかけられた。

「握手してください」

 ……え?

 一瞬、意味が理解できなかった。

 握手?

 私と?

 頭の中に大量の「?」が浮かぶ。

 たぶん、人生で「握手してください」と言われるのは、芸能人や有名人くらいだと思っていた。

 少なくとも、本屋で普通に本を選んでいる人間に向けられる言葉だとは思っていなかった。

 私は混乱したまま、とっさに言った。

「違います」

 何が違うのか、自分でも分からない。

 でも、知らない人から突然握手を求められた時、人間は意外と冷静な返答ができないらしい。

 すると相手は、すぐに答えた。

「違いません」

 ……。

 え?

 違わない?

 何が?

 私が私であること?

 あなたが思っている誰かではないこと?

 それとも、そもそも会話の前提が違っている?

 疑問だけが増えていく。

 その瞬間、楽しい本屋の時間は終了した。

 怖くなって、その場を離れた。

 後から考えても、分からない。

 私は誰と間違われたのか。

 なぜ握手だったのか。

 そして、なぜ「違いません」と言い切れたのか。

 今でも謎である。

 あの日以来、本屋で突然声をかけられると少し身構えるようになった。

 本を探しに来ただけなのに、人生には予想外のイベントが発生することがある。

 知らない子どもにママと呼ばれる。

 そして、知らない人から握手を求められる。

 どうやら私は、普通に歩いているだけなのに、誰かの記憶違いや勘違いに巻き込まれやすいらしい。

 できれば次のイベントは、もう少し平和なものをお願いしたい。

 例えば、本のおすすめを聞かれるくらいで十分です。

 なんてその時は思ってました。

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