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【実話】なんで私はこうなる?  作者: 月白ゆう


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15/17

祖父は、シュークリームとコーヒー牛乳で生きると決めた

 祖父が八十を過ぎた頃、突然、宣言した。

「もう、シュークリームとコーヒー牛乳しか食べない」

 ……何を言っているんだろう。

 元々、祖父は口数の少ない人だった。

 だからこそ、久しぶりに聞いた祖父の言葉がこれだったことに、家族はみんな唖然とした。

 どうしてそんなことを言い出したのか。

 理由を聞いてみた。

 すると祖父は、当たり前のように答えた。

「もう、いつ迎えが来るか分からんからな」

 だから、好きなもの以外は食べない。

 それが祖父の理屈だった。

 もちろん、周囲は反対した。

 栄養がどうとか。

 健康がどうとか。

 ちゃんと食べたほうがいいとか。

 いろいろ言われた。

 でも祖父は聞かなかった。

 頑固だった。

 いや。

 もしかしたら、あれは頑固というより、自分の人生を自分で決めたかっただけなのかもしれない。

 結局、祖父は本当に好きなものを食べ続けた。

 シュークリーム。

 コーヒー牛乳。

 たぶん、普通に考えれば心配になる食生活だったと思う。

 それでも祖父は、自分で決めたことを変えなかった。

 そして祖父は百歳を超えた。

 最後は老衰だった。

 眠るように、穏やかに亡くなった。

 私は、祖父の人生を思い返す。

 八十を過ぎて突然、

「好きなものだけ食べる」

 と宣言したこと。

 周囲に何を言われても、自分の気持ちを曲げなかったこと。

 それを本当に最後まで貫いたこと。

 今思えば、祖父らしい人生だったと思う。

 もちろん、健康のことを考えれば、もっといろいろ食べたほうがよかったのかもしれない。

 でも、祖父にとっては、好きなものを食べて過ごすことも、自分らしく生きることの一つだったのだろう。

 祖父は自由な人だった。

 とても優しい人だった。

 私はそんな祖父が好きだった。

 今でもシュークリームを見ると、祖父を思い出す。

 コーヒー牛乳を見ると、

「そういえば、本当に最後まで好きなものしか食べなかったな」

 と、笑ってしまう。

 八十を過ぎて、自分の人生の残り時間を考えた祖父。

 百歳を超えるまで生きた祖父。

 人生なんて、何が起こるか分からない。

 だからこそ。

 最後まで自分らしく生きた祖父のことを、私はきっと忘れない。

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