パブリックSTAR
「相手は少年だと…言うことです。」
報告部署からの伝達はノルマを唖然とさせた。
「たった一人の子供にここまで、裏がいるはずだ、いるはずだ...」
「……隊長失礼ですが。なんの組織とも関係はないと思われます。」
声明文こそあったものの、それがあまりに子供が考えたものではなかったので、大きくノルマは倒れ込んだ。
「我々は負けたと言うのか、ただの子供に…だぞ。確認はしたのか!」
「ヘルマンの回収部品に最新の映像修復を施しました。確かです…」
「このことは上には?」
「報告しても無駄ですよ、今の共和国の連中はバカンスにでもいっている途中ですから…」
「だろうな…私は飛ぶことはそうそうないか。それも問題だが…」
ミスを犯したというよりは、少年にやられた事実を受けて、ノルマはそれまでになかったやる気を見つけた。
「やはり面白いな、この頃退屈だったからちょうどいい。魔法隊の再編を行うぞ。」
「了解です。それと…」
「メディアには何と…だろ?」
「そうです。」
「訓練中の事故ととでもいっておけ!それとヘルマンに会いたい、空室を用意できるか?」
「既に用意しております。」
「気がきく。」
満足そうにノルマは空室へと出かけたのだった。
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グリットエッジにニックは帰還していた。
心身の疲労は思ったよりも辛く、長引くものがあった。例えばの話、失恋から立ち上がるには、よっぽどの精神か、あったことをなかったことにする記憶処理がいるものだ。まだ青年になりたてのニックにとってはそれは大変な障壁になるのは間違いなかった。
「嫌なものを見たんだ…俺は……未熟なのかもしれない」
「作戦の一部は成功したんですよ、今は喜びましょう。」
「……そうだな」
これまで一人でやってきたニックにとってその言葉は励ましになっていた。事務職というのは想像とは違い、外にも出かける事があったし、その機会を通じて友人といえる仲になったものも多かった。だから、パッカーはそれを巧みに使い、情報を拡散させる能力はしっかりあったのだ。
「声明文は既に放送されました。ネットの反応は結構いいものですよ。」
岩壁に囲われた小さな洞窟は、パッカーの声を反射して、大きくみせた。
「君がいてくれた、俺はラッキーなのだな。」
「まだまだです。活動を広げていくにはニック、あなたが絶対必須です。」
「面白いな、やっぱり君を誘って正解だ。」
「?」
「次の作戦を説明しようか。」
困るはずのものをニックは少し捨てる事ができた気がした。
ちょうど、3000年の年明けが迫っていた。




