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ヘルマン・クラップ

 リンドバークス攻撃から、何度か轟音が鳴り響いていた。

管理室から外を眺めていたノルマは焦りを感じたが、数分すると事態は沈黙したのですぐに行動に移すことにした。まず、被害状況の確認とヘルマンによる敵の偵察をはっきりさせるため、部下であるファクト・ケルメン少尉に新兵器の動作チェックを言い渡した。

「数分でこれか…」

ノルマはそう呆れるしかなかった。特別やることもない自分は惨めだと実感したいたからだ。もし、ノルマが魔法を高度に扱うことができれば、きっと…いや必ずリチャード・コルクマンを討ち取ることができるだろう。

「失礼、ノルマ管理隊長!ヘルマンの新兵器との調整が完了しました。いつでも出撃できますが!?」

普段早口にもならないファクトからは、深刻さと初めての事態に興奮するようだった。

「すぐに出ろ!第二波は必ずやってくる、そのための迎撃システム、空中性特化ミサイル(スワーム)の準備をさせろ、場所にきたらヘルマンに誘き出させるようにしろ!!!」

そう言って、ノルマは勢いよく管理室を出た。

 地上は無惨にも破壊されいて、上空からの景色は、先刻のものとは違って見えた。

風を少し感じて、ニックは予定通りの攻撃に満足してはいた。だが、これだけの被害が出たのにも関わらず、軍の動きが、魔法隊の動きが遅いのでちょっとばかし不安ではあった。

「あと、五秒。」

心の時計がチッ、チッ、チッと音をたて、ニックの動きを抑制する。深呼吸をして、降下を始めると耳がキーンとする感覚に襲われる。そんなことはないのだがまだ年のいかないニックにとってそれは生きる証でもあった。

『あの日と同じだ。何も変わりはしない。』

目の前に倒れた形さえわからない妹の死骸。それを覆いかぶす、母のような死体。少し歩くたびに死者からの道連れの囁き声が聞こえてくる、腐臭が抜けないその感じがニックを強くする。

『躊躇はいらなよな、母さん、チェイミー、アルドべ、リチャード。』

 魔力を全身に包み、速さで体が崩れないように体をギュッと強張らせる。

魔法陣を出し、射撃の構えをとる。そこには迷いはない。

『余裕とは、明日や明後日のことを考えながら、昨日を振り返れることだ。』

誰かが言った言葉だ。だがそれをニックは思い出せない、あるのは加速だけだ。

─第二波は始まった。


一方、ヘルマンは新兵器を体に身につけていた。意外と軽装備でこんなので空が飛べると思うのだが、魔力が生み出すエネルギーをホバーのようにして、体を浮かせる装置らしい。扱うもの神経を蝕むもののその機動性は試作段階でも圧倒的な性能を誇った。

「いけます。」

「そうか、必ず帰ってこい。」

バーンは優しい顔でヘルマンを送り出した。

 それから間もなくして、攻撃が再開された。第二波は明らかな指示塔である管理室の破壊が目標であったのと、地上へ下り、軍の隠匿された基地の位置を確認するものだった。

『何か、変だ。』

ニックは心の中でそう感じていた。違和感というものや、勘というものが実際にあるのならば、それはニックを今包み込んでいるそのものだろう。

 その時、ニックの視界に映り込んだのは加速と上昇を続ける何か。

自分しかできないと思っていたことを容易に成し遂げているそれは人型ではあったが、数多くの機械が張り付いていた。エンジン部分には魔力でのスピード調整がみられ、その他は魔力の循環とケミカライトを液体化したものを突貫工事のようにつけた形だった。

「何だ、アレは…?」

思う暇はなかった。躊躇なく、魔法による攻撃が左手首をかすめた。

「…何ッ!?」

咄嗟の回避で直撃を避けたが第二、第三の攻撃が遠慮なくニックを襲った。

体を急上昇、距離をとるがそれでも魔法による攻撃はニックを囲みつつあった。

「っクソ!」

「テロリストめッ!容赦はしない!!!」

お互いに声が聞こえる距離にまで、ニックはヘルマンの接近を許した。当然ながら、ニックは自分以外空を飛べるとは思っていなかったもので、動揺と初めての空中戦が彼の動きを鈍らせた。

「そこだッ!」

ヘルマンの一撃がニックの頭をとらえた。ここで初めてニックは防御魔法を展開、冷静さを取り戻し反撃へと打って出る。華麗な上昇と降下を繰り返し、追撃を振り切ったニックは雲の中へと姿を消した。

「どこにいる!クソッ、魔力探知すらつんでいないのかッ!!?」

ヘルマンはその場にとどまってしまった。それが戦いにおいて、最もしてはいけない行動なのをヘルマン自身も理解していたが、それどころではなかった。一度、敵を視認することができなくなれば、機械であるが故に隙を生みやすい。天性の魔法使いである、ニックにとっては自分の体のように動かせるので、ヘルマンは圧倒的に不利対面となる。

「「私はヘルマン・クラップだ。リチャード・コルクマンでてこい!!!」」

聞く意味もないその言葉にニックは応えなかった。

『一撃で落とす』

それを実行するのは楽ではない。だが、ケイミカライトの魔力に頼りきっているヘルマンの弱点。それは…

「ヘルマン!!!」

 声のした方にガンマンを抜く速度でヘルマンはその方向を見た。そこには、大量の発射直前の魔法陣がニックと共にこちらを眺めていた。

「なッ!?」

ヘルマンは優秀だ。魔法は第一に手から出すのが主流だと、ニックは過去の研究から理解していた。

だから、最初に手首を狙ってきたヘルマンを優秀だと判断した。攻撃を前に取る行動は一つ、防御である。

「ハァッ!!!」

大量の魔法の連打、しかも一箇所に集中させたその攻撃は、ヘルマンの防御魔法を貫いた。




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