リンドバークス出撃
──リンドバークスは北大陸にある海に接する大都市である。
大規模な軍事施設と実験施設があり、共和国政権が初めて樹立した土地であってか、経済不況な状況であっても多少の難はのりこてきたそんな地である。かといって、目覚ましい発展を遂げたのは最近のことで魔力が発見される前までは都市というより軍関係の施設という認識が人々の間にあった。特に魔法隊の編成はここで行われるので、現地人は皆、魔法の誤爆は日常茶飯事であることやそれによる被害にも慣れていた。抵抗する力がない、魔力を自分で生成できない人間は退屈な場所なのだ。
ノルマ・べリッシュはここの管理隊長ということもあって、気難しい人ではなかったのだが、先日の出来事があってか大変ピリピリしていた。
「例の新兵器はまだ来ないのか?ヘルマンも同様だ!」
部下であるファクト少尉にそう怒鳴りつけた。
「ヘルマン中尉は既に現地入りしています。連絡したはずですが…」
「そうだったか…?私は何も聞いていないが!?」
大戦から数年経って、紛争やら麻薬カルテルの掃討作戦やらで実践経験を積むことのなかった、ここリンドバークスでは、兵士やスッタフのやる気はすっかり失せてしまって、こうなることも仕方がなかった。
「とにかくだ!さっさとヘルマンに魔法を叩き込め。いいな!!!」
「それなのですが…」
「何か問題でも!?」
「いえ、彼素晴らしい才能の持ち主で既に大半の魔法は扱えるようで…」
「思ったより優秀か…」
管制室のような高い塔で造られた管理室でノルマは感嘆した。
実際、ノルマは魔法のセンスは一切の皆無で羨ましくもあったこと、それが原因で知識と圧倒的なカリスマ性で
今の地位に上り詰めたのだ。だから、こう発言したのではとノルマは心の底で思った。
「ヘルマンと第二軍のノーティスを模擬戦させろ。場所は岩場でだ。」
「了解しました!」
ファクトは今日はお腹を壊さずにすみそうだと、安心して管理室を出た。
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『新入りにしちゃ、でき過ぎるな。』
モッロク・バーンは今朝入ってきたヘルマンとかいうやつを2度見て思った。
たった数時間しか経っていないのにヘルマンは魔法の基礎を全て覚え、惜しくも新魔法開発の失敗までこなしていたからだ。
「これで大体の感覚は掴めた、あとはきっと運が味方してくれるさ。」
ヘルマンは側から見たら、結構な好青年といった感じだった。年は二十代前半で空軍の若きエースパイロットとして、経歴をつけていた。しかし、一度の軍の作戦行動の無視で彼はここに左遷させられたいうのがここの噂となって、彼を縛り付けていた。
「きばり過ぎるなよヘルマン、君はノーティスを超えるさ。」
人一倍接し方が良い、バーンはそいうのも理解してヘルマンと話していた。
「応援ありがとうございます。ですが、僕にはそんな気はありませんよ。僕はただ…」
ヘルマンがそう言いかけた時、野太い声で後ろから声がした。
「テロリストを打ち負かしたいってか?」
想像通りにでかい図体をした大男は偉そうにそう言った。
「正義ぶって、本当は自分の功績のために軍人てのは一生を生きているのにな。」
嫌味とも取れるそれは確かにヘルマンを傷つけたが、ノーティスはそんなことを気にしない。
才能を憎む形で、そう認めたのだ。
「管理長殿がお前と模擬戦をやれだと。不本意だが、お前との勝負楽しみにしてるぜ。」
「分かっています、後で行きますから。」
若干の不安があったがさっきのバーンの励ましがヘルマンを勇気づけた。
突如、警報音が鳴った。接近警報だ。ケミカライト鉱石を埋め込んだ装置で基地周辺に魔力波を構築し、それに乱れが生じた際、警報を発令するといった、いわば遊びのようなものだったがここにきて役にたったというのだ。
「…訓練か?」
「違うな、これはそういうのじゃない…」
ヘルマンは瞬時に状況を理解した。
誰よりも早く、さっき届いたはずの新兵器の元へ走っていた。
第一撃はノーティスのところをあっけなく襲った。ちょうど廊下を歩いているところだったから即死だ。
粉々になった肉片は瓦礫と混じって、どれがそれかは検討がつかなくなった。
『出撃が遅いな。』
そんな考えでニックは魔法による飽和攻撃を行っていた。
自身の横に魔法陣が現れ、そこから光線が放たれる。空は覆いはしないが、程なくしてその場所が更地となった。
やっと、リンドバークスの魔法隊が出てきたが一瞬で壊滅へとニックは追い込んだ。
空を飛ぶとはこういう気分だとリンドバークスの戦闘機を破壊しながら思った。
「ここまで弱いとな。」
虐殺を楽しむ趣味ではないニックはそう思いながら、高度上昇させて、第二波のために撤退した。




