第534話 「神槍召喚」と、脱出?
本日2本目の投稿です。
「決まってるでしょ? 君にも出してもらうんだよ、これを」
と、春風に向かってそう言ったオーディン。そんな彼の手には、自身の愛槍である「グングニル」が握られている。
一方、
「「「はぁあああああああ!?」」」
とオーディンの言葉に、春風だけでなくグラシアと彼岸花までもが驚きに満ちた叫びをあげた。
その後、
「ちょっと待ってくださいオーディン様! それ本気で言ってるのですか!?」
と、春風が大きく目を見開きながら、オーディンに向かってそう尋ねると、
「ああ、本気だよ。僕が外側からその球体を壊せばいいんだけど……」
その質問に対して、オーディンは春風を閉じ込めている球体を指差しながら答えたが、
「彼女に『中の春風がどうなるかわからない』と脅されてしまってねぇ……」
と、チラッと彼岸花を見て嫌味っぽく言うと、
「あう! ご、ごめんなさい……」
オーディンの嫌味(?)に、彼岸花はシュンと落ち込みながら謝罪した。
その謝罪を受けて、オーディンは「ふふ」と小さく笑うと、
「まぁそんなわけで、外から壊すのが駄目なら、君がグングニルを出して中から壊すしかないということなんだ」
再び春風に視線を向けながら言ったので、
「お、俺が、オーディン様の槍を出して……」
その言葉を聞いた春風はそう返事しながら、「不安」に満ちた表情を浮かべた。
そんな春風に向かって、
「は、春風様……」
とグラシアが声をかけると、
「……俺に、出来るでしょうか?」
と、春風は不安そうな表情のまま、オーディンに向かってそう尋ねた。
その質問を聞いて、オーディンは「む?」と反応すると、
「おいおい春風君。君、自分がどういう存在か忘れたのかい?」
と、逆に春風に向かってそう尋ね返したので、それに春風が「え?」と反応すると、
「今の君はこの僕、オーディンの契約者にして僕の分身なんだよ? それなら出来るに決まってるじゃないか」
その反応を見て、オーディンは「何言ってんの君?」と言わんばかりに首を傾げながらそう言ったので、
「あ、あのオーディン様、なんかもの凄く無茶を言ってませんか?」
と、その言葉にグラシアが恐る恐る尋ねたが、
「ていうか春風君。『世界』を救いたいなら、この程度の奇跡くらい起こせなくちゃ」
そんなグラシアを無視して、オーディンは春風に向かってニヤッとしながら、まるで挑発するかのようにそう話を続けた。
その言葉を聞いて、
「ちょ、お、オーディン様ぁ!?」
と、グラシアがギョッと目を大きく見開き、
「こ、『この程度の奇跡』って……」
彼岸花が「えぇ?」とドン引きしていると、
「……はは。確かに……あなたの言う通りですね」
と、春風が小さく笑いながらそう呟いたので、それを聞いたグラシアと彼岸花がすぐに「え!?」と春風の方へと振り向くと、
「それくらいの奇跡を起こせなきゃ、『世界を救う』なんて大それた目的、到底果たせっこないですよ」
春風は顔を下に向けながらそう言って、最後に「くっくっく……」と不気味に笑い出した。
その笑い声を聞いて、
「は、春風様ぁ?」
とグラシアが恐る恐る春風に向かって尋ねると、春風はスッと顔を上げて、
「よし! 少々ぶっ飛んだ提案ですが……いっちょ、やってみますか!」
と、不敵な笑みを浮かべながら言った。
その後、
「それじゃあ早速……」
と春風はすぐに行動に移そうとしたが、
「……あの、オーディン様」
と、オーディンに声をかけたので、それにオーディンが、
「ん? なんだい春風君?」
と首を傾げながら返事すると、
「グングニルって……どうやって、出すんですか?」
と、真っ直ぐオーディンを見つめながらそう尋ねたので、
「「ずこぉーっ!」」
その質問を聞いて、グラシアと彼岸花はその場にずっこけた。
そんな2人を他所に、
「あー大丈夫。君は僕の分身だから、君がそれをキチンと認識すれば、精神を集中させるだけで出せるから。ああ、ただ初めてグングニル出すわけだから、最初は心に浮かんだ言葉を唱える形になるかな」
と、オーディンはグングニルの出し方についてそう説明したので、
「わかりました。では、やります」
その説明を聞いた春風はコクリと頷くと、ゆっくりと深呼吸して、ゆっくりと両目を閉じた。
そして、
(そうだ。今の俺は、北欧神話の最高神、オーディン様の『契約者』にして『分身』なんだ……)
と、春風は確認するかのように心の中でそう呟くと、
「そうだよ……俺なら……出来る」
と、今度はそう口に出したので、
「は、春風?」
その言葉を聞いた彼岸花が、恐る恐る春風に声をかけると……。
ーーブワッ!
「「「っ!?」」」
突如、春風の全身が白く輝き出したので、
「おお、これは凄いな」
と、オーディンがそう感心していると、
「俺なら……やれる」
春風はそう呟きながら、先ほどオーディンがグングニルを出した時のように、ゆっくりと両手をパンッと合わせた。
そして、その後全身から出ていた白い光が、全て合わせた手に集まると、
「……来れ、我が槍」
と、春風はまるで呪文を唱えるかのようにそう呟き、それからすぐにゆっくりと合わせた両手を離した。
すると、離した手と手の間から、オーディンがやった時と同じように白い槍が現れたので、
「「お、おお!」」
と、グラシアと彼岸花が、目をキラキラとさせながらそう声を上げた。
しかし、
「あ……あれぇ?」
手と手の間から出てきたのは、確かに白い槍なのだが、その見た目はオーディンのグングニルとは違って、鋭い穂先の代わりに両端を鋭く尖らせただけの長い棒だったので、
「……なんか、槍投げ用の槍みたい……」
と、明らかに思ってたのと違う結果に、春風は「えぇ?」と首を傾げたが、
「……でも、途轍もない力を感じる」
と、すぐにそう感じて、春風は真面目な表情になると、すぐにオーディンに視線を送った。
それを受けて、
「うん、初めてにしては上出来だよ」
と、オーディンはグッと親指を立てながら言うと、
「ありがとう……ございます」
それを聞いた春風は、オーディンに向かってお礼を言った。
その後、
「それじゃあ、早速……」
と、春風はそう言うと、召喚した自身の「グングニル」を両手でグッと握って、
「はぁ!」
それで目の前にある球体の一部を思いっきり突き刺した。
その瞬間、
ーーピシッ!
と、球体の一部にヒビが入り出したので、
「「「おお!」」」
と、オーディンだけでなくグラシアと彼岸花までもが声をあげたが、
「うおおおおお……!」
そんな彼らを無視して、春風は何度も球体の一部に入ったヒビ目掛けて、何度も自身のグングニルを突き刺した。
その度に、ヒビがどんどん大きくなると……。
ーーバリィイン!
最後はそう音を立てながら、春風を閉じ込めていた球体が崩壊した。
その時だ。
ーーピカァ!
「うわ、眩しい!」
突然目の前が真っ赤に光り出したので、
「春風様ぁ!」
「春風ぁ!」
その赤い光に呑まれようとする中、グラシアと彼岸花は春風に向かって手を伸ばした。
そして、全てが赤く染まった。




