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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第10章 断罪官の逆襲

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第520話 変わり果てた春風と、「彼岸花」の秘密


 そして、それから2年後の現在、異世界「エルード」のとある森の中で、


 「ヴアアアアアアアッ!」


 彼岸花の力によるものか、春風は異(・)形(・)の(・)姿(・)へと変貌した。


 その瞬間、春風を中心に強い衝撃波が発生し、


 「ぐおおお! ま、またかよぉ!」


 「こ、今度は、さっきのよりも強い……!」


 それを受けたフランクとケネスは後ろに強く吹き飛ばされたが、一方、春風の仲間達はというと、


 「騎士達よ、みんなを守るぞ!」


 『はっ!』


 ヘクターと騎士達が壁となって衝撃波を受けたおかげで、レナをはじめとした後ろにいる者達に被害が及ぶことはなかった。


 その後、衝撃波がおさまり、


 「大丈夫ですか!?」


 と、ヘクターがチラッと後ろを見ながら尋ねると、


 「は、はい、全員無事です。ありがとうございます……」


 その質問に対して、イヴリーヌは弱々しく笑いながら答えたが、


 「……は! 春風様は!?」


 と、今思い出したかのようにヘクターに向かってそう尋ねると、


 「そ、それが……」


 と、ヘクターが何やら答え難そうな表情になったので、


 「……っ」


 それを見たレナはすぐにヘクター達を押し除けて、目の前にいる春風を見たが、


 「は……春風……なの?」


 彼のあまりの変貌ぶりに、レナは大きく目を見開いた。


 彼岸花の刀身と同じように真っ赤に染まった全身と、腰まで届く真っ赤な長い髪、大きく開かれた両目は不気味なくらい白く、開いてる口も上下共にギザギザしていて、左手の指先は鋭く尖っていた。


 そして、何より不気味なのは、右手が彼岸花と一(・)体(・)化(・)していたことだった。細身だった刀身は、まるで大剣のように広く、どの部分が柄なのかもわからない、まさに右腕全体が、一振りの刀となっていたのだ。


 あまりにも異形な姿となった春風を見て、


 「は、春風……」


 と、凛咲がそう口を開いたまさにその時、


 「あんたぁ!」


 レナが凛咲の胸ぐらを掴んできた。


 その表情は「怒り」に満ちていて、


 「れ、レナちゃん……?」


 と、キャロラインが恐る恐る尋ねてきたが、それを無視して、


 「あ(・)れ(・)は一体何!? あんた、春風に何を渡したの!?」


 レナは、変わり果てた春風をビシッと指差しながら凛咲を問い詰めた。


 その質問を受けて、凛咲は表情を暗くすると、


 「……あの刀、魔剣……いや、『妖刀・彼岸花』は、『悲(・)し(・)み(・)』を(・)吸(・)収(・)し(・)て(・)力(・)に(・)変(・)え(・)る(・)刀(・)なの」


 と、ゆっくりと口を開きながら答えた。 


 その答えを聞いて、


 「か、悲しみ……ですか?」


 と、今度はイヴリーヌがそう尋ねると、


 「ええ、使い手の『悲しみ』が深ければ深いほど、発揮される力も大きくなるんです。そして、それで敵を倒せば、その敵の『悲しみ』も吸収し、自身の力に変えるのです」


 その質問に対して、凛咲はチラッとイヴリーヌを見ながら答えた。


 すると、


 「そ、それは……うちの陛下が聞いたら『是非欲しい!』と目を輝かせるでしょうねぇ」


 と、キャロラインが「はは」と頬を引き攣らせながら言ったが、そんな彼女の言葉に、


 「……ですが」


 と、凛咲は更に表情を暗くすると、


 「その力を振るい続ければ、使い手は刀自身の『悲しみ』に喰われて、やがて全(・)て(・)を失ってしまうんです。命も……肉体さえも……」


 と、恐ろしく低い声でそう付け加えたので、


 「な、何だと!? では、彼のあの姿は、そうなる前兆だというのか!?」


 凛咲の説明を聞いて、ヘクターはチラッと春風を見ながらそう尋ねると、凛咲は悲しそうに顔を伏せるだけで、それ以上何も答えなかった。


 そんな凛咲の態度に、レナはブチっと切れたのか、


 「何でそんなの春風に渡したの!?」


 と、涙を流しながら凛咲に向かってそう怒鳴ると、ドンッと彼女を突き飛ばして、


 「春風!」


 その後すぐにヘクター達を飛び越えると、


 「ま、待て……!」


 と、止めるヘクターを無視して、春風のもとへと駆け出した。


 そして、残された凛咲はその場に力無くへたり込むと、


 「……私だって、使わせたくなかったわよ」


 と、涙を流しながら呟いた。


 さて、肝心の春風はというと、異形の姿になってから、ピクリとその場から動こうとせず、吹き飛ばされたフランクとケネスに視線を向けながらボーッとしていた。


 するとそこへ、


 「春風!」


 と、レナが駆け寄ると、


 「春風! 春風、聞こえる!? お願い、その剣を捨てて! お願いだから!」


 レナは必死になって春風に呼びかけて、彼岸花を捨てるようにと言った。


 しかし、


 「……」


 その呼びかけが聞こえてないのか、春風は何の反応も示さなかったので、


 「だ、だったら……!」


 と、レナはそう呟くと、今度は大きな刀と化した春風の右腕を両手で握って、


 「この! 離れて! 春風から離れてぇ!」


 何と春風と彼岸花を強引に引き剥がすつもりなのか、グッと思いっきり引っ張りだした。


 しかし、どれだけ引っ張ってもびくともせず、


 「はぁ……はぁ……」


 やがて疲れてきたのか、レナは苦しそうに肩で息をした。


 一方、衝撃波で吹き飛ばされたフランクとケネスはというと、


 「ちくしょう、いきなり姿が変わったかと思ったら、またしても吹き飛ばしかよ」


 と、フランクは異形の姿となった春風を見て悪態を吐き、


 「まったく、参っちゃうわね本当に……」


 ケネスも春風を見て、「やれやれ」と言わんばかりの表情になったが、


 「でも、あの子が鞘から抜いたあの剣。そして、その剣と一体となった右手……」


 と、すぐに落ち着いた表情で冷静に分析し出すと、


 「恐らくあの剣、使い手に何らかの『代償』を強いるタイプのようね。今のところ動いてないみたいだけど、動き出したらどれほどのものになるか……」


 と、最後はそう結論付けた。


 そんなケネスの分析を聞いて、


 「だったら、今度は2人がかりでやるぞ。野郎が動き出す前にな」


 と、フランクがそう提案してきたので、


 「そうね、その方がいいかも」


 と、ケネスがその提案に賛成すると、


 「へっ! じゃあ、とっとと行くぜ!」


 とフランクはニヤッとしながらそう言って、ケネスと同時に突撃した。


 そんな2人の気配に気付いたのか、


 「はっ! いけない!」


 とレナはそう言うと、後ろを振り向きながら、


 「春風は私が守る!」


 と言って、自身の武器である棒を構えた。


 そして、


 「は! 『白き悪魔』も一緒か!」


 「それなら、2人仲良くお死に!」


 と、春風とレナの傍まで近づいていたフランクとケネスが、2人に向かって武器を振り下ろすと、


 「……レ……ナ」


 変わり果てた春風は、目の前にいるレナを見て口を開いた。


 


 

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