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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第10章 断罪官の逆襲

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第514話 春風と「彼岸花」


 その「刀」と出会ったのは、春風が中学1年の時だった。


 「ごめん! 家の大掃除手伝って!」


 と、凛咲に懇願されて、春風は歩夢と、当時凛咲と暮らし始めたばかりの美羽と共に、凛咲の家の大掃除をすることになった。と言っても、凛咲自身は綺麗好きの為、冒険から帰ってきたら家の掃除をキチンとするようにしていて、美羽と暮らすようになってからは、凛咲が冒険で不在の間は彼女が家の中を掃除していた。


 その為、リビングやキッチン、浴室、寝室は綺麗なのだが、問題は地(・)下(・)室(・)の方だった。


 その地下室は広い倉庫になっていて、そこには凛咲が旅先で手に入れた様々な道具や本、更には何に使うのかわからないヘ(・)ン(・)テ(・)コ(・)な(・)も(・)の(・)が置かれていた。


 それでもごっちゃになってしまわないようにキチンと整理はしているのだが、


 「いやそれでも流石に置きすぎるでしょ!」


 と美羽に叱られてしまったので、これを機に地下室、ついでに家の中を大掃除することになったというわけだ。


 そして当日。


 春風、歩夢、美羽、そして家主である凛咲は家の中を隅々まで掃除していった。家自体は立派ではあるがそれ程大きくはないので、4人だけで十分だった。その最中、


 (あ、地下室だ)


 と、ふと春風の視線に地下室への扉が入ったので、


 (そういえば、師匠は中々地下室に入らせてはくれなかったんだよなぁ)


 と遠い目をしながらそんなことを考えていると、


 (うん、美羽さんも見たって言ってたし、いい機会だから、ちょっと見させてもらいますか)


 という結論に至り、


 「お邪魔しまーす……」


 と小声でそう言いながら、その地下室の扉を開けて、近くにあった照明のスイッチを入れると、


 「うわぁ……」


 中のあまりの現状に、春風は呆然とした。


 (『いっぱいある』とは聞いてたけど、まさかここまでとは……)


 地下室の中は大小様々な箱が並んでいて、木で出来た大きな箱もあれば金属製の小さな箱もあるのだが、それら1つ1つから何やら妙なプレッシャーのようなものが出ていたので、


 (何だろう。あまり長居したくない気がする)


 と、春風はそう考えてすぐにその場から離れようとしたその時……。


 ーーこっちに来て。


 「え?」


 不意に頭の中でそんな「声」が聞こえた気がしたので、


 (……誰かが、俺を呼んでる?)


 と、そう感じた春風は、地下室の中へと足を踏み入れた。


 中は様々な箱の他にも、ガラスケースに収められたよくわからない人形や、大昔の民族が使ってそうな恐ろしい形相の仮面、更には太い紐で纏めて縛られている本などといったよくわからないものがあったので、


 「師匠、何処でこんなの手に入れたんだろう?」


 と、それらを見ながら春風が奥へと進んでいると……。


 ーーこっちこっち。


 と、再び頭の中で「声」がしたので、


 「わかったから急かさないでよ」


 その声に返事するように、春風は「はぁ」と溜め息を吐きながら言ったが、


 「……て、誰に返事してるんだ俺は」


 と、すぐに自分で自分にツッコミを入れた。


 それから春風が「声」に従いながら、暫く地下室を進んでいると、やがて1つの細長い木製の箱の前に着いた。


 箱は全体的にかなり古そうで、開かないように太い紐で縛られていた。更にところどころに見たこともない文字で書かれていたお札が貼られてたので、春風は気味が悪いものを見るかのような目をしたが、


 (何だろう。何故だか知らないけど、俺はこの箱を開けなきゃいけない気がする……)


 と、何故かそんな衝動に駆られていたので、


 「よし。開けるか」


 春風は意を決してその箱を開けることにした。縛っていた太い紐を外し、ゆっくりと蓋を開けると、


 「あ、日本刀だ」


 その中には、朱塗りの鞘に収まった一振りの日本刀が入っていた。


 すると……。


 ーー私に触れて。


 と、また頭の中で「声」がしたので、


 「ひょっとして、俺を呼んでたの……あ(・)な(・)た(・)ですか?」


 春風は「まさか」と思って、目(・)の(・)前(・)の(・)箱(・)に(・)入(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)日(・)本(・)刀(・)に向かってそう尋ねたが、


 (いやいやいや、日本刀相手に何をしてるんだ俺は?)


 と、すぐに首を左右に振りながら、自分自身にツッコミを入れた。


 すると……。


 ーーそうだよ。


 と、目の前の日本刀がそう返事をするかのように、春風の頭でまた「声」がしたので、


 「……マジで?」


 と、春風は頬を引き攣らせた。


 その後、目の前の日本刀を前に春風は「うーん」と唸ると、


 「お、俺……春風。雪村春風。あなたの名前は?」


 と、「何やってんだ俺?」と内心では呆れながらも、目の前の日本刀に向かってそう尋ねた。


 するとその時……。


 ーー彼岸花。


 と、また目の前の日本刀がそう返事をするかのように、またまた春風の頭の中で「声」がしたので、


 (へぇ、花の名前を冠した日本刀か……)


 と、春風はそう考えると……。


 ーー私に触れて。


 と何度目かになる「声」がしたので、


 「……わかったよ」


 と、春風はそう返事すると、「彼岸花」と名乗ったその日本刀が入った箱を手に取り、その中身に手を伸ばした。


 ところが、


 「駄目、フーちゃん!」


 「春風君!?」


 「何してるの春風!?」


 と、背後で怒声が聞こえたので、それを聞いた春風は思わずハッとなって、


 「うわ!」


 とその箱を手放した。


 ガシャンと音を立てて床に落ちた木箱。


 その衝撃で中身である日本刀「彼岸花」が床に転がる。


 それを見て、


 (お、俺……今何をしようとした!?)


 と、春風が戸惑いの表情を浮かべていると、


 「フーちゃん!」


 と、いつの間にか傍に来ていた歩夢が、春風の手を握ってきたので、


 「あ、ゆ、ユメちゃん。それに、美羽さんに師匠……」


 それに気付いた春風は、手を握っている歩夢と、その近くにいる美羽と凛咲を見た。


 そして、


 「春風、ここにいちゃ駄目! すぐに出るわよ!」


 と、凛咲がそう怒鳴ってきたので、それに春風が「え? え?」と戸惑っていると、


 「行こう!」


 と、歩夢が春風の手を引っ張り出したので、


 「え、あ、う、うん」


 と、春風は戸惑いの表情のまま、歩夢に手を引かれながらその場を後にし、それに続くように、美羽、凛咲の順にその場から歩き出した。その最中に、


 「……」


 凛咲は、床に転がっている彼岸花をギロリと睨みつけた。


 長くなってしまったが、これが、春風と「妖刀・彼岸花」の、運命の出会いだった。


 そして、それから2年後、とある国で春風はこの「妖刀・彼岸花」を抜くことになるのだが、それはまた、別の話である。


 


 


 


 


 


 


 

 

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