第511話 「勇者」達、失う
本日2本目の投稿です。
「はい、回収完了。これでもう、あなた達は『勇者』じゃなくなったわ」
と、歩夢、美羽、鉄雄、恵樹、詩織ら5人の「勇者」達に向かって、笑顔ではあるが冷たい口調でそう言ったケネス。そんな彼の手には、歩夢達が召喚した「勇者の武器」である「神器」があった。
(……は? あいつ、今なんて言った?)
と、ケネスの言葉が理解出来なかった春風が、そう疑問に思った次の瞬間、
「……あ、あれ?」
と、歩夢が力無くその場に崩れ落ちたのが見えたので、
「ゆ、ユメちゃん!?」
と春風は大きく目を見開きながら驚いたが、
「な、何……?」
「な、なんだこれ……?」
「力が……」
「入ら……ない」
なんと歩夢だけでなく、美羽、鉄雄、恵樹、詩織までもが、その場に力無く崩れ落ちたので、
「ちょ、ちょっとあんた達!?」
そんな歩夢達の様子に、レナも大きく目を見開きながら驚いた。
(な、なんだ? ユメちゃん達に何が!?)
目の前で起きた出来事に春風は戸惑いながらも、歩夢達に何が起きたのか調べようとして、
「『神眼』、発動!」
と、まずは歩夢に対して自身が持つスキルの1つ、「神眼」を発動し、彼女の状態を見ると……。
名前:海神歩夢
種族:人間
性別:女
年齢:17歳
職能:水導師
レベル:15
所持スキル:「杖術」「水魔術」「魔力強化」「精神統一」
称号:「異世界人」「職能保持者」
「……あれ!? 『神器召喚』のスキルと『選ばれし勇者』の称号が無くなってる!?」
と、春風は歩夢の「ステータス」を見て再び目を大きく見開きながら驚き、そんな春風の言葉に、
「え、何それぇ!?」
と、レナは信じられないものを見るような表情で驚くと、
「……てことはまさか!?」
春風は嫌な予感がしたのか、残りの「勇者」達にも「神眼」を発動した。
その結果、
「大変だ、みんなも『神器召喚』のスキルと『選ばれし勇者』の称号が無くなってる」
全員、歩夢と同じ状態ということがわかって、
「う、嘘……」
「マジかよ……」
と、歩夢をはじめとした5人の「勇者」達は、皆、ショックで顔を真っ青にし、そんな彼女達を見てイヴリーヌも目を大きく見開くと、
「ケネス・ランドルフ! あなた、歩夢様達に何をしたのですか!?」
と、「怒り」満ちた表情でケネスに向かって睨みつけながら尋ねた。
その質問を受けて、ケネスは「あらあら!」と少しだけ驚くと、
「いやですねイヴリーヌ様。言った筈ですよ、『勇者としての証を剥奪する』って。この、『剥奪』の神聖スキルで」
と、ニヤッとしながら答えたので、
「神聖スキル!? 何なのですかそれは!?」
その答えを聞いて、イヴリーヌが怒鳴りながら更に尋ねると、
「偉大なる5柱の神々より特別に賜った、普通のスキルとは異なる文字通り『神』のスキルですよ。と言いましても、すぐに神々に返さなくてはいけないですけどね」
と、ケネスはニヤッとしたまま答えた。
そんなケネスの答えに、
「なるほど。そのスキルで、歩夢ちゃん達の『スキル』と『称号』を奪った、というわけね」
今度はキャロラインが、ケネスに鋭い視線を向けながら尋ねると、
「あらあらぁ、奪ったなんて人聞き悪いですねキャロライン皇妃様。返してもらったのですよ」
と、ケネスは「心外です!」と言わんばかりにプンスカと怒りながら答えたので、
「返してもらった、ですって?」
その答えにキャロラインは更に鋭い視線で尋ねると、
「だってそうでしょ? その子達は元々、そこにいる『邪神』と、神々を滅ぼす『悪魔』を倒す『勇者』としてこの世界に召喚されたんですよ?」
と、ケネスはヘリアテス、レナ、そして春風の順に指差しながら答え、
「なのにその子達ときたら、その『邪神』と『悪魔』達の味方をしただけでなく、あろうことかフランクに向かって『勇者』の武器である『神器』を振るったのですよ? だったら、その罰として『勇者の証』を返してもらうのは当然じゃないですか?」
最後にキャロラインに向かって鋭い視線を向けながら尋ね返した。よく見ると、その瞳には強い『怒り』が宿っているようで、
「っ……」
そんなケネスの視線を受けて、キャロラインは一瞬怯んだが、すぐに自身の唇を噛み締めてケネスを睨みつけた。その一方で、
「そ、それは……」
と、ケネスが発した残酷なセリフに、イヴリーヌはショックで顔を真っ青にしながら、歩夢達と同じようにその場に崩れ落ちそうになったが、
「イヴリーヌ様!」
そうなる前に、ヘクターは急いでイヴリーヌを支えた。
その後、
「さってっと、『勇者』達……いえ、『勇者だった子』達に罰を与えたから、このまま神々のもとに帰りたいところだけど……」
と、ケネスがひと仕事終えたかのように「ふぅ」とひと息入れながら言うと、
「フランクは、そのつもりはないんでしょ?」
と、フランクに視線を向けながら尋ねた。
その質問を受けて、
「ああ、当然だ。ぶっ殺さなきゃいけねぇ奴が目の前にいるんでな」
と、フランクがチラッとレナを見ながらそう答えると、その答えにケネスは呆れ顔で「そうよねぇ」と呟いて、
「だったら、剣をお出し。ほら早く」
と、フランクに剣を出せと急かした。
その言葉にフランクは「あぁ?」と文句を言おうとしたが、
「……」
ケネスの無言の圧力に屈したのか、
「ちっ! わかったよ」
と舌打ちすると、「ほらよ」と言いながらスッと自身の剣を差し出した。
すると、
「それじゃあ、これとこれとこれね」
と、ケネスはそう言って、歩夢達から回収した「神器」の中から、美羽、鉄雄、詩織のものを選ぶと、それら全てをフランクの剣に当てた。
すると、3人の「神器」が、まるで吸い込まれるかのようにフランクの剣の中へと消えて、その瞬間、フランクの剣が白く光り出すと、まるで「神器」を思わせるかのような白い翼のような装飾が施された剣へと変化したので、
「こ、こいつは!」
と、フランクはその変化した自身の剣を見て大きく目を見開き、
「な! あなた何を……!?」
それを見たイヴリーヌがすぐにケネスに尋ねようとしたが、肝心のケネスはそんなイヴリーヌを無視して、
「そして……」
と、呟きながら、自身の左手を広げた。
すると、眩い光と共に、ケネスの左手に白銀に輝く両手持ちの大鎌が現れたので、
「あ、あれは……」
と、アメリアが弱々しく反応したが、それでもケネスはアメリアを見ることなく、
「で、私はこの2つを……」
というと、残った歩夢と恵樹の「神器」を、その白銀の大鎌に当てた。
その瞬間、フランクの剣と同じように、2つの「神器」がケネスの大鎌の中に消え、これまたフランクの剣と同じように、大鎌自体の形も白い翼のような装飾が施されたものへと変化した。
ケネスは変化した大鎌を見て、
「うん。これで準備は出来たわ」
と、ニコッとしながら呟くと、すぐに春風達の方へと振り向いて、
「どう? 神々より賜った断罪官の装備と、『勇者』の武器『神器』を融合したものよ」
と、まるで自慢するかのように、フランクと一緒になってその武器を見せびらかしたので、
「お、おいおい。冗談だろ?」
ケネスの言葉に、春風は顔を真っ青にした。




