第510話 新たな「天使」、現る
今回は、いつもより少し長めの話になります。
「そ……そんな……まさか……ケネス小隊長……ですか?」
突如、春風達の前に現れた「もう1人の天使」こと白銀の鎧を纏った長髪の男性に向かって、真っ青な顔でそう尋ねたアメリア。
そんな彼女の質問に対して、
「ふふ、そうよアメリア。あの日、あなたの裏切りによって殺されたケネスよ」
と、「ケネス小隊長」と呼ばれた「もう1人の天使」は女性口調でそう答えたので、
「お、おぅ。異世界に来てオカマに遭遇するとは……」
と、鉄雄が小声でそう言いながらドン引きしたが、
「ふん!」
ーーゴッ!
「ぐふ!」
隣にいた詩織に肘鉄をお見舞いされてしまった。
しかし、そんな2人を他所に、
「ま、まさか、断罪官第2小隊の、ケネス・ランドルフ小隊長ですか!?」
と、イヴリーヌが驚きに満ちた表情で尋ねたので、
「ええ、その通りですイヴリーヌ様。私は断罪官第2小隊隊長、ケネス・ランドルフです」
と、「もう1人の天使」……以下、ケネスはイヴリーヌに向かって丁寧なお辞儀をしながらそう自己紹介すると、
「そして……はじめまして、『邪神』、いえ、『太陽と花の女神ヘリアテス』と、その女神に育てられた『白き悪魔』のレナ・ヒューズに、『異世界の神』の契約者にして固有職能『見習い賢者』の固有職保持者でもある『赤き悪魔』の雪村春風」
ヘリアテス、レナ、そして春風の順に挨拶をし、
「久しぶりね、アメリアの妹さんに獣人の坊や」
次にニーナとピート、
「ああ、あなたもはじめましてでしたね、ストロザイア帝国のキャロライン皇妃様にアデレード皇女様」
その次にキャロラインとアデレード、
「あと異世界の勇者達と、その他大勢ね」
最後に歩夢、美羽、鉄雄、恵樹、詩織の5人の「勇者」達と、凛咲、ミネルヴァ、そしてヘクターと騎士達に向かって挨拶すると、
『なんか扱いが雑ぅ!?』
全員、あまりの扱いにショックを受けた。
しかし、そんな5人をスルーして、
「この人がアメリアさんが所属していた隊の……」
「うん、そうみたいだね春風」
と、春風とレナは目の前のケネスを見て真剣な表情でそう言い、
「け、ケネス小隊長、本当に……生きていたのですね?」
元・断罪官のアメリアが、真っ青な表情のままタラリと汗を流しながら、ケネスに向かって恐る恐る尋ねると、
「ええ、ご覧の通りよ。後、第2小隊の隊員全員も生きてるからね」
その質問に対して、ケネスは「ふふ」と穏やかに笑いながら答えたので、
「そ、そんな、小隊のみんなも……!?」
と、アメリアはショックで更に顔を青くしながらその場に崩れ落ち、
「姉さん!」
「アメリアお姉ちゃん!」
それを見たニーナとピートは、すぐにアメリアに寄り添うと、目の前のケネスをキッと睨みつけた。
そんな2人を見て、
「あらあら……」
と、ケネスは小馬鹿にしたように笑うと、
「ケネス・ランドルフ小隊長!」
とイヴリーヌが1歩前に出ながら声をあげたので、それにケネスが「ん?」と反応すると、
「色々とお尋ねしたいことがありますが、まずはその背中の翼、あなたもギデオン・シンクレア大隊長やそちらのフランク・小隊長と同じ『天使』となったのですか!?」
と、イヴリーヌはチラッとフランクが落ちた地面を見ながら、強気な口調でケネスに向かって尋ねた。
そんなイヴリーヌの質問に対して、
「ええ、その通りですイヴリーヌ様……」
と、ケネスはコクリと頷きながら答えると、
「私が『天使』となったのは最近……そう、アメリアと妹さんの両親を殺した時点で、私はレベル100になったのです」
自身がレベル100になった経緯を説明したので、
「「なっ!?」」
その説明にアメリアとニーナはショックを受けて、
「お前ぇ!」
ピートは「怒り」に満ちた表情で更にケネスを睨みつけたが、
「まぁ『レベル100になった』と言いましても、その後すぐにアメリアにやられちゃいましたがね」
と、ケネスは「オホホ……」と笑いながら言うと、
「でも、頑丈な断罪官の装備に私達が身につけてきた『スキル』の効果が守ってくれて、更にはアメリアが我を忘れてたのか、はたまた無意識に私達を斬ることに躊躇いがあったのか、私を含めて全員急所を外してたのですよ。そのおかげで、こうして生きてるというわけです」
すぐにスッと表情を真面目なものに変えながら説明を続けたので、
「そ……そんな……私は……私……は……」
その説明を聞いて、アメリアは崩れ落ちた状態のまま、心が壊れてしまったかのように虚ろな目をして俯いた。
そんなアメリアを見て、
(あ、アメリアさん……)
と、春風は心配そうな表情を浮かべていると、
「さ、て、と。ちょっとした昔話はこれくらいにして……」
と、ケネスはそう言って、フランクが落ちた地面に飛んで移動した。
ここまで長くなってしまったが、フランクが落ちた地面は小さなクレーターのようになっていて、その中心にフランクが倒れている形になっていた。
そして、ケネスが倒れてるフランクの傍に立つと、
「とっとと起きろ」
そう言って、なんとケネスはフランクを思いっきり蹴り上げたので、
「ブォフゥ!」
と、蹴られたフランクがそう吹き出すと、
「て……テメェ……ケネス。い……いきなりなんてことしやがる!」
と、蹴られた部分を押さえながら、目を覚ましたフランクがケネスに向かって悪態を吐いたので、
「ふん、調子に乗り過ぎなのよこの馬鹿が。油断していいようにやられちゃうなんて」
ケネスはそんなフランクの悪態を気にすることなく、寧ろゴミを見るような目で見つめながら返事した。
その後、フランクが剣を支えにしながらヨロヨロと立ち上がると、
「ほら、さっさと構えなさい。今度は私も手伝うから……」
と、ケネスはフランクに向かって命令するかのようにそう言って、
「一緒に『邪神』と『悪魔』、それに『異端者』共を討伐するわよ」
最後にギロリと春風達を睨みながらそう付け加えたので、その言葉を受けて、
『っ!』
とすぐに春風達はそれぞれ武器を構えた。
すると、
「さーてと。じゃあ、討伐の前に……」
と、ケネスがそう口を開くと、
「勇者達……随分と好き勝手してくれたみたいね」
と、歩夢ら5人の「勇者」達に鋭い視線を向けながら言ったので、その視線を受けて、
「「「「「っ!」」」」」
と歩夢達がビクッと体を震わせると、ケネスは彼女達に向かってスッと右手を翳して、
「神聖スキル、『剥奪』を発動。海神歩夢、天上美羽、暁鉄雄、野守恵樹、夕下詩織の、『勇者』としての証を、剥奪する」
と、スキルの名を唱えたので、
「は? 今、なんて……?」
と春風がケネスに向かって尋ねようとした、次の瞬間、
「きゃあ!」
「な、何!?」
なんと、歩夢と美羽の「神器」が、彼女達の手から離れてケネスの方へと飛んでいったのだ。
いや、2人だけじゃない、
「う、うわぁ!」
「ひえ!」
「嫌!」
鉄雄、恵樹、詩織の「神器」までもが、彼らの手から離れて同じくケネスの方へと飛んでいった。
そして、5人全員の「神器」がケネスの手につくと、
「はい、回収完了。これでもう、あなた達は『勇者』じゃなくなったわ」
と、ケネスは歩夢達に向かってニコッとしながら、冷たい口調でそう言い放った。




