第436話 春風、「過去」を語る
本日2本目の投稿です。
「『新型エネルギー暴走事故』って、聞いたことないかな?」
と、歩夢達を見回しながらそう尋ねた春風。その質問を聞いて、歩夢が悲しそうに表情を暗くし、そんな歩夢と質問した春風を、美羽が心配そうに見つめる中、
「え、それって……!?」
と、恵樹がギョッと目を大きく見開いたので、
「うお! 何だよ野守!? ていうか、知ってるのかよ!?」
と、鉄雄が驚きながら恵樹に向かってそう尋ね、
「知らないの?」
と、詩織がツッコむように鉄雄に向かってそう尋ねると、
「わ、悪りぃ。何か、外国でデケェ事故があったってことしか……」
と、鉄雄はボリボリと頭を掻きながら申し訳なさそうにそう答えた。
そんな鉄雄の答えに、
「うん、それは間違いないよ……」
と、春風が「はは」と弱々しく笑いながらそう呟くと、
「……簡単に言うと、7年前、とある小さな国で未知のエネルギーを発する不思議な鉱石が発見されて、それを研究して次世代の新たなエネルギーにする為に、世界中から優れた研究者や技術者が集められたんだ」
と、恵樹が真剣な表情でそう説明を始めたので、それに鉄雄が「お、おぉ?」と反応すると、
「だけど、研究の最中にそのエネルギーが暴走し出して、その結果、研究を行っていた施設は消滅……」
と、恵樹はそう説明を続け、
「集められた研究者と技術者達は、全員死亡したんだって」
最後は表情を暗くしながらそう説明を締め括った。
恵樹の説明を聞いて、
「お、おお? 何か、詳しくね?」
と、鉄雄がちょっとだけ引き、そんな鉄雄を「このこの……」と詩織が肘で突いてると、
「俺、父ちゃんがジャーナリストをしていて、色んな事件や事故を取材したり独自に調査していたんだ。その中には今説明した事故のことも含まれていて、その時の資料をちょっとだけ見たことがあるんだよね。ああ、勿論、それ以外にもちゃんとニュースは見てるよ」
と、恵樹が恥ずかしそうに顔を赤くしてポリポリと自分の頬を掻きながらそう言ったので、
「そ、そうなのか……」
と、鉄雄が納得の表情でそう返事した。
ところが、
「……って、あ!」
と、急に恵樹がハッとなって声を上げたので、
「おおい、今度は何だよ!?」
と、鉄雄が更に驚いていると、
「そうだよ、思い出した! 集められた研究者達の中に、1組の日本人夫婦がいたんだ! エネルギー研究者の光国冬夜と、彼の妻にして助手の光国柊色! そして、2人の間には、当時10歳の1人息子がいて、事故があった日、両親と一緒にその国を訪れてたって、資料にも書いてあった!」
と、恵樹はクワッと目を見開きながら、再びそう説明を始めて、
「そうか。雪村君、君は光国博士の息子さんだったんだね?」
と、春風をジッと見つめながらそう尋ねた。
そんな恵樹の質問を聞いて、
「……え!? そ、そうなのか雪村ぁ!?」
と、鉄雄が漸く理解出来たかのような表情で春風に視線を向けた。勿論、詩織もである。
そんな彼らの視線を受けて、春風は最初ビクッとなったが、
「あはは。野守君のお父さんって、結構凄い人なんだね。そこまで調べてたなんて」
と、すぐにまた弱々しく笑いながらそう言い、そんな春風を歩夢と美羽が心配そうな表情で見ていて、特に歩夢は、
「ふ、フーちゃん……」
と、凄く悲しそうな表情をしていた。
そんな様子の歩夢に気付いたのか、
「大丈夫だよユメちゃん」
と、春風が弱々しい笑みを浮かべたままそう言うと、ゆっくりと深呼吸して恵樹に視線を向けて、
「そうだよ。ユメちゃんから聞いたと思うけど、俺の本当の名前は、光国春風。野守君の話に出てきた、研究者の光国冬夜と助手の光国柊色は、俺の本当の父さんと母さんなんだ」
と、真剣な表情でそう言うと、
「あぁ、因みに2人ともユメちゃんの家族とも顔見知りで、よく家族ぐるみの付き合いもしていたんだ」
と、最後は穏やかな笑みを浮かべながらそう付け加えた。
そんな春風の言葉を聞いて、
「あ、そこは知ってる。海神さんに聞いた」
と、詩織がそう口を開いたので、彼女に続くように鉄雄と恵樹もコクリと頷いた。
そんな3人を見て、
「あ、そうなんだ……」
と、春風がそう呟くと、
「雪村君、話したくはない思うけど、出来れば教えて欲しい。7年前、小国『アリメニス王国』で、一体何があったのかを」
と、恵樹がかなり真剣な表情でそう言ったので、
「野守君!」
と、歩夢がそう声を荒げたが、
「大丈夫だよユメちゃん。心配しないで」
と、春風が優しい口調でそう言ったので、それを聞いた歩夢は「うぐ……」と小さく呻くとすぐにコクリと頷いた。
そんな歩夢を見て、春風は「ありがとう」とお礼を言うと、恵樹に視線を向けて、
「野守君の言う通り、確かに7年前、アリメニス王国で未知のエネルギーを発生させる鉱石が発見されて、そのエネルギーを上手く扱えるようになれば、科学技術の更なる発展に繋がると考えた当時のアリメニス国王は、早速世界中から優秀な頭脳と知識を持つ研究者と技術者を集め始めたんだ。で、俺の父さんもその1人ってわけ」
と、当時のことについて説明を始めた。
その説明を聞いて、
「へぇ、雪村の……いや、光国、か?」
と、鉄雄が春風の呼び方について首を傾げたので、
「『雪村』でいいよ。今の俺は、『雪村春風』なんだから」
と、春風は笑顔でそう答えた。
その答えを聞いて、
「お、おぉそうか。じゃあ、雪村。お前のお父さんってスゲェ人だったんだな」
と、鉄雄が改めてそう言ったので、
「ああ、父さんはエネルギー関連の研究でかなり優秀な人だったんだ。そして、そんな父さんを支えた母さんも、優秀な研究者の1人で、2人とも俺の自慢の両親なんだ」
と、春風は笑顔でそう返事し、
「で、7年前。アリメニス国王からの招待を受けた父さんと母さんは、幼い俺を連れて、アリメニス王国へと出発したんだ。因みに、先に俺と両親が向こうに到着して、後からユメちゃんとその家族が来たって形だよ」
と、最後にそう付け加えると、
「「「おおー」」」
と、鉄雄、恵樹、詩織が大きく目を見開きながらそう歓声をあげたが、
「……だけど」
「「「ん?」」」
「だけど、あのエネルギーは、人間が触れていいものじゃなかったんだ」
と、春風は震えたそう言うと、辛そうに表情を歪めた。




