第432話 「お仕事」が終わって……・2
そして、時は現在に戻る。
ギルド総本部を出て「白い風見鶏」へと帰る中、その総本部内での出来事を思い出して、
「『指名依頼』の仕事以上に疲れた」
と、春風が疲れきった顔でそうぼやく中、そんな春風の隣では、
「ふぐううううう。やっぱり取れないいいいい」
レナが怒り顔でそう言いながら、ヴァレリーにつけられた「紅蓮の猛牛」メンバーの証である赤い腕章を外そうとしていたが、幾ら引っ張っても全然外れなかったので、
「ぐぬぬ。おのれヴァレリー・マルティネス、絶対許さないからねぇ……」
と、レナは悔しそうな表情を浮かべながら、この場にいないヴァレリーに対する恨み言を呟いた。因みに肝心のヴァレリーはというと、レギオンのリーダーとしての仕事がある為、タイラーと共にギルド総本部に残っている。
まぁそれはさておき、レギオン加入の件でそれぞれ異なる反応をする春風とレナ。そんな2人の後ろで、
「もう、ヴァレちゃんにタイちゃんったら! 幾らリーダーだからってこんなの酷すぎるわ! アーデちゃんも止めてくれたらいいのに! 帝国に帰ったら早速家族会議よ! 訴えてやるんだから!」
と、キャロラインがプンスカと怒っていた。最後の方で、何やら不穏なものを感じたが。
するとその時、
「「うちのリーダーがごめんなさい」」
と、「紅蓮の猛牛」メンバーであるディックとフィオナが申し訳なさそうに謝罪してきたので、それに春風、レナ、そしてキャロラインが「あ……」と反応すると、
「あー、ううん。2人が気にすることはないよ。もうこうなったら、覚悟を決めて進むだけだから」
と、春風はニコッとしながらディックとフィオナの2人に向かってそう言い、
「……そうね。そこについては春風に賛成かな」
と、レナは「ふぅ」とひと息入れて気持ちを切り替えながらそう言い、
「うう、いい子ねディックちゃんにフィオナちゃん。それに比べてヴァレちゃんにタイちゃんったら……」
と、キャロラインはディックとフィオナを見てジーンと感動しつつ、最後はこの場にいないヴァレリーとタイラーを思って呆れ顔になった。
その時だ。
「あのぉ……」
と、それまで黙っていた歩夢が「はい」と恐る恐る手を上げたので、
「ん? ユメちゃん、どうかしたの?」
と、春風がそう尋ねると、
「えっと、あのヴァレリーさんとタイラーさんって人のレギオンって、どういうものなのかなって思って……」
と、歩夢は恥ずかしそうにそう答えたので、
「あら、そういえばまだヴァレちゃん達のレギオンについて詳しく話してなかったわね」
と、キャロラインが「しまった」と言わんばかりに目を大きく見開くと、「コホン」と咳き込んで、
「まずヴァレちゃんの『紅蓮の猛牛』は、主に魔物の討伐を中心に活動していて、メンバーの多くは下位の戦闘系職能保持者が多いっていうのが特徴ね。ああ、因みにヴァレちゃん本人も下位の戦闘系職能保持者よ」
と、最初にヴァレリーの「紅蓮の猛牛」についてそう説明し、それに続くように、
「はい。因みに僕とフィオナも下位の戦闘系職能保持者でして、ハンターになったばかりの頃はよく上位の戦闘系職能保持者の先輩達に馬鹿にされてたんですけど、それでも頑張って仕事をこなしてた時にヴァレリーさんにスカウトされたんです」
と、ディックも自分とフィオナが「紅蓮の猛牛」に入った経緯を説明し、その説明を聞いて、
「へぇ、そうだったんだ」
と、それまで黙って話を聞いていた恵樹が納得の表情を浮かべると、
「で、次にタイちゃんの『黄金の両手』は、生産系職能保持者が主なメンバーなんだけど、戦闘系職能保持者に負けないくらいの魔物との戦いぶりを見せているの。因みにリーダーのタイちゃんも生産系職能保持者よ」
と、キャロラインは次にタイラーの「黄金の両手」について説明し、その説明を聞いて、
「え? 生産系職能保持者なのに、魔物と戦えるんですか?」
と、美羽がそう尋ねると、
「ええそうよ。私も何年か前にタイちゃん達の戦いぶりを見たんだけど、『本当に生産系職能保持者なの?』って疑問に思えるくらいの見事な戦いぶりだったわ」
と、キャロラインが「いやぁ、参った参った」と言わんばかり表情を浮かべながらそう答えたので、その答えに美羽だけでなくクラスメイト全員が「おお!」と感心していると、
「で、そんな感じでヴァレちゃん達とタイちゃん達はお互いを良きライバルと認識しながら、時に競い合い、時に協力しあっていくうちに、いつしかここフロントラル代表する大手レギオンと呼ばれるくらいにまで成長していったの」
と、キャロラインはそう話を締め括った。
そんなキャロラインの話を聞いて、
「そ、そんな凄い人達からのスカウトって……」
と、歩夢がそう口を開くと、
「フーちゃんとレナ……さん、凄いなぁ」
と、春風とレナを見つめながらジーンと感動した。それを聞いて、2人は「ん?」と反応すると、
「うーん、俺はそんなんじゃないんだけどなぁ」
と、春風は困った顔を浮かべて、
「私は別にレギオンに入るつもりなんてなかったよ。面倒なだけだし……」
と、レナは「はぁ」と溜め息混じりにそう答えたが、
「でも、僕としては兄貴とレナさんがレギオンに入ってくれて嬉しかったよ」
「……私も」
と、ディックとフィオナが本気で嬉しそうにそう言ったので、
「あ、あはは、ありがとう2人とも」
「……」
春風もレナも、恥ずかしそうに顔を赤くした。
さて、そんな感じで話し合っていくうちに、春風達は「白い風見鶏」に着いた。
(あー、お腹すいたぁ)
と、中に入った春風は心の中でそう呟きながらも、それを顔に出さずに、
「ただいま戻りました……」
と口開くと、食堂の方から、
「……こうして、『愛しのハニー』こと春風の大活躍によって、また1つの『悪』が滅び、国に平和が訪れたってわけ」
「まぁ! なんて素晴らしいのですか!」
というなんとも楽しげな会話が聞こえたので、
「……ねぇ、今の会話って……」
と、美羽が春風にそう尋ねると、春風はそれを無視して、
「師匠ぉ! 何の話をしてるんですかぁー!?」
と叫びながら、ダッと食堂内に駆け込んだ。




